第163話 あ、本当だ
翌日、ちょっと遅めに起きた俺達はカルロとニーナと合流し、1階で朝食を食べた。
そして、2階に上がると、部屋の前で立ち止まる。
「じゃあ、俺は今日一日色んな所で探ってみる。夜には戻ると思うから仕入れとミュリエル先輩の方は頼んだぞ」
「オッケー。任せておいて。じゃあ、レスター先輩、エルシィ、準備ができたら下でね」
「わかった」
俺達はそれぞれの部屋に入り、準備をすると、1階に降りる。
すると、すでにニーナが待っていた。
「あ、来た、来た」
「遅くなって悪い。カルロはもう出たか?」
「兄さんはすぐですよ。寝ぐせも直さずに行きました。あの人は適当だから」
俺でも寝ぐせは直すんだがな。
「まあ、そういう奴だな。俺達も行こうか」
「はい。ショッピングデートですね」
「こらこらー」
ニーナの冗談にエルシィがツッコむ。
「冗談よ。じゃあ、行きましょう」
俺達は宿屋を出ると、右の方に歩いていく。
やはり今日も人通りが多く、賑わっていた。
「まずはどこに行くんだ?」
「最初に金貨とインゴットを売ろうと思っています。それから買い物ですね。硝石を中心に買っていきます」
最初か。
「店はわかっているのか?」
俺とエルシィはわかっていないのでニーナについていってる。
「昨日、ある程度調べましたんで。ロード商会っていう大手ですね。まあ、金なんかの高値が付くものは大手に売っておけば間違いないんですよ。ウチもですけど、中小は支払えるお金を持ってませんので」
それもそうか。
ポードでのポーション取引の際もイレナは大手に売ってたしな。
「大手と大手で天秤にかけたりするのか?」
イレナはそうやっていた。
「時間があればそうしますけど、今回はやめた方が良いでしょうね。それに金は価値が高いところで安定していますからそこまで大差はないです」
なるほど。
「わかった。専門家のお前に任せるわ」
「任せてください。絶対に損をさせることはないですから」
まあ、拾い物と貰い物だからいくらで売れようと損をすることはないんだがな。
俺達がそのままニーナの案内で歩いていくと、3階建ての店にやってきた。
「ここか?」
「ええ。鉱石や貴金属を扱う店ですね。金貨やインゴットを売りますが、硝石の方もここで買う予定です。もちろん、交渉次第ですけどね」
ニーナはそう言うと、どこぞの豪傑のように右手で首に触れ、ぽきぽきと音を鳴らす。
「恨まれる様なことをするなよ。ポードで一緒に商売をしたお前と同じくらいの年齢の女商人が恨まれて刺されたからな」
もちろん、イレナね。
「怖っ……わかってますよ。私はそんながめつい商人じゃないですから」
イレナもがめつくはなかったけどな。
単純に私怨があっただけだ。
「頼むぞ」
「任せてください。では、行きます」
俺達はニーナを先頭に中に入る。
すると、1階は鉱石を売っているフロアのようで棚に様々な鉱石が並んでおり、それを多くの商人が眺めていた。
「並んでいるのは見本か?」
「ええ。在庫は別の倉庫にあるんでしょう」
やっぱりそうか。
「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」
近くにいた若い女性が声をかけてきた。
「どうも。私はターリーから来た商人のニーナ。こっちは学校の先輩のレスター先輩でこっちが同級生で先輩の奥さんのエルシィ。今日は金貨と金のインゴットの売却と硝石の購入で来たの。結構な額の商談になると思うから店長さんを呼んでくれる?」
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
店員は笑顔でそう言うと、近くの階段に案内してくれたので2階に上がっていく。
「2階が貴金属や宝石か」
1階とは明らかに雰囲気が違い、高級感がある。
実際、客の方もちらほらと高そうな服を着た貴族っぽい人がいる。
「こちらへどうぞ」
店員は階段近くにある扉を開ける。
部屋の中は真っ赤な絨毯が敷かれ、様々な調度品が並んでいる豪華な部屋だった。
そして、部屋の中央には対面式のソファーとこれまた綺麗な彫刻が施されたローテーブルがある。
「ここで待っていればいいの?」
「はい。すぐに店長を呼んできますので少々、お待ちください」
「わかったわ」
俺達は中に入り、ソファーにニーナ、俺、エルシィの並びで座る。
「高そうな店だな」
「貴族も利用している高級店っぽいですからね」
多分、イパニーアで買った方が安価で良いものが手に入るんだろうな。
「ウェンディ、いつものを頼むぞ」
「了解です」
エルシィの腕の中にいるウェンディが敬礼をした。
「いつものって何ですか?」
ニーナが聞いてくる。
「ウェンディは嘘を見抜けるんだよ。だから相手が嘘を吐いたら合図でエルシィの腕を叩くようにしているんだ」
「ほー……それはすごいですね…………ウェンディちゃん、ウチの子にならない?」
商人は欲しがるわな。
「私はレスターさんとエルシィさんの幸福な人生をお手伝いする仕事があるんです」
そうだっけ?
お前が一番、観光と食を楽しんでるだろ。
「そっかー。2人のイチャイチャが嫌になったらいつでもエルディアに来ていいからね」
「嫌になることなんてありませんよ。もう慣れましたから」
俺達、別にイチャついてない気がするんだが。
「エルディアは良い所よー。それにずっと食っちゃ寝していればいいの。ちょーっとだけお手伝いしてくれればいいから」
ニーナがそう言うと、ウェンディがエルシィの腕を叩いた。
かなり手伝わせる気らしい。
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