ヒロインのお望みは?
「ルークはいいね。ルートの最初でラウリィとキスできる。事後の事後までできちゃう。わたしなんてエンディング近くじゃなければ、キスもできない」
「そうなのか?」
「そうだよ」
「キスしたい?」
と聞いたら、バカ、と恥ずかしそうな顔で言われた。
かわいいなぁ、とつい心の声が漏れてしまう。茶色の瞳が潤んでいた。
「でも、気安く触れてくるのは、好みじゃないんだろ?」
「そうやって、誰にでも軽口言うからだよ。それに、ラウリィは。わたし以外とは……」
ミトリが言いたいことは分かったので、オレは頷いた。
「ごめんな、ミトリ。軽薄で適当、それがオレだから。好みじゃないなら仕方ないんだよ」とオレは言う。
と言ったあとで、不意にミトリが抱えている書類の中で、一番上での文字が見えた。
【ラウリィのアダルトルート開通に関する署名】と書かれている。
「なんだこれ」
とオレが指さしてみると、ミトリは抱きしめるようにして、書類を隠した。
「何でもないよ」
と言うのだ。
「最近はルート進めてないんだな。クルルスルートには行かないの?」と言ったら、
「バーカ」
と言われる。
そんなに直接的な悪口を言われるとは思わなかった。
「バカかもしれない。でも、オレはミトリが好きだよ。行きたいルートに進めるように祈ってる」
と言ってオレは去る。
行きたいのはラウリィのルートだよ、と呟く声は聞こえていなかった。




