おやつナデシコ
時間が止まったようだった。
哀れなおやつジャンキーどもが、勇ましく立ち上がった俺を見上げながらビックリしてやがる。
──そう、この女子どもは遂に超越者たる私の逆鱗に触れてしまったのだ。
終わりだよ──人類。
「お、『オヤツなでしこ』」
「初めて言われました……」
サリオとシズカがゴクリと固唾を呑んだ。
「語君……君は一体……」
「ポッキーでも与えてみるか……」
ナツミと会長がゴクリとミルクティーを飲んだ。
「カタリ君、続けて」
穏やかに促すんじゃないよライフは。
ワルディー、わくわくすんな。
「これ……何会だよ! なんで三股軍人の話から宇宙の謎みたいな……幅広いよ! こんなの、こんなの質問会じゃないよ!」
俺の握ったコブシがプルプル震える。「からの~」みたいな感じやめろワルディー!
「──ふっ。何かボウヤが勘違いしているんじゃないか?」
ナツミがとうとう、不敵な笑みを浮かべた。
──罠か。俺の目が研ぎ澄まされる。
そして、彼女の口から残酷な真相が語られたのだ。
「これは質問会という聞こえのいい皮をかぶった女子会だ」
「開き直るんじゃないよ!!」
ぽりぽりと菓子をかじって目を光らせる一同に、俺は衝撃で固まった。
「質問を欲しがってるんじゃない?」
「そんな欲しがるとか、はしたない! 欲しがってないよ!」
カラフルなチョコを物色するライフにビシっと人差し指を突きつける俺。
「あ、サリオワンダフルで大丈夫ですよね?」
「そういえばそれ何なの?! 大丈夫なものなの?!」
パリパリとポテチをかじりながら真剣な眼差しで尋ねてくる姫に衝撃を受けながらも、俺の内なる怒りはとどまる事を知らずに溢れ続けた。グダグダな女子どもに今日こそはビシッと言ってやりますよ。
いや初日だけど! 初日からビシッと……ね?!
「まずおやつの香りが凄いんだよこの教室! 香りでお腹いっぱいだよ! 入室しただけで一食分浮くぞコレ!」
「おやつと酢メシでだいじょーぶれす」
「おだまりワルディー! そんな特殊な食生活は許さなくてよ!」
「なんで令嬢っぽいのよこの子は」
ペコリとお辞儀するワルディーに説教する俺は、甘ったるい香りに毒され乙女と化していた。
ツッコむライフがほれほれとエビせんを差し出してなだめて来るが、「いらないわよ!」と男らしく突っぱねてやった。
「やれやれ。だからこの程度で騒ぐボウヤだというのさ。──君は空院女学院の隠された闇、そしてその罪深さを知らない、かわいいボウヤだよ」
「──な、何だと? ……一体この学院に、何があったというのですか先輩」
ナツミの細く光る瞳に俺は後ずさり、顔に冷たいものが流れ落ちていた。




