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屋上にて


──とりあえず俺はサキイカを口いっぱいに頬張りながらポッケの中を丹念に払い、水道で手を洗って石鹸の香りを纏わせておいた。


 その後、はしゃぐワルディーにまず連れてこられたのは学校の屋上だった。

 彼女のお気に入りスポットらしい。



────へえ。キレイなもんだ。

 

 

 学校の屋上なんて殺風景なモンだと思いきや、結構広めのソコは掃除がしっかり行き届いており、ちょっとした菜園と花壇、屋根付きの休憩スペースなんかも設けられている。


 何人かの学徒がお弁当広げてたり、バトミントンで遊んだり、ベンチに寝っ転がって読書に勤しんでいたりと、穏やかな空間が広がっていた。



「リューシロ! あそこにお座り!」

 

 ワルディーが指差したのは、日の光に照らされた長めのベンチだった。

 


「いいお天気れすねえ」

「ああ。ぽかぽかしてるな」


 二人並んでベンチに腰掛け、パンパンのおやつ袋からお菓子を抜き取るとぽりぽりかりかり。


「これおいしいアル」と一口食べかけのビスケットをニコニコ差し出してくるワルディーを「はしたないぞ!」と軽く叱っておいて、まあ、パクっと食べてみた。


「おいしいねえ」

 バター風味でなかなか美味い。

 ぼんやりとサクサクいわせながら俺が言うと、「おいしいねえ」と楽しそうにワルディーも真似してきた。



 

 風が、心地良かった。


 昔もこんな感じに日向ぼっこしながら、学校の屋上でアイツと弁当食ってたな。



「リュシロ、ほかのところも行きたいえす?」

 空を見上げているとワルディーが訊いてきた。


「また今度でいいよ。今日はここまで。ぽかぽかしてるし」

 俺は微笑んで答え、ワルディーもにこり、頷いた。



「……色んな人がいるな」


 初日から次々と濃いメンツに囲まれたもんだよ。

 俺は遠くを眺めながらふと、こぼした。


「いいところれす。リュシロも、楽し?」


 ワルディーも遠い空を眺め、小さなスティックキャンディーをぺろぺろ。


「ん……どうなのかな。わからん」


 釣られる様に俺もおやつ袋から棒が刺さった赤い色の飴を取り出し、包装ビニールを切る。




「……『理想航路(りそうこうろ)』とやらは順調か? 『世界賊』のワールディア」 



 間近には人の気配は無いので、少し背伸びをしながら俺は訊いた。



 ワルディーはさりげなく辺りをキョロキョロ見回し、そうして俺の事を表情無くじっと見ると、やがて、少し悲哀を帯びた様なかすかな笑みで、ゆっくり首を横に振った。


 横目でそれを見ていた俺は視線を彼方に戻し、「そうか」とだけ低く答え、着色料のきつい飴を前歯で噛むと、揺らして遊んだ。





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