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からふるシーカーズ  作者: 白月らび
ランページドリーマー

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438/440

広い空で乱戦します

 帝王は困っていた。


「目覚めなさい、我が娘ニオよ」

「妻に内緒で勝手に子を増やさないでいただきたいのですが?」


 ニオが気絶したままで、声をかけても目が覚めず、触れる事が出来ないせいで抱いてベッドに移動させる事も出来ない。誰も触れられないとはいえ幼い子を廊下に放置など出来る筈もなく、頑張って声をかけていた。

 王妃は王妃で、イシュママリエを裸の兵士から引きはがす事に成功していた。娘の名誉の為に、遠くから魔法を使って転がしたのだ。

 メイドの1人が、残念そうに呟く。


「結局、伝説の剣は刺さっていたのでしょうか……」

「残念そうに言うんじゃありません!」


 仰向けになって気絶していた兵士には、宰相がすぐに自分の上着をかけておいた。


「私の人生で、これ程までに人を哀れんだのは初めてかもしれません……」

「だろうな」


 帝王も同情している。兵士にとっては生き恥もいいところである。

 そんな気まずい大人達に囲まれながらも、ニオはうなされていた。ドルナは夢そのものなので、創造神であるドルネフィラーすら、ドルナが夢を見るとは思っていない。気絶する夢を見ても、そこまで……の筈だった。同じドルナのピアーニャにしてみれば、気絶する(ねる)事すらもおかしいのだが。

 ニオが元々常識から外れているのか、それともアリエッタやエルツァーレマイアがおかしな悪影響を与えているのか、理由は誰にもわからない。

 ただ現実として、ドルナ・ニオは悪夢にうなされていた。


「う~ん……う~ん……」(やめて、こないで、たすけてテリアおねえちゃん……)


 それはニオにとって最恐の悪夢だった。

 地面からアリエッタが大量に生えてきて、自分の名前を呼びながら、ひたすら追いかけてくるのである。しかも数がだんだん増えていく。……ニオに限らず普通に悪夢かもしれない……いや、ミューゼとパフィにとってはそうでもないかもしれない。


「う……あ……んっ……」(いやぁ、囲まれた。いやあああああ!)


 そんな苦しんでいるニオを、大人達は見ている事しか出来なかった。


「今の声と美貌のせいで変な気持ちが芽生えそうですね」

「やめんかっ。犠牲者と言っていただろう。……戦争のな。これ以上不幸を増やすでない」

「……私達は正しいのでしょうか」

『………………』


 帝王達はすっかり騙され、迷いが生じている様子。




「褒美ならば知りたい事がある」

「なんだ?」

「貴様らを消す方法」

「ほーう?」


 空中でピアーニャと対峙するセイングラートは、『犠牲者』という事をしっかり疑っていた。

 エレートトレアはしっかり騙されているが。


「セイン! そんな情報で何をするの! まさかルルアとココネの魂を……」

「いや姉上、そんな話を真に受けないでください」

(オウジはしっかりしている。ロンデルとおなじカンジがするな。ほかのリージョンのコトをしらないからこそ、なにがあってもおかしくない、ってかんがえかな? そのかんがえは、ただしい)


 常識から疑ってかかる様子のセイングラートに、ピアーニャは感心していた。そして気に入ったようだ。


「セインといったな。わちらをけすホウホウなら、エインデルにあるぞ」

「教えちゃうの!?」

「褒美って言っただろ! 何で今教えるんだ!」


 素直に教えたら、知りたがっていた当人から怒られた。しかしピアーニャは気にせず続ける。


「ディランにかてたら、エインデルにいくのをジャマしないでやろう」

「……バカにしないでもらおうか」

(あ~あ)

(またはじまった)


 ディランとボルクスは感づいていた。負けたら物理的に国外へ出る事を邪魔する気だというのと、勝っても情報収集は認めるが消されるのは全力で抵抗する気だという事を。

 そもそもアリエッタによって可愛くされた杖を手に入れた所で、ピアーニャに攻撃を当てられなければ意味が無く、杖が破壊されてしまえばどうしようもないのだ。それはネフテリアやディランですらかなり難しい。

 ドルナ・ピアーニャは、自分を倒せるまでセイングラート達を鍛える気のようだ。


(何十年かかるかなぁ……)

「ま、かてたらのハナシだがな」


 ピアーニャはニヤリと笑い、自分の傍に戻していた色付きの『雲塊(シルキークレイ)』を、無数の棘に変形させ、セイングラート達4人全員に攻撃をしかけた。


「おっと」

「くっ」

『【火の弾(ファイアバレット)】!』


 ボルクスとエレートトレアは軽々と避け、ディランとセイングラートは回避しながらお互いを攻撃した。


「おお、馴染むの早いな」

「つまり、こういう事なのだろう?」

「やはりユウシュウだな。これはケットウではないから、あらゆるシュダンがセイコウホウだ」

「ふん」


 完全に理解したという風のセイングラートが、今度は下に降下しながらボルクスに向かって魔法を放つ。というのも、ボルクスがまだ啞然としているエレートトレアに魔法を撃とうとしていたからだ。


