第32話 進路問題。
名前の後でヒノとヤオに呼ばれたシーシー達。
その話は今後をどうするかでシヤ達は少々特別だからと後に回されていた。
「俺は昨日マスターに言ったみたいに術人間にされる子を救う事もしたいしロエスロエなんかで困る人も助ける為に治癒院にも入りたい」
シヤの言葉でシイ達も少し考えて「俺も両立って出来るかな?ヨンゴもシーナも思い出せないけどそっちのがいいよな?」と言ったシヅに合わせるようにシイとヨミも頷く。
アメジストは「…シヤは王都に行くの?」と不安げな顔をする。
「ああ、アメジストはどうする?」
「わからないの。シヤとは居たいけど自信がないの」
アメジストの不安げな顔を見てヒノが優しく頭を撫でながら「まだ明日くらいまでは考えられるからゆっくり決めなさい」と言うと横のヤオが「ブリザードフラワーちゃんはどうですか?」と聞く。
「少し考えてくるね」
シーシーはそう言って外に出て湖まで歩く。
トウテの住人達は皆シーシー達術人間達を本当に気遣っていて顔を見ると「散歩かい?」「どこまで行くの?」と声をかけてくれる。
シーシーは「湖を見てくる」と言って歩くとそこには昨日話したシャイニングが居た。
「シャイニング」
「あ、こんにちは。名前…」
「うん、ヤオさんに貰ったよ。ブリザードフラワーって名前になったよ」
シーシーは言っていて照れながらも何となく名乗るたびに自分がシーシーではなくブリザードフラワーになって行く気もしていた。
「いい名前だね。凄く似合ってるよ。それでどうしたの?湖が好きなの?」
「ううん、よくわからないけどこれからの事を考えたら不安でどうしていいかわからなくてなんとなく湖が見たくなったの」
シーシーの声に横にどうぞと言う感じでシャイニングが動くとシーシーが横に立つ。
そして2人で湖を見ながら話が進む。
「これから?まだ決めてないの?」
「うん。シャイニングは決めた?」
「私はここに残るの。仲間達は王都に行って騎士団に入る子や治癒院の子も、あなたの所のシヤと同じ両立を目指す子も居るけど私はそのどれも自信がない。その事をヒノさんに言ったらね、孤児院でご飯の作り方からお勉強、後はマスターと一緒にいた赤い髪の毛のアクィさんがローサ様のお屋敷でマナーを教えてくれるって言うの。
このトウテの孤児院なら怖い戦いも病気の人を治す重圧もないんだよってヒノさんが言ってくれてここにしたの」
シャイニングの言葉を聞くと何て魅力的なんだろうかとシーシーは思ってしまう。
トウテに残ってもキチンとやれる事ややる事がある。
だが同時にシーシーの中に別の不安がよぎる。
「皆と離れるのは怖くない?」
「…怖いよ。怖いけど今はトウテでできる事を探したいの」
ここでシャイニングが「ブリザードフラワーは?」と聞く、シーシーは「…怖いよ。離れるのも戦うのも人を治すのも怖いよ」と気持ちを打ち明けた。
「そっか、何が1番怖いの?やっぱり彼氏の事?」
「彼氏!?」
シーシーは真っ先にシヤを思い顔を赤くする。
好意なのか何なのかわからないがシヤだけが自分を思い出してくれるかもしれないと思うとシヤの傍に居たい気持ちになる。
だが彼氏と聞かれると照れてしまう。
慌てるシーシーに「違うの?」と聞くシャイニング。
「違うよ。でもシヤが唯一私を思い出してくれるかも知れないんだ」
シーシーはここでトロイの施術の甘さ、自分より先に作られた仲間達は皆シーシーの事を忘れてしまった事。
シヤが脱走して連れ戻されるまではいつも覚えてくれていた事を告げる。
「そっか…。わかるよ。知ってくれているかも知れない人と離れるのはヤダよね?」
「うん」
「でも戦う自信もない」
「うん」
肩を落として泣きそうな顔で湖を見ながら返事をするシーシー。
シャイニングはその横顔を見ながら1人頷く。
「なら大人に相談しようよ」
「え?」
シーシーはシャイニングに連れられて街に戻る。
「お帰り、湖かい?今度はどこに行くの?」
「ただいま、湖見てたんだけど聞きたいことが出来たの!イブさん達は居るかな?」
「あー、ライブちゃんは学者先生を送り届けて居ないけどイブちゃんなら詰所だよ。詰所の入口にいる兵士にイブちゃんに会いたいって言ってご覧。忙しかったら我慢してよね」
「うん!ありがとう!行こうブリザードフラワー!」
相手をした男はシーシーの名前を「いい名前だね」と言って手を振る。
シーシーは照れくさそうにしながら手を振り返す。
イブは兵士が呼びに行き、術人間の子達が聞きたいことがあると言う言葉ですぐに「どうしたんですか?」と出てくる。
迷惑そうな素振りも何もない。
「この子、ブリザードフラワーのことで話を聞いてもらえませんか?」
「いいですよ。なんでもイブに言ってください!」




