↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家の前で酔い潰れてたダウナーやさぐれメイドを助けたらなぜか同棲が始まった  作者: 雨谷夏木
三章 酔メイドと僕の変化

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/114

お前の最悪は最高、だろ?

 なぜか二人とも放心したような表情で、ベランダで星空を眺めていた。


 真っ黒な紙に針で穴を空けたみたいな星が浮かんだ、東京の空。

 それぞれの星の明かりが強いのか、夜だというのにかなり明るく見える。

 こういうの、星月夜(ほしづきよ)というのだっただろうか。


 星の光に見守られながら、僕は隣にいる榊(さかき)さんの綺麗な横顔に向かって話しかける。


「僕のどういうところが好きなんですか?」

「──ゴホっ!」


 缶チューハイを片手に持った榊(さかき)さんが吹き出してしまった。下に、人がいないことを祈る。


「お、おま……。急だな。告白も急だったし」

 それはそう。


「お前の好きなところ、か……」

 榊さんは、塀(へい)で頬杖を突きアンニュイな表情を浮かべる。


「まあ、ツッコミが速いところかな」

「まあ、ツッコミが速いところ、ですか?」

「おん」


 榊さんは、残りの缶チューハイを一気にあおった。


「あたしと公太郎が初めて会ったとき、酒をねだったあたしにツッコんでくれただろ? あれ、速すぎて笑っちゃったんだよな」

「そ、そんな理由で、ですか?」

「まー、それだけではないけど。きっかけは、それ。第一印象は最高だった」

「僕の榊さんへの第一印象は最悪でしたけどね」

「お前の最悪は最高、だろ?」

「ま、まあ……」


 アパート前で酔いつぶれているメイドさんなんて、最悪で最高に決まってるじゃないか。


「……お前はあたしのどーいうとこが好きなの」


 星空を仰ぎながら、ぶっきらぼうにそう言う榊さん。

 彼女にしては珍しい口調。照れ隠しだろうか。


「内面と外見ですかね」

「全部じゃねぇか」

 シンプルに突っ込まれてしまった。


「なんか、嫌いなとことかないわけ?」

「ないです。他の人からしたらマイナスだと思う部分も、僕にとっちゃ全部プラスです」

「ベタ惚れ乙」


 それから、静かでゆったりとした時間が流れた。


 星の光で照らされた藍色の雲が風に流されていく様子がよく見える。


 榊さんは空になった缶チューハイを片手に、僕のことをじっと見つめてくる。

 夜の下に浮かぶ彼女の綺麗な顔の輪郭を目でなぞりながら、僕はそっと榊さんに近づく。



 そして、今度は僕から榊さんにキスをした。



 煙草やら、お酒やら。

 とっても榊さんらしい味がした。気がする。


 僕の不意打ちにやられたのか、榊さんの顔は一瞬で紅(くれない)が咲いてしまう。


「おまっ……! やるようになったじゃねぇか」

「ぼ、僕だってたまには……!」

「おねショタの攻め逆転は賛否わかれるぞ?」

「僕らのどこがおねショタなんですか!?」

「概念的おねショタ」

 こんなときまで、なんで僕らはいつもの会話をしてるんだよ。


「そんなことは今はどうでもいいんですっ! それより、榊さん!」

「は、はい」

 真剣な僕の顔を見て、榊さんが背筋を伸ばして敬語になってしまった。


「……こっ、告白の返事、聞かせてもらってもいいでしょうか……」

「……おっ、ん。おっ? ん、お、おう……?」


 榊さんはどもりながらも、恥ずかしそうに口端を緩める。


「あー、えっと」


 そして横目でこちらを見て、微かにはにかんでみせるのだった。


「よっ、よろしくお願いします……?」

「──榊さんッ!」

「どわっっ!?」


 星月夜に見守られながら。

 僕は、榊さんにその場で抱き着いた。


 劇的なイベントを経たわけでも。

 大喧嘩を乗り越えたわけでも。


 なにも特別なことのない、いたって普通の日。

 しいて言えば、秋葉中を二人で一緒に走り回ったくらいか。


 そんな、なんでもない日。

 なんでもない日に突発的に告白をしてしまい、それを受け入れられてしまうところが。

 なんとも、僕ららしいと思った。


 ……こうして、僕と榊さんは恋人同士になったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。