3 川の中
足がいてえ。
しばらく歩くと町と、その手前に川が見えてきた。
「わー、これきれー!」
っていう子供の声が聞こえてくる。木でできた橋の上から下を覗くと、川に入って子供たちが遊んでいるみたいだった。
いや、遊んでるわけじゃねえな、アレ。皆何かを探しているみたいで、川に手を突っ込んでいる。
小さな女の子がキラキラ光る石を太陽にかざしている。
「わぁ、いいなぁ」
と、その女の子に向かって言う男の子。
何これ?
大人も何かを探してるみたいだし。
「アレクシアさん、これって」
「さっき言った、鉱石探しよ。皆楽しそー」
と、アレクシアさんが身を乗り出す勢いで川を見下ろす。
確かに鉱石がどうのって言ってたけど。マジで鉱石拾いしてるんだ。鉱石拾いが常識ってどういうこと?
あれ、網かな。網で砂をすくって水の上でそれをゆらしてる人とかいる。
「鉱石ってそんなにほいほい落ちてるの?」
「落ちてるわよ?」
当たり前でしょ? という声でアレクシアさんは言って、俺の方を見る。
まじかよ、初めて聞いたぞそんなの。
驚く俺をアレクシアさんは不思議なものを見る目で見てる。
「ここ、ストーニア大陸では当たり前のことよ? ユーキ、貴方変わってるわね」
と言って、彼女は笑う。
いやうん、変わっているだろうな。だって、俺この世界のこと何にも知らねえもん。
苦笑して、俺は川を見下ろす。
あれ、なんか川のあちこちがなんか光って見えるけど……何でだ?
俺は目を擦ってもう一度川を見る。
やっぱり光ってるところがある。
何だあれ。
「ねえアレクシアさん。俺も石、探ししてみていい?」
「えぇ、いいわよ。お小遣い稼ぎになるし」
そう言ってくれたので、俺はアレクシアさんと一緒に橋の脇から川へとおりた。
川は石がすごく多くてすげーくねってる。流れは早くない。皆裸足で入ってるけど大丈夫なんかな……長靴とか……ないのか。
鞄とかの荷物、皆川原に置き去りにしてるし。治安いいのかな。
そんな俺の懸念をよそに、アレクシアさんはブーツを脱いで裸足になる。
ブーツから現れたアレクシアさんの足、めちゃくちゃ白い。
彼女はさっとブーツを脱いで荷物を下ろすと、俺の方を見て手を差し出した。
「ほら、ユーキも脱いで!」
そう言われて俺は、ショルダーバッグを外してわたわたとブーツを脱いだ。
石が転がっている河原は正直足の裏が痛い。
「さあ入りましょう」
と言い、アレクシアが水に入っていく。
俺もその後を追って川の中に入った。水の中けっこう冷たい。
「お水気持ちいいー」
ってアレクシアが声を上げている。
俺は辺りを見回して、さっき橋の上から見かけた光の元を探した。
やっぱり水の中、光って見える。でも他の人は誰も気が付いていないみたいだ。
アレクシアのそばで光ってる物があるけど、そっちに目を向けてないし。
俺は不思議に思いつつ、その光のそばに行って水の中に手を突っ込んだ。
そしてその光を掴んで水から引き上げる。
「あ……」
それは白くて透明な石だった。これ水晶だ、って直感でわかる。
しかもわりと高そうなんだけど?
変だなって思いながら俺はその石を握りしめて他の光を探した。
結果、俺は十個の石を数分で見つけてしまった。
小さいものや大きいものまである。何だよこれ。なんで俺、簡単に水晶、見つけてるんだ?
自分に何が起きてるのかわかんなくって、俺はみつけた石を見つめた。
するとそこにアレクシアの声が響いた。
「ユーキすごいじゃない! 初めてでこんなに見つけるなんて大したものね」
「え? あぁ……うん」
俺は苦笑してアレクシアを見る。
彼女はまじですごい、って顔して俺を見ている。
「それ、ナトジャの村に行ったら引き取ってもらえるわよ」
って教えてくれる。それってこれ、お金になるって事か。なんかちょっと嬉しいかも。
俺はみつけた水晶を握りしめて辺りを見回す。
他にも光がちらほら見えるけど……あれ? なんか黒っぽい光が見える。
今までみつけた水晶の光とは全然違う光を見つけて俺は、その光に向かって歩いて行く。
川が緩やかに曲がっている所。川底で確かに黒く光っている物がある。
「なんだ……これ?」
そう呟いて俺は川の中からその石を拾い上げた。
それは黒くて丸い石だった。
加工されたみたいに丸い。いや、楕円ていうのかな。こんなの自然にできるとは思えねえけど。なんでこんなのがこんなところにあるんだろう?
「あれ……なんか変だ」
呟いて俺は今まで拾った水晶とその石を見比べる。
水晶はなんとなくいくらくらいって言うのがわかるのに、この石は何にもわかんない。なんだよこれ。なんか価値はありそうなのに。でもどんな価値があるのか全然分からなかった。
俺は不思議に思いつつ、その石も水晶と一緒に握りしめて川原から上がった。
俺より先に川から上がったアレクシアはタオルで足を拭いている。
あ、タオル。俺は下げていたバッグを開ける。
すると中には何にも入っていなかった。
まじかよ……
呆然としていると、アレクシアが声をかけてくる。
「タオルないの? これ使って」
って言って、彼女は自分のタオルを俺に貸してくれた。
「あぁ、ありがとう」
俺は彼女からタオルを受け取って、石を拭きバッグの中に放り込む。
そしてそのタオルで足を拭いた。
なんか申し訳ないけど、あとでこの石を売って新しいの、アレクシスの買おう。
「ありがとう、アレクシアさん」
「えぇ、石見つかってよかったわねー」
って言って嬉しそうに笑ってる。
アレクシアさん、めちゃくちゃいい人じゃね?
ちょっと心配になるレベルで。
身支度を整えて、俺たちはナトジャの村へと急いだ。




