第155話 お金ゲット
翌日、朝早くに起きた俺達は朝食を食べ、準備をする。
「さて、たった2日だったのに名残惜しいが、行くか」
「そうですねー。それだけ良い宿屋でした」
「ご飯も美味しかったですし、布団も気持ち良かったです」
ホントにな。
それでいて出費がゼロだ。
「たまにはこういうところに泊まっても良いなって思えるわ」
「ですね。じゃあ、行きましょうか」
「そうだな」
俺達は部屋を出ると、階段を下りていく。
そして、1階のエントランスにやってくると、いつもの若い男性の店員が待っていた。
「おはようございます」
「おはよう。今日、ここを発つことにした。2日間、ありがとう。おかげさまで良く休めた」
「そう言っていただけますと、ありがたいです。またのご利用をお待ちしております」
店員がそう言って頭を下げたので鍵を返し、宿屋を出る。
「さて、ギルドに行くか」
「ポーションを卸さないといけませんしね」
カルロとニーナとは10時半に北の駅で待ち合わせということになっている。
時刻はまだ9時過ぎだからギルドに寄っても時間は十分だろう。
俺達は地図を見ながら東に向かった。
すると、10分足らずでギルドに到着したので3階に上がっていく。
1階、2階と冒険者などの利用者が多く、賑わっているんだなと思ったが、やはり3階はこの前の受付嬢しかいなかった。
「あ、おはようございます」
俺達に気付いた受付嬢が笑顔で挨拶をしてくる。
「よう。ここっていつもこんな感じか?」
「残念ながらそうですね。ここに私しかいない時点で察してください」
暇そうな職場だな。
「宿屋は良かったぞ。ワインもありがとう」
「美味しかったでーす」
良いやつらしいしな。
「それは良かったです。ギルドはいつも皆さんの味方なのです。湖はどうでした?」
「それもすごく良かったぞ。あんな大きな湖なんて初めて見たし、ボートも漕いでみると、楽しかった」
「ロマンチックでしたー」
あの夕日はまさしくロマンチックだな。
「そうですか……ちゅーしたな」
受付嬢がボソッとつぶやく。
「してない」
「いや、そこはしましょうよ」
自分の願望だろ。
「自分の王子様にしてもらえ。それでな、その湖で旧友に会って、話をしたんだが、これから北のナンスの町に向かうことになった」
「え? そうなんですか? 急ですね」
受付嬢が驚いた顔になる。
「元々、そこまで長居する気はなかったんだが、友人の仕事の手伝いをすることになったんだよ」
「へー……イラドの方ですか?」
受付嬢が首を傾げた。
「いや、ターリーだ。同じ学校の同級生なんだが、留学生だったんだよ」
「あー、カルロさんとニーナさんのご兄妹ですか?」
「知ってるのか?」
「ここに来ましたからね」
2人共、冒険者ギルドに所属しているか。
よく考えたらニーナに他所の町に行ったらギルドを頼れって教わったのだから当然か。
「そいつらで間違いない」
「ということは御二人も出るわけか……優秀な錬金術師がすぐにいなくなっちゃうわけですね。まあ、カルロさんとニーナさんは仕事をする気がなかったようですけど」
2人はここに寄っただけだからな。
それに仕事も商人の方を装っているから錬金術の仕事をすることはない。
「あいつらは商人だからな。まあ、俺達の方はちゃんと仕事をしたぞ」
そう言って、エルシィと共に魔法のカバンから各種ポーションを取り出し、カウンターに並べていく。
「おー! それは良かったです! どれどれ……」
受付嬢は1つ1つ見ていき、鑑定していく。
「ポーションが40個、ハイポーションが10個、キュアポーションが10個だな」
「これを2日で作れるんですからすごいですね。しかも、昼間は湖でデートでしょ? 本当に優秀な錬金術師なんですね」
頑張った。
「鑑定なんかしなくてもいいぞ。全部、Aランクだから」
「うん……まあ、そんな感じですね。ぱっと見ても優良品しかありません」
「本当にあの森は質の良い素材が多かったな。もっと時間があればかなり儲けられた気がする」
この町に錬金術師はいないんだろうか?
大儲けできるぞ。
「それにしてもすごいですよ……えーっと、精算しますね。ポーションが45万ゼル、ハイポーションが30万ゼル、45万ゼルで……120万ゼルですね。高っ」
高いな。
でもまあ、ただでさえ、1.5倍で買い取るって言ったうえにAランクならさらに2.5倍って言ったのはそっちだ。
「儲けが出るのか?」
「貴族に売り付ければ黒字にはなりますね」
庶民は絶対に買わないわな。
「どうでもいいけど、俺達の名前を出すなよ。俺達はそのまま国を出るんだから」
多分、売る際に誰が作ったとか聞いてくるだろう。
そして、お抱えにしようとするはず。
「出しませんよ。冒険者ギルドは清廉潔白なんです」
はいはい。
そういうことにしてやるよ。
「頼むぞ。それとナンスってどんなところだ?」
「一言でいえば都会ですね。商業の町でして、国内だけじゃなく、国外からも多くの人が来ます。ここだけはゲイツの商人も来ますし、賑わってますね。ただ、そういった商人がお金を落として発展した町なんで取り締まりがちょっと緩いんです。要は治安が良いとは言えないって感じですね。可愛い奥様がいらっしゃいますし、単独行動は控えた方が良いです」
ふーん……ミュリエル先輩が隠れるにも適した町ってことだな。
だからカルロ達とミュリエル先輩は合流場所にそこを選んだんだ。
「わかった。気を付ける」
「ちゃんとナンスにある冒険者ギルドにも寄ってくださいね。良い宿屋を紹介してくれると思いますので」
また無料かな?
「期待しておく」
「あ、そこまで期待はしないでください。多分、割引くらいかなー? ウチみたいに提携の宿屋があるかわからないですし」
「そこまで図々しいことはしないから安心しろ」
すでに豪遊したし。
特に昨日のカルロとニーナは飲みすぎ。
「そうですか……では、こちらが120万ゼルになります」
受付嬢がカウンターに札束を置いたのでカバンに入れる。
「では、俺達は行く。良い町だったし、また来たいと思っている」
「すごく良かったですー」
「ありがとうございます。それではお気を付けていってらっしゃいませ」
受付嬢が微笑み、深々と頭を下げたのでこの場をあとにし、階段を下りていった。