「おっと」

「姉上、これは生き残りをかけた戦いです。動きを止めたら負けますよ」

「でも──」


 エレートトレアが何かを言おうとしたその時、エレートトレアの横に伸びていたピアーニャの雲が変形。棘が2人に向かって伸びてきた。


「ちっ」

 どんっ

「わぁっ!」


 セイングラートがエレートトレアを突き飛ばし、その反動を使ってセイングラートも後ろに跳んだ。その場所を棘が通過する。

 ここでようやくエレートトレアが今の状況を受け入れた。


「【風の刃(ウィンドカッター)】!」


 しかし攻撃した対象はピアーニャ。当然すり抜ける。


「姉上! ピアーニャにはおそらく何も効きません! 攻撃するなら他の2人を!」

「う、ええ!」

(ショウグンというわりには、ハンダンはチメイテキだな。なるほど)


 既にピアーニャは2人を観察する為に動いている。それぞれの長所、短所、癖などを引き出していた。

 もちろんディランとボルクスの事も忘れてはいない。


「オマエらはボコす」

「先生! 扱いに差があると思います!」

「そーだそーだ!」


 抗議した2人に向かって、無数の雲の棘が振り注ぐ。


 ドドドド

『ギャー!』

(なんて容赦無い……)


 しかしこれで全員が現状を把握したので、各々気合いを入れ直した。

 横槍を避けながら相手を倒す。全方位に気を配らなければ負ける。

 白い球体がピアーニャの方向に飛んでいくのを見たディランとセイングラートは、互いに向かって前に跳んだ。それを見て、ボルクスは後ろに、エレートトレアは横に跳ぶ。


「【魔破連弾(ラピッドブラスト)】!」

「【熱線(ヒートレイザー)】!」


 ディランの魔力弾をセイングラートの炎が消し飛ばす。

 その衝突した場所に、ボルクスの魔法が発現する。


「【光乱霧(リフリートミスト)】!」


 光る霧が広がり、2人の姿を覆い隠した。2人の魔法が止まる。


「【風渦砲(スパイラルバースト)】!」


 ディランへの補助をすると読んでいたエレートトレアが、霧を吹き飛ばす為に、渦巻状の風を放った。

 しかし、同時にピアーニャも霧を吹き飛ばすために、『雲塊(シルキークレイ)』を巨大かつ平らにし、思いっきり仰いだ。


 ぶおぉっ

『っあああ!』


 エレートトレアの風と混ざり合い、予期せぬ様々な方向へと強風が吹き荒れた。結果、霧を吹き飛ばすだけでなく、近くにいた4人はバラバラの方向へ飛ばされてしまった。ついでに下にある城の屋根が、少し吹き飛んだりもした。


「わはははは! メチャクチャになった!」


 魔法をかき乱したのが面白かったのか、ピアーニャは上空で笑い転げていた。

 セイングラートがイラッとしていたが、上からの攻撃が止まっているのは好都合。冷静に【空跳躍(スカイリープ)】をかけ直し、空中に着地。ディランを探す。

 見つけたのは、空中で体勢を立て直したようで顔を押さえてうつむいているボルクス。


「この際どっちでもいいから落とす!【火の弾(ファイアバレット)】!」


 人を戦闘不能にするには、威力よりも速攻と弾数。倒せそうな者から攻め、火傷を負わせるだけでも戦力は大きく削げる。戦争前提で鍛えられたセイングラートにとって、基本戦術の1つである。

 しかしそれは一般兵相手の話。


「へっ、【轟圧流(ハイドロバスター)】」

 ぶごうっ

 ドンッ


 わざと狙われやすいように止まっていたボルクスが、【火の弾(ファイアバレット)】が飛んできた方向に大量の水を撃ち出した。

 同時に、ボルクスがいた位置を、『雲塊(シルキークレイ)』が貫いた。


「なっ、うわあっ!」


 ボルクスが別の方向からやられ、驚いたセイングラートはなんとか水流を躱す。

 しかし、上から攻撃したピアーニャは悔しそうにしている。


「ちっ、アイツはこーゆーのがうまいからなぁ」


 ボルクスは先ほどまでいた場所から後方に離れた場所で、体制を立て直していた。

 ボルクスが放った魔法は、人など簡単に押し流す程の水流をぶつける魔法で、威力はあるが大量の魔力が必要になり、しかも撃つ時の反動がすさまじく使用者が後ろに飛ばされてしまうのだ。今回はその反動を、来ると予測していたピアーニャの攻撃を避ける為に使ったのである。


「こっちの攻撃タイミングに合わせて横から攻撃を仕掛けてくる。狩りのテクニックっすからねぇ」


 そう呟きながら、空中を駆けるボルクス。動きを止めていては、ピアーニャの恰好の餌食なのだ。

 様子を下から見ていたエレートトレアも、ピアーニャの攻撃を避けながらセイングラートとの合流を目指す。が、斜め上から気配を感じた。


「ん? え゛?」


 その方向を見ると、なんとディランが物凄いスピードで飛んできた。


「【岩石盾(ストーンガード)】」


 そのまま球状の石の塊で自分を覆い隠した。本来防御に使われる魔法だったが、飛びながら使う事で自分を砲弾にしてしまったのだ。

 意表を突かれたエレートトレアが、慌てて対抗する。


「わ、【旋風撃(ワールウィンド)】ぉぉぉっ!?」


 自分中心に巻き起こした風のお陰で、石の塊の軌道はギリギリそらす事に成功したが、またしても風を乱され、自分が飛ばされてしまうのだった。


「なんでこんなのばっかりいぃぃ!」


 ディランはすぐに魔法を解除し、不思議そうに、そして気の毒そうにエレートトレアを見ていた。

5月も終わり、そろそろ潤いの季節。除湿剤足りるだろうか。

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