西日本女子連合 VS 超越者 サードエクスタシー
「いい加減にしろ貴様達! なんだこのおやつ率は?!」
会長キター!! ビニール袋デカっ!
謎の威厳を放つ新たなる来訪者。ナツミが興奮冷めやらぬ声を上げ、彼女を手招いた。
「ちょっ会長! これ見てみ?! アイスが十万だぞ?! 世も末だな!」
「アイスまんじゅうが何だと言うのだ!」
輪になってお菓子の山を囲み座る俺達に、キレ気味でツカツカ歩み寄る会長。ビニール袋は一番でかい。
「ほら」
俺の隣に座るライフが携帯端末の画像を、後ろに立った会長に見せてあげた。
「ありえん!!」ばちーん!
「にゃんすぃぃいい!!」
ばちーんと会長にほっぺたを張り手されながら、俺は謎の奇声を上げた。
「最早資本主義の末期だな! その哀れさはまるで賽の河原で石を積み上げては鬼に蹴り崩される亡者の様だぞカタリン!」
「なんで俺が黒幕の様に!!」
仁王立ちの会長を見上げながら俺は衝撃に震えた。
「受け取るがいいセクハラ野郎」
はしゃぐワルディーが用意したパイプ椅子で、俺とライフの間に割り込む形で座った会長が何かくれた。
ロイヤル・バニラ。
「野郎には過ぎたご褒美だが命の恩人とあっては仕方がない。まったくもって腹立たしい!」
もっと敬ってあげてよ……。ぷりぷりとキレ気味の会長に俺は衝撃に固まった。
「そんな……! これではロイヤルなバニラがカブってしまった事に……!」
シズカは何やら計算の上、悲痛な声を上げた。
「水臭いぞカタリ。いつだって私達がそばにいてやる」
俺が手にする二つのロイヤルをじぃ~っと見つめるサリオ。おあずけを食らう狼だな。
「カタリ君。あそこにオバケがいないかチョット、見てきて。アイスは置いて」
ライフがありえない手段に出てきた。
「リュシロ、オバケいるからチョットみてきて。アイシュ持って」
そうなると何が望みなのオマエは?
「これが絆ってやつさ。後輩」
「ゆっくり取んな」
ゆっくりと俺の手からアイスを取ったナツミに俺は固まる。
「カタリンごときが一人で手に負えるシロモノじゃないんだ! 身の程を知れ!」
「じゃあなんで買ってきたの?!」
カップアイスに付き物の木のスプーンをどっさり机にブチまけながら言う会長に俺は震えた。
「けしからん! なんだこのロイヤルは?! ふざけるな!」
なんでキレるのサリオは。
「ちょっ! 沙理緒ごっそりイキ過ぎです! ここからここはわたくしの陣地で──」
線引くな姫。
「静かにしなさいあなた達。はしたないわよ」
ライフはさりげなくカップ一個丸ごと手に取らないでください。
ワルディーはうすしおポテチにバニラのっけてんじゃないよ。通か。
「はい。あ~ん。これは高くつくぞ後輩」
ごっそり乗ったバニラをスプーンごと俺の口に突っ込んで手放すと、ナツミはニコリ、笑った。
……まあ、うまいが。
「──ちっ。ほら口を開けないかセクハラ野郎」
会長がムスっとしながら、ライフのカップからすくったバニラを「ん」と俺の口もとに寄せる。
俺はめんどくさげに「どーも」と漏らし、ぱくっと食った。
皆がぎゃーすかぎゃーすかとバニラを貪る中、さりげなくスプーンを俺の口からスッと抜き取った会長はそのまま同じモノで、バニラをちょびちょびすくい食べていた。
やかましい集団の中で一人、ややうつむき加減でスプーンを口に運ぶ彼女の表情はよく解らなかったが、アップにまとめた髪から覗かせるうなじと怜悧に細い眼鏡がやたら色っぽく見えたのは、気のせいだと思いたい。




