第133話 本音
「海路ですか……オフェリアが海が苦手とか?」
「自分の命がかかっているのにそんなこと言ってられんわ」
「ごもっとも……」
フリオがまたしても苦笑いを浮かべる。
「俺の考えというか、予想を言ってやろうか?」
「聞きたいです」
「海路というのは最初から案があった。いや、それが最有力だったはずだ。しかし、その案は消えた」
多分、そうだろう。
「なんでですか?」
「お前が海路は無理と報告したからだ。お前、最初に俺達と会った時にペインにいたな? そして、オフェリアは何故か王都だ。これから予想できることは当初、ペインからの海路を想定し、お前達はルビアから王都まで行った。そして、まずはお前が先行してルビアに行き、確認をした。結果、ペインは無理と判断し、王都に戻った。そんなところだろう」
これならこいつらの謎の行動が納得できる。
北に逃げるのにフリオはペインにいて、オフェリアが王都にいるのは明らかにおかしいのだ。
「あなたが疑問を尋ねなかった理由がわかりました。もし、私がオフェリアやマルドナド伯爵に『ペインは警備が厳重で無理そうだ』と報告したことを知れば、必ず、こう言うからですね。ペインに警備なんかなかったし、平和そのものだった、と……」
認めたか。
「ああ。だから変だなーと思ったが、言わなかった。そして、確認だ。お前の意思は何だ? お前がオフェリアをどうにかしようとしているようには見えないんだ。やろうと思えばいつだってできる立場なのがお前だからな」
俺達と会うまでもオフェリアと2人だったのだからどうとでもできるのだ。
「わかりました……説明しましょう。まず、私の所属です。実は反乱を起こしたオフェリアの兄の配下になります」
第一王子側と思っていたが、そっちか……
「続けろ」
「あの御方は随分と前から秘密裏に動き、多くの貴族を味方にしました。第一王子の粛清はそれほどでしたし、第二王子についていた貴族は冷遇されていますからね」
そうだろうな。
「それで?」
「反乱が決まったのですが、今度はその後のことを考え出したのです。実は第二王子にはあの御方やオフェリアの他にも10人以上の庶子がいることが想定されているのです」
第二王子さん……やっぱりお前もバカだろ。
「何してんだか……」
「これについては騎士の私には何も言えません。ですが、あの御方が危険視しているのはそれなんです」
「せっかく第一王子を倒し、王位についても今度はそいつらが王位継承権を主張するわけか?」
「ええ。もしくは、倒した第一王子側の貴族を巻き込んだ反乱が起きるのでは、と……」
今度は自分が狙われるのではと考えたわけだ。
「それでそうなる前に芽を摘めってことか」
「はい。だからあの御方は我ら騎士に命じて、庶子の調査を行いました。そこでオフェリアの存在を掴んだわけです」
「お前が報告したわけか?」
「いえ、別の者です。その者は引き続き、オフェリアの暗殺を実行しようとしたのですが、失敗しました。そして、後任になったのが私です。私はマルドナド伯爵に近かったので……」
マルドナド伯爵のおかげで騎士になったって言ってたな。
「それで暗殺は?」
「できませんでした。機会を狙っていたんですが……」
「その前に恋仲になったとか言わないよな?」
「…………どうぞ」
フリオが俺のグラスにワインを注いでくれた。
「随分とロマンチックだこと」
呆れながらワインを飲む。
「すみません……」
謝られてもね。
「このことをオフェリアは?」
「言ってませんし、知らないと思っていました」
思っていました?
「過去形か?」
「先ほど、風呂上がりのオフェリアに言われました。『殺すなら御二人に迷惑がかからない今、首を刎ねなさい』っと……」
オフェリアは気付いていたのか……
でも、ここまで言わなかったわけだ。
「どうしたんだ?」
「…………聞きますか?」
「殺したか、殺してないかだけでいい」
それ以上はいいや。
風呂上がりっていうのがね……
「殺してませんよ。そんなことをするわけじゃないですか」
あっそ。
ならいいわ。
「お前がペインの町をダメと言った理由はペインが反乱軍の本拠地だからだな?」
「わかりますか?」
またもや苦笑いだ。
「列車の中で新聞に反乱のことが載っていないという話になった時、お前は北部に情報が伝わるのに時間がかかると言っていたからな。反乱が南部で起きると決めつけるなよ。北部で起きることも十分にありうるぞ」
むしろ王都から離れているところからやるパターンの方が多いんじゃないだろうか?
「マルドナド伯爵から聞いたんですよ」
「オフェリアはまったくわかってなかったぞ」
「そうですか……まあ、そういうことです。あそこにオフェリアを連れていくわけにはいきません」
そうだろうな。
まさに飛んで火にいる夏の虫だ。
「なあ、あの検問は何だ? それだけがわからない」
何故、オフェリアを探している?
「この地は反乱を支援する貴族の領地なんですよ。多分、オフェリアが動いたことがどこかで伝わり、検問を敷いたってところです。実は昼の『身長160センチ程度の痩せ型で金髪の若い女性』って反乱軍の中で伝わっているマルドナド伯爵の領地にいると思われる庶子の特徴そのままなんですよ。皆が『他にないのか?』って思ってました」
そんなのいっぱいいるし、それだけでどうやって探せって感じだもんな。
「お前はもう反乱軍には戻らないんだな?」
「実はここでオフェリアとは別れるつもりだったんですよ……」
そうか……
「お前が微妙にオフェリアと距離を取っていたのはそれか?」
あのマルドナド伯爵に頼まれたからという最低発言。
「笑わないでくださいね。これ以上好きになったらダメだっていつも思ってました。私は騎士なんですよ。国や国民のために働きます。国を捨てるなどありえません」
国想いなことだ。
「でも、捨てるんだよな?」
「ええ……」
フリオが頷いた。
「オフェリアは多分、お前のその気持ちに気付いていたと思うぞ」
「だからこその『首を刎ねろ』という言葉なのかなと思いました…………もう引き返せません。私は騎士を辞めます」
今思えば、オフェリアが列車で態度を変えるように言ったのはそういうことがあったからな気もする。
「尻に敷かれる人生を送りな」
「そう見えますか?」
他にどう見えると?
「どう見ても主従だ。お前が丁寧すぎるんだよ」
「そうは言いますがね、オフェリアだって丁寧語ですからね。しかも、偉そうなのが悪いんです。あっちも直してほしいものですよ」
愚痴ってきたよ。
「俺に言うな。嫁さんに言え。これから旅をするならなおさらだぞ。怪しい、怪しい」
「頑張りますよ」
「俺達を見習え」
手本にしたまえ。
「そうですか? オフェリアがエルシィさんの先輩呼びに首を傾げてましたよ」
こちらと同様にあちらも思うことがあったか。
「まあいい。とにかく、明日だ」
「はい。お願いします」
俺達は乾杯をし、ワインを飲み干すと、2階に上がった。
そして、それぞれの部屋に入る。
「どうでした?」
まだ起きていたエルシィがウェンディを抱きながら聞いてくる。
「いやー、惚気だったわ。聞くか?」
要約すると、愛してしまった騎士の物語だった。
「聞きたいです」
「私もー」
2人が即答したので寝る前にさっきの話をすべて話すことにした。
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