女王
「失せるがいい」って言ってくれたんだ。
言ってくれたのに。
シズカは「失礼いたします」と構わずドアを開けやがった。
ぱりぱり、こりこり。ぷしゅ! ごきゅごきゅ。
マジか……。
俺とシズカは重厚感あふれる理事長の机の前で並び立っていた。
さくさく、ごきゅごきゅ。
ぷしゅ! ごきゅごきゅ。二本目いきやがった。一本目まだ残ってるウチに二本目。
革張りの立派な椅子に腰掛ける女性は、ジーっと無表情で俺だけを見ながらもうやりたい放題。机の上にブチまけてある袋菓子やら箱菓子やらを大人食いして缶ジュースで流し込む。
いや、こんなの大人じゃないよ。
──まあ、恐ろしくキレイなお方だった。
シズカが少しクールになって大人の色香を加えた感じ、そんなトコか。長い髪に白のスーツ。というか、お世辞抜きに姉妹にしか見えない。
「お母様、食べ過ぎです」
「娘は黙っていればいい。──そう、失せるがいいって言ったのに普通に入ってきた娘など、な」
娘に目を細め、カリっとこれ見よがしにポッキーを横へと食いちぎる理事長。悪い人っぽい。
「──さて、だ」
俺にゆっくり目線を流す理事長。悪い人っぽい。
「少年。これを見て欲しい」
不穏を含むかの様な低音でそう言うと、理事長は机の引き出しを開ける。
──なんだ? 少し、ただ事ではない空気だ。
コトリと、理事長は机の上にそれを置いた。
……アルミ缶?
何か色んなイラストが描かれた、ジュースの缶よりももっと大きなモノだ。
それと一緒に小さな箱菓子も並べてきた。これ、会長もサリオも買ってきてたな。
「これは『おもちゃの缶かん』といってな、この『ちょこ坊主』というお菓子の中に低確率で入っている金の坊主カード一枚、もしくは銀の坊主カード五枚で、メーカーが交換してくれる景品だ。子供達に大人気でな。まあ、子供が好きそうな雑貨などが中に詰まっている」
へえ。景品か。メーカーも色々考えてるな。まあ俺もこういうの、嫌いじゃない。
多少興味を持った様に、俺はソレへ僅かに顔を寄せる。
「……ただ、少し、問題が起きてな」
理事長の目がまた、細まった。




