第63話 仕返し完了。
ミチトの「お待たせ、シヤとシーシーの番だよ」と言う声で前に出るシヤとシーシー。
「シーシー、殴る?」
「シヤ、私を抱きしめて。マスターがライブさんを抱きしめたみたいに抱きしめてくれる?」
シヤはわかったと言ってシーシーを抱きかかえる。
「マスターとライブさんみたいにやりたいんだな」
「うん。何をしようか?」
「考えはある。マスターにやれるか聞こう」
シヤがミチトにやりたい術のイメージを見せて「俺でも出来るかな?」と聞く。
ミチトは驚いた表情でシヤを見て「シヤ、君は本当に凄い子だね。術人間なのにキチンとやりたい事のイメージが出来ていて術まで後一歩だ。これで身体の魔水晶が無限魔水晶なら使いこなせていたと思うよ。それはフレイムウェイブで出来るよ。やり方はわかる?」と言った。
「フレイムウェイブ?その術は知ってる。中を外すイメージ?」
「そうだね。伝心術を教えるからイメージをシーシーにあげてご覧」
「うん。やってみる」と言ったシヤはシーシーを見て「シーシー、受け取ってくれる?」と聞くとシーシーは「うん。頂戴」と言った。
シヤが「伝心術」と言って伝心術を使うと「来たよ。フレイムウェイブでこれがやれるんだね。私のフレイムウェイブはただの火の波なのに…」と驚きながら「やり方分かったから出来ると思う」と言った。
「シーシーは半分を頼む」
「うん。半分こだね」
シーシーはシヤにしっかりと抱き着く。
シヤはシーシーの肩を持って抱き寄せる。
傍目にはシヤとシーシーは恋人同士に見えてしまい、シーナとシヤの関係を聞いているから皆困惑気味に見てしまう。
「「フレイムウェイブ」」
シヤとシーシーの放ったフレイムウェイブは右と左に分かれて導火線のように地面を走るとエグゼを避けるように二又に分かれてお互いのフレイムウェイブが合わさって火の壁になる。
それを出した2人は頷いた後で火炎の範囲を狭めてエグゼを焦がしかける所まで迫る。
火の中から必死になるエグゼの悲鳴が聞こえてきていたが弱々しくなった所でシヤとシーシーは手を止めた。
離れたところで見ていた貴族の術人間、ウシローノ達はシヤのやったことが理解できなかったと驚きの声を上げていた。
これで報復が済んだと思った所でエグゼは「くくくくく」と仰向けのまま笑う。
責め苦の結果、頭がおかしくなったかと思えばそんな事はなく「素晴らしい力じゃないか…感謝しろフォースロット」と言い始めた。
「私とトロイのおかげで術人間になれたんだぞ…。楽しかったなぁ44番、お前の痴態と嬌声を皆にぃぃっ!?」
最後まで言う前にシヤが飛びかかるとエグゼを殴った。
「黙れ!お前のせいで俺達の全てが変わってしまった!ヨンゴを返せ!シローを返せ!シーナを返せ!シーシーを侮辱するな!」
暫くエグゼを殴るシヤを見てミチトが止めに入らない事でシーシーが「マスター?」と質問すると「平気だよ。シヤはすごいね。教えてないのにヒールインパクトを使ってるからいくら殴ってもエグゼは死なないよ」と笑顔で言った。
シヤの気が済んだタイミングでミチトが前に出ると「仕上げをするからそこまでだよ」と言ってシヤを止める。
「この状況で下らないことを言えた事は褒めますよ。ただ許しません。眠れ」
ミチトはそう言うとエグゼの頭に手を置いて改竄術を使った。
そして持っていたプレートをエグゼの背中に押し付けると「背中だけ石化術」と言った。
シックが前に出て「ミチト君、何をしたんだい?」と聞くとミチトは「今の殺せって言われながらボコボコにされた事をヒヨコの歌みたいにプレートに入れてエグゼに取り付けたんですよ。寝ても覚めてもずっと思い出します」と説明をした。
「それと生粋の変態だとわかったのでいやらしい事を考えると背中の石の部分に激痛が走るようにしました」
