第33話 イブの根回し。
イブは詰所のそばのベンチに行って2人を呼ぶ。
3人で横並びに座ると「さあ、なんでもイブに言ってください!」と言った。
シーシーは少し困りながら進む道を決める勇気がない事。
シヤは自分を思い出してくれるかも知れない人で離れたくないけど王都が怖い事、自信が無くて騎士団も治癒院もできる気がしない事、両立なんてもってのほかだと伝えた。
「それで話を聞いてくれたシャイニングが大人の人に相談しようって言ってくれて…」
迷惑だったらどうしようと心配そうにイブを見るシーシーだったがイブは顔を紅潮させて嬉しそうに「大人!素敵な響きです!イブに聞いてくれてありがとうございます!」と言って喜ぶ。
可愛い系の美人に該当されるイブが喜ぶとその顔につい見とれてしまうシーシー。
イブはその勢いのまま「とりあえずブリザードフラワーちゃんは王都には行きたいですか?」と聞く。
突然で「え?」と聞き返すシーシーにイブは優しく微笑む。
「別にシヤ君と居たいけど仕事ができるかわからないのならマスターに言ってあげますよ」
「え?」
「思い出してもらえるかも知れないから近くに居たい気持ちはよくわかります!それにお仕事が不安な気持ちもわかります!」
イブの言葉に「そんな事出来るの?怒られないかな?」と不安げなシーシー。
「大丈夫ですよ。マスターがシックさん達に頼んでくれますよ。イブも言ってあげますよ」
「じゃあブリザードフラワーはそれなら王都に行く?」
「シャイニング…いいのかな?」
シャイニングは少し困った顔で「私は折角話せる友達が出来たのに離れ離れは寂しいけどこれで終わりじゃないよね?」と言って笑顔になる。
「私達はマスターやイブさん達に助けてもらってトウテに来れた。明日の話をしても許されるんだよ!イブさん!私ブリザードフラワーとまた会いたいよ!会えるようにしてくれる?」
「当然です!大きなお休みをもらったらトウテに帰ってこれるようにしましょう!イブから皆に言ってあげますよ!」
この会話の力強さを感じたシーシーが「じゃあ…シヤが居る王都に行きたいです」とハッキリと言った。
「じゃあ根回し行きますよ!」
「え?」
「根回し?」
「はい!」と言ったイブはニコニコとトウテを歩くと最初にエクシィとヤァホィとライドゥの所に行く。
「んだ?イブとブリザードフラワーと…嬢ちゃんの名前は?」
「シャ…シャイニングです」
「こんにちは。3人でどうしたの?」
「根回しに来ました。助けてください」
シーシーの話を聞いたヤァホィは「そうだよね。それが良いよね」と言いエクシィは「だよな!いきなり人生決めろみたいに言われたら嫌だよな!ミチトには無茶振りしてやるから任せときな」と言う。そしてライドゥが「うむ、ミチトは器用貧乏なのだから問題ない」と言う。
誰も異論を唱えずに話が進んでしまう事にシーシーは「え?マスター怒らないかな?」と不安を口にするが全員笑顔のままだ。
そして「言わない方が怒りますよー」と言うイブの言葉に「だな」「だね」「うむ」と言う3人の老人だった。
「じゃあ次ですよー」と言ったイブが向かった先にはセルースとテレアとポスがいる。
イブに気付いたセルースが「イブ?どした?」と聞く。
「根回しですけどセルースさんはどうしたんですか?」
セルース対ポスとテレアの構図で何かを言い合っていてイブの根回しの前に解決しないといけない感じがする。
セルースは「ああ?いやぁ、テレアの奴がよう…」と言ってバツの悪い表情でテレアを見ると「私もメロと一緒にお勉強したい!」とテレアが怒っている。
セルースの娘テレアとミチトの娘メロが同い年の4歳でようやく昨日友達になった。
ここでイブは全てがわかる。
メロは元々ミチトとアクィの考えでラージポットを攻略するまでロウアンの所で世話になっていて、ローサからマナーを教わったりしている。
