第5話:上王移譲
現上王は、天星王だ。次の上王は、風神王が最有力だ。
となれば、上王の巡りの流れも定められる。
風神王の次が光朝王、続いて氷皇王、地底王、水帝王、闇夜王、火州王と巡って、また天星王だ。
そして、上王の引退宣言を以て、再度の上王の選抜が行なわれた。
風神王が最も多くの票を集め、新天星王、光朝王、氷皇王、地底王、水帝王の五ヵ州の王の票を得た。
これにて、次期上王は風神王と決まった。
別に、元上王である元天星王が、年老いたから引退した訳では無い。
ある程度の在位を経てから、他の州の王にその座を譲るのが健全さを保つ為に必要だと思ったまでだ。
これにて、凡その在位期間も暗黙の了解を得る事になった。
10年前後。長くても20年と云ったところか。
だが、風神王には、王族の司法と云う立場があった。
故に、在位期間についても、各国の見本となる在位を必要とされた。
風神王が『違法』と認めてしまえば、ソレは即ち王族から退く程の違法行為となってしまうのだから、かなり厳密にルールを守らなければならなかった。
具体的に言うと、10年丁度。
それ以下の在位には、退く理由が必要だし、それ以上の在位には、必要性があって在位しなければならない。そう云う暗黙のルールを定める事になる。
その意味で言えば、最初の上王であった天星王には、その前例を作る義務みたいなものがあった。
もし、在位が長すぎると判断されれば、例え上王であったとしても、風神王によってその座から引きずり落とされていただろう。
天星王の上王への在位によって、光朝州・水帝州が豊かな州に仲間入りした。風神王は、上王として、最低でもそのくらいの手柄を立てる責任のようなものが期待されていた。
まず確実に、氷皇州。コレは魔空船関連の製造から、確実視出来る。
残るは、地底州、火王州、闇夜州の三ヵ州である。何処が抜きん出るか……。
難しい問題である。地底州には大きな地震があるし、火王州には火事、闇夜州には病と云う重大な災厄の類がある。
上王となった風神王は、ソレラの残された国にも豊かさを齎さなければならないのだ。10年以内に。
食糧を輸出するだけで済むのならば、そんな簡単な話は無い。豊かな経済基盤が必要なのだ。
それだけの技術を、三ヵ国は持っていない。強いて言うのならば、地底国の鉱物資源を、火王国で加工すれば、鉄を始めとする資源に恵まれる。
そして、八ヵ州は鉄と云う資源に於いて、決して足りているとは言えない状態にある。
それは、天星州に於いても、例外では無い。
で、あるが故に、新天星王は、上王である風神王に献策した。あとはそれを軌道に乗せるまでの、簡単なお仕事、で終われば世話は無い。
地底州は鉱物を火王国に売り渡すことに消極的であったし、火王国はそれを買い渋った。
ただ、事ココに至ってしまえば、上王の一言で地底国の鉱物が火王国に売れ、火王国が鉄材などの資源を輸出し、二ヵ国共に豊かな国の仲間入り寸前まで話は進んだ。
あとは時間の問題である。だが、唯一取り残された、闇夜州が哀れであった。
だが、仕方あるまい。闇夜州が、世界を破滅に導くのであれば。
ラヂオ・テレビも発明されているのだから、情報弱者であるのは、貧しさ故である。
思えば、天星王の上王在位は、期間が少しばかり長過ぎた。
だが、同時に短過ぎても『上王』制度の為にならないのである。
天星州がより豊かである為に。元『上王』であった元天星王は、そんな気持ちで上王を務めていた。
恐らく、風神王の上王も、より風神州が豊かである為に活躍するであろう。
序でに、地底州・火王州も豊かにするまでだ。
もしも本当に闇夜州が世界を破滅に導く為に動くのならば、そんな州を豊かにする謂れは無い。
