シズカなるタイガー
「龍士郎。先ほどの戦闘、見事な働きだった。これが報酬の『ちょこ坊主』だ」
そういった契約とか交わしてねーよ。
俺は理事長が机の上を滑らせてきたお菓子を「お気持ちだけで」とスルーしといた。
「この私が初めて買った『ちょこ坊主』で大当たりを引いて、調子に乗ってまた買ってみたコレの何が不服だというのだ」
「調子乗んな。降りろ。調子降りろ」
嫌な感じで片眉を上げてきた理事長にぴしゃりと言っといた。帰りてえ。
「さて、誓約書の件だが……」
「引き裂いてやるわよ! 書いて……アンタの目の前で引き裂いてやるわよ!」
「なんで乙女っぽく言ったんだ少年」
不本意ながら息の合った理事長と俺の掛け合いに、横でシズカが顔を背けて笑いを堪え続けた。
「まあいい。……自己紹介がまだだったな。私が空院女学院の女王、空院 大華。──そしてまたの名を、[クィーン・タイガー]!」
「[クィーン・タイガー]!」俺は衝撃に固まった。
二つ名を言い出した辺りでチャキーン! とタイガーは立ち上がって片手を腰に添え、モデル立ちみたいに腰をくねらせて妖しく目を細めた。帰りてえ。
「そしてわたくしが空院女学院高等部一年、空院 静。──またの名は、特にありません!」
チャキーン! と姫も俺に向かってモデル立ちで片手を腰に添える。何この親子。
「姫って呼ばれてんじゃん」
俺がどうでもいい感じで言っとくと、シズカはちょっと、しゅん、としながら両手の指でもじもじ。
「……でも、わたくしは少し大き過ぎるので、その、姫などと呼ばれると何だか申し訳ないです」
あら元気のない。気にしてるのねこの子。
ん~。確かにおっきい子だよ。
そしてその胸。
…………おっきい子だよ…………。
──失礼、ハアハアとお見苦しいトコロを。
ふん、仕方ない。哀れな人類をフォローしてやるのも超越者たる私の役目か。
「いいじゃん別におっきい子でも。おっきい姫とか今超キテるから」
俺は相変わらず素っ気ない感じで、適当に元気づけてみた。姫は俺にたどたどしい上目づかいで不安げだ。
「……キテますか?」
「キテるキテる。龍ヶ崎とか行ってみ? 囲まれるから」
「まずドコだそれは」
女王がツッコんできたので、俺はビシッと指差して黙らせてやったよ。
「茨城の聖域だよ! 見所も……ね?! 色々、サンクチュアリで、四季折々のアレが、こう……ね?! ほっとけない感じだよ!」
「──茨城県……。わたくしの目指す先。わたくしの天竺」
シズカが多分前向きに、ブツブツと何か言い出しました。目が危ないと思いました。
「──よし。偶然にも龍ヶナントカの話が出たところで本題といこうか」
「絶対こじつけに違いないよ……」
俺は嫌な予感に固まっていた。レザーシートにふんぞり返った女王が何を言い出すのか知らないが、まず、知りたくもなかった。




