第157話 友人
俺達は列車の中でまったりと過ごしていた。
昼は買ったパンを食べ、午後からはエルシィの空間魔法の練習を横目で見つつ、本を読む。
そうやって過ごしていると、16時前くらいになり、ノックの音が聞こえてきた。
「はい?」
『俺、俺。俺だよ、俺』
なんか詐欺みたいで懐かしいな……
「入れよ」
そう答えると、扉が開き、カルロが部屋に入ってきた。
「よう」
カルロが軽快に手を上げる。
「起きたのか?」
「ちょっと前にな。しかし、列車の中は暇だわ。お前らは何してんだ?」
「俺は読書でエルシィは魔法の練習だな」
「へー……面白い本があったら貸してくれよ。俺ら、何も持ってない」
長旅になるだろうから用意すればいいのに。
「カルロ先輩、ニーナちゃんは起きてます?」
エルシィがカルロに聞く。
「さっき起きたぞ」
「じゃあ、ちょっとそっちに行ってみます。ウェンディちゃん、女子会だよ」
エルシィがウェンディを抱え、席を立つ。
「女子会ですか。良いですね」
「ね? 先輩、ニーナちゃんのところに行ってきますね」
「いってらっしゃい」
エルシィとウェンディは部屋から出ていった。
「いやー、ホント、しゃべる人形に慣れないわ」
カルロが笑う。
「いい加減、慣れろよ」
「そのうちな。なあ、お前のベッドはどっちだ?」
カルロが二段ベッドを見る。
「俺は下だな。座っていいぞ」
「ウチもだが、女子は上が良いのかねー? よっこらせ」
カルロがベッドに腰かけた。
「お前らってなんで今回の仕事を受けたんだ?」
ちょっと気になっていた。
密偵の仕事も真面目にしていないし、危ない橋を渡るとは思えない。
「ミュリエル先輩には世話になったし。卒業後も色々と交流があったからな。もし、貴族の密偵だったら適当な理由を付けて断ってる」
俺は知らないが、ミュリエル先輩と付き合いがあるのか。
「ニーナも?」
「ああ。むしろ、ニーナの方が多いな。職業上、俺は滅多に外に行かないが、あいつはランスにも来るし、その時にミュリエル先輩にご馳走になったとか言ってた」
ニーナはエルシィと同級生だから魔法学校では被っていないはずだが、それでも世話になったわけか。
「お前らが密偵になった理由って、そうしなきゃ国に帰れなかったからか?」
エルシィから聞いたが、ニーナは卒業する際に強引な引き留めがあったらしい。
「あー、それもあるな。めんどくさかったし。でもまあ、それ以上に金だな。つまんねー理由で悪い」
「金は大事だよ」
当然のことだ。
「まあな。お前らの方はどうだ? 店を開くために資金を貯めているんだろ?」
「順調だな。行く先々で仕事をして、儲けている。たまに危ない橋を渡ることもあったがな」
それでもそれ以上の対価は得ている。
「この前もお宝をゲットしたしな。あの金貨はどうしたんだ?」
無人島で手に入れた財宝ね。
「ナンスで売ろうと思っている。イパニーアは金が採れる国だからそこまで高くないってアドバイスを受けたんだよ」
フリオがそう言っていた。
「あー、それは確かにそうだな。それでナンスか。あそこは店も多いし、良いんじゃねーの?」
「治安が良くないらしいな?」
「良くないってほどじゃねーよ。イラドの王都の方が悪いくらいだ」
あそこはスラムもあるからな……
「ぼったくられないようにするわ」
「ニーナに頼めよ。本職の商人だぞ」
あー、確かにそうだ。
「頼んでみるか」
「そうしろよ。あいつはそういうのが得意な奴だ」
ふむ……
「お前は店のことに詳しくないか? ちょっと店を開くうえで相談に乗ってほしいんだよ」
「それもニーナだな。俺は店の手伝い程度だし、やっぱり本業は船の方だ」
カルロは職人だからな。
「そうか……じゃあ、後でニーナに聞いてみる」
「そうしろ、そうしろ。どうせ3日間、暇なんだからよ」
まあな……
「こういった移動にも慣れてきたが、暇なのは確かだな」
まあ、エルシィとウェンディがいて、話をしてくれるから苦ではない。
それにこれまで仕事を頑張っていたからこうやってゆっくりするのも良いものだと思う。
「新婚旅行の方はどうだ? やっぱり楽しいか?」
「楽しいな。オーレーの町も非常に良かった。それにエルシィと一緒というのが良いな」
「惚気かよ。けっ」
そう聞こえても仕方がないわな。
「お前、一人でどこかに旅行しようと思った時に湖が見たいからってオーレーを選ぶか?」
「選ばねーな。今回もニーナが言わなかったら行ってないと思うし」
そんな感じはする。
「でも、見て良かっただろ?」
「ああ。すごい幻想的な風景だったな。マジで妹が邪魔だった。彼女と来たいわ」
正直、兄妹で何してんだって思わないでもなかった。
「これまでそういうのが多かったんだ。俺だけでは見ることができないものばかりだった」
ポードなんかもそうだ。
「ふーん……そりゃ良いことだな。お前、勉強や仕事ばっかりってイメージがあるし」
俺自身もそういう人間だなって思っている。
「イラドから追われる立場になったが、これで良かったって思えるよ」
エリクサーのことを抜きにしても……
「うん。やっぱり惚気にしか聞こえねーわ」
そりゃすまんな。
でも、聞いてきたのはお前だろ。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
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