逆に言えば、本当に世界を破滅に導くのでは無かったら、闇夜州にも豊かさが齎されても良いのだが、今のところ、そんな気配は欠片も無い。
仕方なかろう。人気が出なかったのだ。今更掌を返されても、『闇に滅する』可能性は、ほぼ100%なのだ。現実世界との密接な繋がりがあろうことは、作者一人しか気付かなかったのだ。
下手だった。それがどのくらいの意味合いを持つかは判らない。
強いて言えば、~『新約魔書』世界一のワーストセラー~としたことがそもそも悪かったのかも知れない。
作者は、新約聖書の全文を、読んでも居ない。
何故ならば、日本古来の信仰を莫迦にする文章であるからだ。
他の信仰に対して排他的過ぎる。日本の信仰は逆だ。他の信仰に対して穏和的過ぎる。
故に、宗教に因る侵略を赦してしまった。
その責任を、誰も負い切れない。日本古来の信仰は、寛容にも過ぎたのだ。
過ぎたるは及ばざるが如し。だが、それが日本が平和的に発展出来た秘訣でもあったのだろう。
新興宗教なぞ、必要無い。ソレは、教祖を富ませるだけの行為に過ぎない。
そもそもが、世界の破滅を予言している宗教なぞ、破滅を近付けるに過ぎない信仰であろう。
日本には、キチンと世界に誇れる信仰があるのだ。神道と云う。
神道は、破滅の予言なぞしていない!ただ、神話を辿れば、天皇家の先祖は神の血筋だ。
後継者問題になっているようだが、歴史を辿れば女性の天皇陛下も存在している。新たに女性の天皇陛下が誕生しても、ソコに何の問題がある?
配偶者問題になる。それは、皇配に実権を持たせなければ済む問題だろう。
因みに、過去の八ヵ国には、女王が存在しなかった訳では無い。話として触れる機会が無かっただけの話だ。
天星王も、上王として、特別な権力を働かせることは無かった。その事実を前例として残す為に。
天星州に優位なトレードをさせることも可能だったが、他の上王がそうしない為に、自らもそうはしなかった。
ただ一度、強引な命令を与えたが、それは『禁呪』の試し撃ちの禁止である。
『禁呪』が、『空間破壊呪』だけとは限らない。だが、特別に『禁呪』と述べる場合、ソレは『空間破壊呪』のことを示すのが当たり前となっていた。
それだけで、八ヵ州は貧しい州もそれなりに裕福な州へと変貌を遂げた。
上王としての成果なぞ、その程度で充分なのである。
下手に手柄を焦るから、成果を挙げられないだけで。
地道に政治を発展させてゆけば、豊かになる未来は築けるのである。
それでもまだ、闇夜州は豊かとは言えない情勢だが、いずれ豊かになる。
否、豊かになる前に破滅する可能性も残っているが。
残念ながら、ハッピーエンドの約束は今回はしていないのだ。
そして恐らく、ワーストエンドになるであろうことは、ほぼ確信的に言える。
バッドエンドなぞは目指さない!ソレは悍ましい選択肢だ。
ならば、より悪いワーストエンドなら、バッドエンドのアイツを避けられる。
勿論、ハッピーエンドで終わればその方が望ましかったのだが、何処をどう探してみても、見つかる気がしないのだ。
故に、約束の刻限に間に合わせるべく、『~天の章~』はこれにて終える。
意思の確認は行った。結果は『誰も反応しない』だった。
たった一票の為に、ハッピーエンドへは導かない。ソレが、事前に投じられていたが故に。
どうせ殆どがbotが読んでいるだけであろう。だから、リアクションが無い。
この後に待っているのは、凍て付く程の寒さだ。『~氷の章~』が故に。
覚悟せよ。既にほぼ手遅れである事を。
そして、自らも覚悟を決める。世界の滅びに巻き込まれる事を。
結果、生命的な命を失った場合、そこまでが我が限界である。




