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黒の刺客2



「リュシロ危にゃい!」


 

 お前はこの状況でなんでまたソレ言ったの? 

 

 ワルディーは緊張の面持ちでビスケットをポリポリ味わいながら完全に傍観の構えだ。



「──悪かったよ女子。お詫びにお菓子をくれてやろう」

 とりあえず俺は謝ってみた。そしてパンパンのおやつ袋を黒猫女子に差し出してもみる。

 黒のネコミミフードに付いた部隊章のバッジは空院女学院高等部のモノだ。やっぱ高校生なのかな? 


 黒猫はちょっと怯えながら警戒してたが、俺がやや微笑むとソレに安心したのか、やがて強気な表情を取り戻した。


「──ふ、ふん。それくらいのおやつ、私だって持ってるわ」

 とそっぽを向くと、黒猫は何か背中に背負っていたものを下ろした。


 うお。すげえ何それ。

 彼女がドヤっと俺に差し出したモノは、お菓子で作ったリュックだった。


 肩紐部分が髪の毛に隠れて気付かなかったけど、その紐部分はグミの小袋が連結したやつを使用し、リュックの底部は箱物の菓子で、周囲を大小様々な袋菓子でデコレーションしている。


「わあ~」と外野だったワルディーも寄ってきて、夢のリュックサックに釘付けになった。


「すごいな。自分で作ったのか。そういうの流行ってるのか?」

 俺もこういう創作物は嫌いじゃないので素直に感心してしまった。

「ま、まあね。最初に韓国の女子高生が考えついたらしいわ。神よね」

 黒猫は満更でもない感じでまたそっぽを向く。


「おにゃる部のうちょーさんれす」

 うん。何言ってんのかワカラン。

 黒猫がチッチッと小生意気に人差し指を横に振る。


「ワルディー。お・や・つ・部。──そう、私がおやつ部部長、二年ギガラッコ組の砕沢くだきさわ 八子やつこよ! またの名を、[ねこみみのおやつ]!」


「ギガラッコ!」俺は衝撃に固まった。


「どこに驚いてんのよ! おやつ部が薄まってるじゃない!」

 ヤツコはムキーっと顔を赤くしながらぺしぺし俺をハタく。



「ふ、ふん。まあいいわリューシロー。そのおやつ袋からして、あなたのおやつ愛も中々のモノ。我がおやつ道のライバルとして認めてあげてもいいわ」


 あら何言ってんのこの先輩。腕組みして自分の世界に入っちゃってる。

 かなり今後めんどくさそうなので、俺は否定に走った。


「……あ、先輩これ、違うんです。貰いモノなんです」


「ふん、解ってるじゃない。──おやつ。それは、試行錯誤を重ねてきた偉大なる先人達からの贈り物。……私の目に狂いは無かったようね」


 やべえ、神々しい。言っても無駄なパターンだ。


「受け取りなさい。これは、あなたを真のライバルとして認めた証」

 

 ヤツコが俺の制服のポッケに何かをねじ込んだ。



「──精進なさい」

 

 ヤツコはそう言い残し、去っていった。



 果たして俺は打ち勝てるのか……。ヤツの誤解に……。


 俺はヤツの残した証を握り締め、ゆっくりと抜き出し、その目に刻む。



 

 頼むからムキ出しのサキイカ突っ込まないでくれ……。


 結構多めの証に、俺は絶句した。




「ん、リュシロ、イカくしゃい」


 


 入学初日から「イカ臭い」とか言われる俺は一体……。


 俺に近づきクンクン匂いを嗅いでいるワルディーを、暫くは止められなかった。




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