働かざる者、くういんたいか
「──ランチ、美味しかったか?」
「……え? あ、はい。おいしゅうございました」
ニコリと笑む理事長に俺は警戒しながら答える。悪そうな流し目とのギャップは何だか魔力みたいなモノさえ感じた。
「働かざるもの、食うべからず。すなわち──食ったら、働け」
こ、この女王タイガー。そういうことか。貴様の差し金だったとはな!
「騙し討ちだよ! ずるいよ! 何させる気か知らないけど拒否だよ! 働いたら負けだってママが……」
「龍士郎、住む場所はどうなった?」
ちゃんと聞いてよ。俺の抵抗を完全無視の理事長はまたスナック菓子をぽりぽりと。
入学前に、一応自力でなんとかする旨は校長に伝えておいたが……。まあ、何も考えてなかった。
別に寝床なんざどこだってイイ。というか寝床がいらん。どこだっていいよ。おれぐらいのレベルになるともう、どこでも住所だよ。
以上の点から導き出される答えは一つだろ。
「地球ですが」
「SFです」
「ワイルド過ぎるぞ龍士郎」
タイガーとシズカが衝撃に固まった。
「──ここから徒歩十五分ほどの森林地帯に旧校舎があってな。そこを貸してやるよ龍士郎」
え? 旧校舎?
理事長は机の隣にドンと立った茶色の木製書棚のひきだしに、イスに座ったまま腕を伸ばして何かゴソゴソと。
引っ張り出したのは小箱に入ったウイスキーボンボン。
「わたくし達の秘密基地です」
シズカはニコリと言って理事長の机に歩み寄ると、机の上に散らばるオヤツを物色し始めた。
旧校舎……ですか。
そういや登校の道中で、森の方に古めかしい時計台を見たが……あれがそうかしら?
だが理事長のお誘いならばお断りするのがスジ。
「オバケ出そうだし嫌です」
「オバケ出ないです」
「前言撤回だよ龍士郎」
ワイルドの欠片も無かった俺に、タイガーとシズカが衝撃に固まった。
「──ふむ。寮もあるが、現在避難民達でいっぱいだ。あとは私の家しかないが、そっちがいいか? かわいがってやるが」
「旧校舎最高ですよ理事長。すぐに向かいますんで」
妖しく舌なめずりするタイガーに素早く伝えると、シズカは申し訳なさそうに苦笑い。
「冗談はさておき、ウチは広さだけが取り柄だから、孤児達に寝床とご飯を提供しているんだ。毎日賑やかだよ。オマエがそういう温もりを望むなら、ホントに来ていいぞ」
「──ただ、部屋は埋まってしまっていますので、庭先にテントを張っていただくとかになってしまいます。それでも宜しければ、なのですが……」
ほう。そういう事か。
でも庭先だろうがスペースはもちろん有限だ。ご飯も出るみたいだし、いずれ本当にそれを必要とする人も出てくるだろう。
その誰かに、譲るよ。
俺がそう伝えようとする前に、理事長は少し寂しげな微笑みを浮かべてきた。
「──が、現在旧校舎に一人で寝泊りしてるワルディーが……やっぱり不憫でな。できれば、誰か傍にいてやって欲しいというのも、ある」
え? あいつ一人で旧校舎とやらに住んでるの?
その辺りは知ろうとも思ってなかったんで、まあ、初耳。
「ワルディーもウチでホームステイの予定だったのですが、ウチがそういう施設をかねている事を知って、他の方に譲ると。誰も使ってないところでイイと言い張るので、わたくし達が遊び場にしてた旧校舎を案内すると『これアル』とストライクの様でして」
姫がまた少し、申し訳ない感じで笑う。
ふむ──。そうでしたか。
俺はぽりぽりと頭を掻いて少し思案顔を浮かばせた。
まずナンでたまに中国系なのワルディー。