テレアは同い年の友達、西側のボスをしているセルースの娘と言うだけで皆が遠慮する中でミチトやアクィ、その娘のメロは気兼ねなく仲良く遊べる友達でメロが楽しそうに「メロは今日ローサおばちゃんの所でお勉強なの!」と言われれば一緒に行きたくなる。
ローサもセルースとのパイプは持っておきたいので拒むことなくテレアにもマナーを仕込むというだろう。
「これなんだよ、勉強なんてしないで伸び伸び遊べって言ってんのによぉ」
ここでテレアの母親のポスがあきれ顔で「イブからも言っておくれよ、うちの人ってばテレアに選ばせないんだよ」と漏らす。
聞かなくてもわかるがイブは一応「テレアちゃんの勉強ってローサさんのですか?」と聞く。セルースが答える前に「うん!メロは今日はお屋敷でお勉強の日だってアクィと行っちゃったんだよ」とテレアがボヤく。
ここでポスも「アクィに聞いたらローサさんはテレアも是非にと言ってくれたのにこの人ってば…」と行ってセルースを見るとセルースは頑として譲らない表情をしている。
「イブも全部終わったら行くやつですね。セルースさんは何が嫌なんですか?」
「ああ?子供なんてのはニコニコ元気に走り回って大人になったらライブやうちのポスみたいになってくれればいいんだよ」
ここでため息交じりにイブが「…無理言いますね」と言う。
セルースは目を三角にして「無理?何がだ!?テレアには無理って意味か!?」とイブに詰め寄る。
イブは怯えることもなく「違います」と言ってテレアを見てからセルースを見る。
「ライブだってきっと記憶のなくなる前、ラージポットに来る前はキチンと練習とかお勉強してたから普段がお淑やかなんですよ?それにローサさんから教わっていつも隠れて練習もしてます」
イブはライブの過去を知っている。
ライブは商家の娘として同じ平民でも少しだけマシな教育を受けていた。
知っているとは言わずに想像として伝えて、キチンと知っているラージポットから先の話を教える。
これは想定外だったセルースが目を丸くして「マジか…?」と聞くと微笑んだイブが「マジですよ。それを大人になったから急にライブみたいになれなんて酷い話です」と言う。
セルースはお唖然とした顔でテレアを見て「テレア…、オメェ…行っとくか?」と聞くと怒り顔のテレアが「だから行きたいの!」と言って声を張る。
バツが悪そうにポスを見たセルースが「ポス?」と聞くと「反対してたのはアンタだけだよ。テレアは孤児院で皆と勉強したりローサさん所でマナーの勉強もするんだよ」と言い切った。
この言葉にシャイニングが「あ、じゃあ私と一緒なんだね」と言うとセルースがシャイニングを見て「あ?こっちのちびっ子は孤児院組か?じゃあテレアをよろしくな!」と言った。
「はい!私シャイニングって言います!」
「シャイニング!私はテレア!よろしくね」
「助かったよイブ。で?根回しってなんだい?」
ここでイブがようやくシーシーの話をすると「わかる!!だよな!俺もそう思って居たんだよ!」とセルースが熱くなる。
「いきなり人生決めろって酷え話なんだよな!向いてなかったら辞めるとかトウテに戻れるとか大事だよな!よし!ブリザードフラワーだったな!任せろ、俺がミチトにはガツンと言ってやる」
そう言って燃えるセルースを見てイブが「これで大丈夫ですよ」と言って微笑んだ。
「え?良いのかな…マスター怒らないかな?」
「問題ねぇよ。ミチトは言われない方が堪えるんだから無理難題ぶっかけてやれ」
「…」
「どした?目ん玉丸くして?」
「ヤァホィさん達と同じ事言ってるからビックリしたの」
何でそんなに人の事がわかるんだろうとシーシーは思ってしまう。
「へっ、それがミチトだからな。とりあえず王都には行きたいけど道が定まらないって言ってやるから安心しな」
「ありがとうセルースさん」




