絵師
「……カタリさんは絵を描くのが得意なんですか?」
シズカが優しく訊いてきた。
「え。──あ、うん。得意っていうか、好き……かな」
補足ステータスの事だろう。
シズカが話を変えてきたので、俺はつい、また彼女と視線を合わせてしまった。
「リューシロ、ずこーの時ワルディーの絵かいてくれた! すごいジョーズれした!」
ワルディーが身体を揺らしながらニコニコ言う。お気に召していただけましたか。
「芸術家肌か。やるなカタリ」
サリオがわき腹をつんつんしてくる。
「まずいな。ちょっと非力で陰のある文化系男子の後輩を守るとか、お姉さん萌えるんだが」
ナツミの目が光った。
「ん。ニーハイを守るとか、ワルディーもえるんだが」
どこの絶対領域マニアだワルディー。
「ワルディーだけ、ずるいです。わ、わたくしも描いていただきます」
キラーン、とシズカの目にも変な光が。
「な、なら、私も……。こう、ちょっと、か、かわいい感じで……修整して……」
サリオが何か言い出してますが。
もじもじと顔を背けるサリオに、姫のお叱りの言葉が掛かる。
「沙理緒。現実から逃げてはなりません。あなたの身長は例え創作の中でも決して変わる事はないのです。それ即ち、真理」
「そういう静様だってどうせ身長を修整させて、その上普段集めている割に着ることをためらっているフリフリのかわいいお洋服を、せめて絵の中の自分に着させてあげるつもりでしょう」
「はうう! た、助けてワルディー……心が壊れそうなのです……」
ワルディーはあわてて、とりあえず甘納豆を一粒、苦痛に伏せる静の口へと運んだ。
「──ぷふっ」
ナツミが一連のやりとりに笑いを吹き出した。
俺は彼女達を見守るので精一杯だ。
「ん──まあ、そういうことだよ語君。対等な関係でいこうじゃないか。姫と沙理緒は悲しい欲望の為、私は萌えの為、君を守る。そんな感じで補い合おう」
「まず『悲しい』とか言わないで下さい」サリオが衝撃に固まった。
「先輩もなかなかコジらせております。停学モノです」静はもぐもぐ豆を味わう。
終わる命を沢山目にしてきた少女達。そんな彼女達だからこそ伝わる言葉になるんだろう。
大人──かな。
あるモノを乗り越えてきた、そこで育まれていった心。
繋がる事で生まれるナニかを、この残酷な世界で守っていく子供達。
大人とか子供とかじゃないな。
人間として在るべき事を、こんな時代だからこそ、ちゃんと知っていったんだろう。
イカれた戦争だけど、そんな救いもあった。
ナツミの言葉に目を閉じていた俺は、やがて微笑んで左右を見回した。
「──俺でよければ、描くよ。その時はまた声を掛けてくれ」
面倒……でもない、か。
シズカとサリオは俺の目を見て、そして、いい笑顔をくれた。
そんな風な空気をちょっと誤魔化す様に、俺は甘納豆に手を伸ばす。
一粒口に放り込んで「こら旨い」とつぶやくと、ナツミが「そやろ」とニコリ、答えてくれた。




