第162話 メンタル強
俺達がお茶を飲みながら過ごしていると、夕方になった。
「あいつらは上手くやってるかね?」
「どうでしょう? 大丈夫だと思うんですが……」
ちょっと心配だな。
「町も兵士が出歩いている感じではなかったが……ん?」
話をしていると、ノックの音が部屋に響く。
『おーい。いるかー?』
『レスター先輩ー? エルシィー?』
カルロとニーナの声だ。
「開いてるから入ってくれ」
そう答えると、扉が開き、2人が部屋に入ってきた。
「おー、やっぱりこっちも良い部屋だな」
「これで2000ゼルってすごいよね」
どうやら2人もチェックインして、自分達の部屋に入ったらしい。
「まあ、座れよ」
そう言うと、2人がテーブルにつく。
「ある程度の調査をしてきたぞ。それとミュリエル先輩にも無事に会えた」
とりあえず、ミュリエル先輩が捕まっているということはなかったか。
「それは良かった。それでどうだった?」
「まず、調査をしたが、普段と変わらない町って感じだな。何かを警戒していることもないし、誰かを追っている様子もなかった。今のところ、脱出は問題ないだろう」
ランスはミュリエル先輩の急な逃亡に疑問を抱かなかったのか?
「そうなのか……まあ、良いことか」
「ああ。それとミュリエル先輩にお前らのことを話してきた」
一番大事なのはここだ。
「どうだった?」
「ミュリエル先輩も一緒に逃げることに了承してくれたし、お前達を捕まえたりすることはないそうだ」
ほう?
「それは良かったが……いいのか?」
「ああ。ミュリエル先輩は帰国したら密偵を辞めて、実家の領地の貴族のお抱え錬金術師に転職するんだとよ。元から誘われていたらしいし、もう密偵もやっていられないそうだ」
転職先があるのか。
「普通に考えて、最初からそっちにしろよって思うんだがな」
「俺もそう思った。でも、ミュリエル先輩は外国に行きたかったんだと」
まあ、その気持ちもわからないでもない。
「ふーん。それで今回のことで、もういいってなったわけか」
「そんなところだな。とにかく、これで問題なく、トールハイルへ向かえると思う」
ふむふむ。
「出発は?」
「出発は3日後になる」
カルロがそう言って、ニーナを見る。
「そこしか貨物列車の切符が取れなかったんですよ。頑張ったんですけど、どうしても便が限られているので」
これだけ商人が多ければ利用者も多いか。
それを考えれば3日後は早い方かもしれない。
「わかった。よく確保してくれたな。となると、それまではこの町で待機になるな」
「はい。明日、仕入れを行いますので一緒に行きましょう。金貨とインゴットを売るんですよね?」
それも大事。
ゲイツで売っても良いんだが、この町の方が高く売れそうだし、何よりも専門のニーナに任せたい。
「頼むわ。ミュリエル先輩とは事前に会った方が良いか?」
俺も見かけたことはあるのだが、話したことはないし、向こうは俺のことを知らないだろう。
「そうですね。仕入れが終わった明日の夕方に会うことになっています。兄さんは明日、引き続き、調査をしますので私が仕入れ後にそのまま同行します」
カルロは調査か。
それも大事だろう。
「わかった。じゃあ、そんな感じでいこう」
「はい」
「よっしゃ。飯にしようぜ。成功を祈って祝勝会だ」
もしかして、また飲むんだろうか?
俺は1階に下りると、おばさんに夕食を頼んだ。
しばらくすると、おばさんが呼びにきたので再び、1階に下り、夕食を食べる。
メニューは鶏肉のソテーをメインとした定食で非常に美味しかった。
そして、夕食を終えると、部屋に戻り、追加で頼んだワインを皆で飲む。
「あー、早くエルディアに帰りたい」
「俺もだよ。こんなに休んで親方や同僚に悪いわ」
カルロの本業は雇われの職人だからな。
「なあ、ちなみになんだが、飛空艇で逃げようとは思わなかったのか?」
「飛空艇? 料金が高いし、列車以上に検問が厳しいだろ」
「空を飛ぶ飛空艇は地を走る列車と違って、何かあったら大事故ですからね。検問は本当に厳しいです」
まあな……
「私達はそれで逃げてきたけどねー」
「そうなの? よく検問を突破できたわね」
ニーナが感心する。
「大変だったよー。特に先輩は……」
そうだな。
たまにあの狭くて暗いカバンの中にいる夢を見るし。
「何したんです……?」
「……どういうことだよ?」
ニーナとカルロがちょっとビビりながら聞いてくる。
「ミュリエル先輩もやるか? 大きなカバンに入り、そのまま荷物として2、3日ほど貨物室に放り込まれるだけだ。暗くて狭く、身体も動かせない。さらには寒くて時間の経過もわからないからちょっと大変だぞ」
トラウマものだ。
「ちょっと……?」
「何だ、その拷問は……よく生きてたな」
ホントにな。
強力な睡眠薬を作って、飲んでおけば良かったわ。
「それだけ必死だったってことだな」
「大変だな……まあ、その選択はねーわ。多分、ミュリエル先輩では耐えらない」
普通はそうだろうな。
俺ももう一回やれって言われたら1億ゼルをもらっても拒否する。
「わかってる。正攻法でいくぞ」
お尋ね者になっていないのならオフェリアの時よりもずっと楽だろう。
俺達はワインを飲みながらその後も話をしていき、遅くに就寝した。
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