パティー
「ぱんかーい!」
きったねえグラスがカツンと乾杯でぶつかり合った。
夜も始まり──旧校舎前の校庭だったスペースで小さな焚き火をおこし、引っ張り出してきたボロい学習机と椅子を置いて、二人だけのささやかなパーティーが始まった。
パーティーといえば焚き火と外でご飯アル、というのがワルディー流らしい。
ワルディー秘蔵、ビンに入った白い乳飲料『にゃるぴす』を原液のまま差し出された俺は、とりあえず渡されたグラスをクイっと傾け、その液体を口に含む。
ぐふっ。甘。ノドに絡みつく。
普通は水で薄めるなりする物だが、お祝いの時は贅沢に原液でイクらしい。ワルディースタイルだ。
「あふ~。キましゅねぇ~」
何が?
うぃ~、と飲み干したワルディーがスグに二杯目を注ぐ。
彼女お気に入りの、ネコさんのテーブルクロスが敷かれた机の上には──いい感じに年季の入ったきったねえ皿が三枚。
ワルディーお手製のナポリタンが俺とワルディーにそれぞれ一皿ずつある。
旧校舎の家庭科室なんかはある程度機能しているらしい。
ワルディーの生活の為だけじゃなく、シズカを筆頭に、ダラダラ女子達が色々と焼いたり煮たりしてるんだって。──どういったスクールライフだよ。
シズカは旧校舎内の倉庫に積んであった非常用の寝袋を引っ張り出して俺に預け、簡単に校舎内の使える設備を教えてくれた後、「今日のところはこの辺で」と帰っていった。道場やら夕飯の支度やら、色々やる事があるらしい。そういや昼間にサリオが同門でどうたら、とか言ってたな。
サリオは今日、非常時に備えた夜間シフトで学院に泊まりなんだってさ。おつかれさんデス。
まあそれはそれとして、このナポリタン……結構うまそう。いい香りだよ。
──が。
真ん中に置かれた皿の上には……なぜか味付け海苔が皿の外堀におしゃれな感じで一枚ずつ、円形に並べられていた。
そしてその円のど真ん中には……ロウソクをブッさしたメロンパンが一個。
う~ん、エグゼクティブってなるかバカ。
なんの儀式だよこれ。何呼ぶ気だよ。
うかつに手を伸ばすと呪われそうだ。このロウソクに火を点ける勇気が俺には無い。
「じゃ、火ぃつけるアル」
「つけんな」
俺はワルディーがたきぎの先端に火を灯して持ってきたところを素早く制止しておいた。
「パティーはろーそくに火をつけるものレス」
「だめだ。何かを召喚しそうな気がする」
ぷう~、と火を持ったまま膨れるワルディーを、目を光らせて止める俺。
「が、がまんできましぇん!」
と痺れを切らしたワルディーが、たきぎをロウソクに伸ばしてきやがった。
「だ、だめよワルディー! あ! ついちゃう! ついちゃう!」
緊迫感に、つい乙女と化した俺が止める声も空しく──ロウソクに火が灯ってしまった。
──直後。
内ポケットにしまいこんでいた俺の携帯端末が、設定には無い、謎のメロディーを奏で始めたから……二人してマジでビビッたんだ。




