第156話 使う? 使わない?
ギルドを出た俺達は北に向かって歩いていき、町の中央にあるパン屋で昼食用のパンを購入する。
そこからさらに北に向かうと、駅が見えてきた。
「あ、カルロ先輩とニーナちゃんがいますよ」
エルシィが言うように建物の前にカルロとニーナの姿が見える。
「ここからでもテンションが低いのがわかるな」
「飲みすぎですかねー?」
「多分、そうじゃないか?」
俺達はそのまま駅に向かう。
「よう、早かったな」
「おはようございます」
2人も俺達に気付き、声をかけてきた。
「ちょっとギルドに寄ってたがな。お前らも早いじゃないか」
時刻はまだ10時すぎだ。
「早めに目が覚めたんだよ……二日酔いで頭が痛かった」
「私もです……」
そりゃあれだけ飲めばな。
「ニーナは二日酔い用のポーションを作れただろ」
エルディアでそう言っていた。
「それは飲みましたので頭痛の方はもう大丈夫です。単純に寝不足と疲れですね」
「俺達、超特急でここまで来たからな」
ふーん……大変だったわけか。
「列車の中で寝ろよ」
「そうする。ここで待ってても仕方がないし、行くか」
「ああ」
俺達は駅の構内に入ると、個室の切符を2枚購入し、ホームで待つ。
「お前ら、ギルドに寄らなくていいのか? さっきギルドでお前らも来たって聞いたが……」
カルロとニーナに聞く。
「あー、着いた時に寄ったな」
「おすすめの宿屋を聞きたかったのと情報収集のためですね。仕事もしてませんし、最初だけで十分ですよ」
そんなもんか。
「情報っていうのはランスの同盟破棄か?」
「ああ。その辺の探りだな。ギルドも把握していないと思う」
知っているのはイラドとランスの上層部だけか。
「周辺国の上の方は知っているのかね?」
「わからん。その辺は別の密偵の仕事だろう。イパニーアだけは調査が難しいだろうがな」
内乱中だからな。
一応、それの影響で同盟破棄をしたという線も考えられるが……
「戦争だけはやめてほしいな」
「俺達は儲かるんだが、確かに嫌だな」
俺達が話をしながら待っていると、列車がやってきたので乗り込んだ。
そして、個室に向かうと、部屋が隣だったのでお互いの部屋の前に立つ。
「じゃあ、俺達は寝る。起きたらまた話そうぜ」
「酒は控えろよ」
「わかってるよ」
カルロが苦笑いを浮かべる。
「エルシィ、また後でね」
「うん。起きたら呼んで」
「ええ。じゃあね」
俺達はそれぞれの部屋に入る。
個室は二段ベッドと窓際のシートがあるいつもと同じ部屋だった。
「到着まで3日でしたね。ゆっくりしましょうか」
「そうだな」
俺とエルシィはシートに座った。
もちろん、ウェンディは窓に張り付いている。
「先輩、ここで一つ確認しておきたいことがあります」
エルシィが真剣な顔で見てくる。
「何だ?」
「もし、この先、何かがあり、カルロ先輩、もしくは、ニーナちゃんが大怪我をした時にどうしますか?」
それか……
「今現在の冷静な状態で答えるなら状況による。例えば、こういう室内だったら使っても良いと思う。しかし、もし、それが町中だったら考える」
リスクが大きすぎる。
イレナの時も危なかったが、あそこはまだ路地裏だったし、数人の通行人はいたものの、距離があった。
「実際、どうですかね? 私は正直、使っちゃいそうだなって思います」
「俺もだよ」
「先輩、ここで決めておきませんか? 使うか、使わないかを」
使う場面は考える時間はほぼない。
エリクサーの使い時というのはそういう致命傷を受けた時だ。
それこそイレナの時のように……
「自分達はもちろん、使う。これはいいな?」
「はい。当然です」
エルシィがはっきりと頷く。
「それでカルロとニーナか…………使うんだろうな」
「やっぱりそうですか」
こればっかりはな。
「打算的な話をすると、あいつらは黙ってくれると思う」
すでに黙ってくれていたわけだし。
「それはそう思います。1個くれって言いそうですけど」
言いそうだな。
しかも、どっちも。
「友人は見捨てられないだろ」
カルロって唯一の友人なんだぞ。
「それは私もそうです」
「だから使うで良いと思う。容器も誤魔化しているし、イレナの時と同様に実はそこまで致命傷じゃなく、ハイポーションで治りました、でいけると思う」
イレナはそういう風に誤魔化してくれているはずだ。
そして、カルロとニーナもそうしてくれると思う。
「わかりました。では、そうしましょう」
「使う場面が来ないのが一番だがな」
「もちろん、そうです。でも、決めておかないと後悔することになるかもしれませんから」
それもわかっている。
「イレナの時は一瞬、悩んだからな。もし、あの悩みが長引いたら手遅れだったかもしれん」
「私は動けませんでした。脳裏にエリクサーが浮かんだんですけど、リスクとの天秤で判断が付きませんでしたよ」
気持ちはすごくわかる。
そして、エルシィがこの話をしたのもその時のことがあったからだ。
「ウェンディ、これでいいか? 大天使様の意見を聞かせてくれ」
窓に張り付いているウェンディに聞く。
「問題ないと思いますよ。エリクサーの使い時はそういう時です。御友人と……何よりも御自分の心を守りましょう。もし、使わなかったら一生後悔することになると思います」
だと思う。
俺達はこれからゲイツに向かい、さらに北上する。
その後の選択肢にイレナがいるポードも入っているが、もし、あの時にイレナが死んでいたら絶対にポードは選ばないし、選択肢にすら上がらなかったはずである。
それどころか、毎晩のように夢を見そうだ。
「エルシィ、そういうことだ」
「はい」
エルシィは頷くと、腕を組んで頭を預けてくる。
そんなエルシィの頭を撫でると、列車がガタンッと揺れ、動き出した。
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