この言葉にシーシーは嬉しそうにコッソリと同じようにエグゼに汚された少女たちを見てホッとした気持ちになった。
イニットの処刑は簡単だった。
皆で痛めつけるのかと思ったがミチトはイニットに選ばせた。
「殺そうなんてしませんよ。ただ今ここにいる術人間達、約60人のファイヤーボールに耐えれば良いんですよ。死にたくなければヒールを使って耐えてください」
この言葉にセルースがつまらなそうに「なんだよ、殺さないのか?」とガッカリとする。
ミチトはセルースの言葉に返事をせずに「シラウメ、イニットにファイヤーボール」と命じるとシラウメ…元々はイニットの術人間だった少女は前に出て「おう!ソイツやな奴!ファイヤーボール!」と言ってファイヤーボールを放った。
シラウメのファイヤーボールがイニットに直撃をするとイニットの左腕は火傷まみれだった。
シラウメは「当てた!ゾーエン!見てた?」と言って元ガニューの私兵でシラウメ達…ガニュー領に居てイニットによって術人間にされた子供達に懐かれていたゾーエンに飛び付くと「見てた見てた」と呆れながら答えるゾーエンに満足そうに「にひひー」と笑っている。
ミチトはシラウメとゾーエンのやり取りを微笑ましい気持ちで見た後でイニットに「ほら、ヒールですよヒール」とせっつくとイニットは「む…無理だ…私は治癒魔術が苦手…なんです」と言って俯いてしまった。
ミチトは話を聞かずに「後59人にしてあげますけどどうします?」と聞くのだがイニットは「…許してください」と言って震え始める。
「じゃああなたの余生、寿命にして5年くらいかな?それをくれますね?」
イニットはそんなに年は取っていない。それなのに寿命が5年と言われたイニットは「5年?」と聞き返す。
呆れ顔のミチトが「何も知らずに禁術なんて使うからそうなるんですよ」と説明をするとイニットは「え?禁術?」と聞き返す。
「毒呪術を術人間の始末用に使いましたよね?あれ、確実に対象を殺せないと術が跳ね返って最後には術者を殺すんですよ」と言った。
術人間の始末用に用意した毒呪術の水を思い出して「あ……え…?」と間抜けな返事をするイニット。
「水を媒介にしたから、対象が曖昧なおかげであなたは今も生きていますが反動は始まってますよ」
この言葉にイニットは膝をついて泣き崩れた。
「だから禁術なのにバロッテスの真似をするからそうなるんです。今日死なずに済む方法はこの鉄に向かって毒呪術を使う事です。そうしたら俺があなたから毒呪術の知識を消します。後はエグゼと王都に突き出しますからガニューの罪を告白してください」
イニットは崩れ落ちたまま「わかりました」と言った。
ミチトはイニットの左腕を治すとイニットはそのまま鉄に毒呪術を付与する。
そして毒呪術の知識を消された後で、悪用しない事、他言しない事を誓ってから術人間を生み出す際のミチトの製法と自身の製法の違いについて質問した。
これは単純に1人の魔術師としての向上心から来るものでミチトは「すべては言いません。ただ自身が何をしているのか、その作業の意味を考えるべきです」と話した。
熱心に聞くイニットに悪い気がしなかったミチトは「ヒントと言うか流す術量が同じでも俺は術人間ならあっという間に生み出せます」と教える。
イニットは不思議そうに「一日中術を流さないと…」と言うが最後まで言う前に「それは誤りです。理解して施術すればもっと早く確実に成功しますよ」と教えた。
「では何故禁術に近い扱いなんですか?」
「…はぁ……、知らなければそう思いますよね。術人間の覚書にマスターの死後に関する記述が無いんですよ。
俺の死後、200人近い術人間達がどうなるかわかりません。それにこれだけの力を持てるんです。確実に争いに巻き込まれます。俺はそれが理由だと思っています」
この言葉にイニットは自身の行いを悔やんで「…わかりました。ありがとうございます」と言った。




