アフタヌーン・サウンド
「──没収よ」
ライフが教室に入ってくるなり、俺の机の上に置かれた今だパンパンのおやつ袋に興味を示し、ゆっくりと取り上げた。
昼休みも終わり、午後の授業が始まる。
俺がぼんやり、パンパンの袋を手にして教壇に戻るライフを見送っていると、隣の席でワルディーがハッとし、大事そうに抱いていたおやつ袋を着ているコートで覆い隠す。
「バレバレね。とりあえず授業中は後ろの棚に置いておきなさい」
相変わらずのクールさで、ライフはワルディーに促した。
ワルディーは「あい!」と元気に返事してパタパタと小走りでおやつを隠しに行った。
「エビせんは好きよ」
ライフは自席で袋をじーっと見ながら、下の方に埋もれている小袋に入ったエビせんを狙っていた。
やがて彼女は自分の筆入れから何かを取り出す。
「ファンシーな袋に何をする!」
ガッと立ち上がり人差し指を突きつけた俺に、席に戻っていたワルディーとハサミを手にしたライフがビクっとした。
「いや、取りづらかったものだから」
「まず取るんじゃないよこの軍人は。そして今はイビツに伸びまくって最早クリーチャーだが、最初の頃のそいつはカワイらしいヒヨコさんだったので切ったりしないでください」
俺の訴えに、ライフはファンシーな袋のイラストに目をやる。
「確かにかわいらしいわ。──でも、意外ね。乙女なの?」
「乙女ではない。が、そういうのは、嫌いじゃない」
落ち着きを取り戻した俺が席に座りながら穏やかに言うと、ライフはほんの少し笑みを浮かべてハサミを筆入れに戻した。
「変な子」
「へんネコ」
ふん。どうせ変ですよ。俺は腕を組んでソッポを向いた。つっついてくんなワルディー。
「あきらめるわ。──ただこのエビせんは放課後までに提出する様に」
「宿題か」
やれやれと黒板に向かい立つライフに素早くツッコんでおいた。
教科はなんとなく理科となり、ライフが黒板に太陽の光と影についての説明図をチョークで書き込む。
影を作っているのはネコさんであり、ライフはちょっと首を傾げるとやはりネコミミを修整。
ワルディーはノートに一生懸命「た・い・よ・う・は」とカキカキ。
俺は頬杖ついて物理の問題集に加速度やらの数字をカキカキ。
より気だるい、午後の授業。
俺は特に意識せず、ころころとページの上に鉛筆を転がしている。──HBの文字。
ちゅんちゅん。
鳥のチョット大きめの声に、ワルディーが猫みたいに窓の外へ反応した────
次の瞬間だった。
────来た。
俺はやる気の無い目を見開いた。…………総数、約二百。
ワルディーが立ち上がった。
〈────緊急放送。これは、演習ではありません〉
校内スピーカーが震える。
そして同時に、世界各地の空をゆっくりと塗り潰していくかの様に、その何かの終わりを告げるみたいな恐ろしいサイレンが鳴り響き始めた。
ライフが、静かにチョークを置いた。
「──お出まし、ね」




