4 ナトジャの村と黒い石
アレクシアさんの案内で俺は、ナトジャの村にある石の鑑定所へと向かった。
平屋のけっこう大きな建物で、入り口の上には大きな看板がかかっている。
「スターダスト鑑定協会?」
看板の文字を読みながら俺は首を傾げた。
スターダストって、えーと、流れ星って意味だっけ。
建物の外には老若男女さまざまな人が並んでる。
そこにはさっき川で見かけた子供たちの姿もあって、目を輝かせて鑑定の順番を待っていた。
「スターダスト協会は、西側諸国で一番大きい鉱石協会なのよ。どの村にも町にも協会運営の鑑定のお店があって、鉱石の取引をしているのよ」
そう、アレクシアさんが教えてくれる。
そんな協会があるんだ。この世界、すげー鉱石が生活に根付いてるんだなぁ。俺の知らない世界過ぎる。
俺たちも、鑑定の列に並んで順番を待つ。
出てくる人はいろんな表情をしてる。嬉しそうな人、微妙な顔の人。超笑顔の人。悲しい人はいないから、皆納得はしてるのかな。
あー、なんかドキドキしてきた。
俺が拾った石、どんな価値、あるんだろう。
「次の人、どうぞー」
って、カウンターのおじさんが俺たちを呼ぶ。
「楽しみねー」
にこにこと笑うアレクシアさんと一緒に俺たちはカウンターに近づいて、拾った石の鑑定を頼んだ。
カウンターには三人のおじさんが並んでいて、それぞれ持ち込まれた鉱石を鑑定している。
他にも石の販売もしているみたいで、店内で商品をみている客の姿もあった。
俺が出した水晶と黒い石。おじさんはそれぞれを虫眼鏡みたいなのを使って鑑定していく。
おじさんが黒い石を虫眼鏡でのぞきこんだときだった。
なんか首を傾げて怪訝な顔をする。
そして裸眼で黒い石を眉間にしわを寄せて見つめたあと、ゆっくりと顔を上げて俺の方にその黒い石を差し出した。
「これは価値がねえな」
「え、まじですか?」
俺はおじさんからその黒い石を受け取り、それを見つめる。
川の中で確かに光って見えたからなんか価値ありそうなのに。
俺はその黒い石と水晶を見比べる。
水晶は価格までなんとなくわかる。でも黒い石はどれくらいの価値があるのか全然分かんなかった。
なんなんだろう、これ。
「とりあえずこっちの石の金額はこれだ」
って言って、金額をかいた領収証を見せてくれる。
千デューカって書いてあるけどけっこう価値があったって事かな。
「すごいじゃない、ユーキ。これ、しばらく困らないわよ」
そうアレクシアさんが驚いたような声を上げる。
「どの石も価値が高いやつばかりだったけど、あんたすごいな。こんな石見つけてくるなんて」
言いながら、鑑定のおじさんは銀貨を十枚、出してきて領収書を俺に渡す。
「はい、これにサインして」
「あ、はい」
サインって……俺は一瞬悩んで、ユーキ=ナナセって名前を書く。二枚サインして、その内の一枚とお金を受け取って、俺たちは鑑定所を後にした。
銀貨十枚が千デューカなのか。なんとなくだけど、けっこうな金額っぽく感じる。
俺はそのお金をバッグにしまって、突き返されてしまった黒い石を見つめた。
「それだけあれば装備も買えるし、宿にもしばらく泊まれるわよ」
そんなアレクシアさんの話を右から左に聞きつつ、俺は黒い石をひっくり返したりして見る。
光を吸いこむほど黒い石。いったい何なんだろう、これ。変なの。本当に価値、無いのかなぁ。なんかありそうに見えるのに。
不思議に思ってその石を見つめていた時だった。
黒い石が光ったかと思うと、声が聞こえてきた。
『てめー、何俺を売ろうとしてんだよ!』
「うわぁ!」
俺は驚いて、思わず石を落っことす。
い、い、い、石が喋った?
俺は地面に落っことしてしまった石を見つめる。すると黒い石はまた光って言った。
『おい、いてえじゃねえか! いきなり落っことすとか酷くない?』
なんか怒ってるみたいだ。
よく見ると光がなんか赤っぽい。
「ご、ごめん」
思わず謝りつつ俺はその黒い石を拾う。
「ユーキ、どうしたの? その石、何かあるの?」
アレクシアさんが不思議そうな声で言い、俺を怪訝な顔で見つめてくる。
ちょっと待てよ。
「え、アレクシアさん、声聞こえないの?」
石を握って俺が言うと、彼女は変な物を見る目で俺を見つめた。
「声って……何のこと?」
「え、だって、石が喋って……」
言いながら俺は黒い石を見つめる。
『はっはっは! 俺の声はなぁ、持ち主であるお前にしか聞こえないんだよ!』
そう、なんか嬉しそうに石が言った。
何なんだこの石。なに、この世界、石がしゃべるのかよ?
「なんか気持ち悪」
俺は顔をしかめて呟いて、辺りを見回す。これ、どこかに捨てられねえかな。
そのとき石が、慌てたように言った。
『まてよ! 俺を持ってるといいことあるぜ。だって俺、何でも願いをかなえる石だからな。まあ代償は貰うけど』
「願いを……かなえる?」
俺は黒い石を見つめる。
顔は見えないけど、なんか石がにやっと笑ったような気がした。




