33 兆し
ゲルマーニャの王宮に来て三ヶ月が過ぎた。
離宮の中庭で俺は、王宮の兵士と訓練していた。
「やー!」
声を上げて木の剣を振るう。
その攻撃は避けられてしまったけれど、俺は諦めず、相手を見る。
この三カ月で俺のなかで変化が起きていた。
相手の隙が、なんとなくだけどわかるようになってきた。
今俺が対峙している兵士を見ると、ガラ空きになっている、て感じるところがある。
だからそこに向かって剣振ればあたる、はずなんだけど……
技術は追いつかなくって、狙ったのがバレてしまい避けられてしまう。
それでも俺は、手応えを感じていた。
「この目のお陰なのか……それとも強くなったんかな」
呟いて俺は、次の対戦相手を見る。
相手はヒースさんだ。
あいかわらずスーツ姿に剣をだらん、とぶら下げてこちらを見ている。
兵士相手なら五分五分の試合ができるようになった。
でも。ヒースさんには全然勝てない。
彼には隙がない。
ただ立っているだけなのに、全然隙がないんだ。
この三カ月で彼と戦って、手応えを感じたことがない。
ヒースさんと対戦して今日もボコボコにされ、俺は地面に倒れて空を見る。
「あー……」
三カ月頑張っても、俺はヒースさんには勝てない。
俺は自分の手のひらを見つめる。
まめができて潰れて、固くなった手。
今まで戦うなんてことなかったからな。
最初は身体が痛くて仕方なかったけど、今じゃだいぶ慣れた。
そんな俺を、ヒースさんが横に立って見下ろしてくる。
「そろそろ行くんだろ」
「あー、はい。そうですね。もう三カ月だし。いつまでもここにいるわけにはいかないから」
言いながら俺は上半身を起こして、ヒースさんを見上げた。
「ここにいて、色んな石とか宝物見せてもらって、自分の能力のこともわかってきたので。光り方とか、その価値の違いとかなんとなくわかるようになりました」
ここに来て三カ月の間、剣の稽古だけをしてた訳じゃない。
俺は俺のこの鑑定の目の能力がどの程度のものかわかんないから、ブランシュ様が色んな宝物を見せてくれた。
価値があるものも無いものも。
偽物も本物も。
目を養う、ていうのかな。
今までは光りの強さでしか見分けられなかったけど、光り方や光の色の違い。隠されていても、どの程度の距離から見えるのか、ていうのもわかった。
俺の能力は建物の中に隠されていても、何となく場所が分かるし、光り方でその価値の違いまで分かるらしい。
だから建物の中に宝物隠されても、俺の目は誤魔化せないってことだ。
問題は、宝物だらけだと見分けがつきにくいことかな。
「あとはそれの能力とかわかると良いんですけどね」
今のところ、手にとってよく見ないとその石とかがもつ能力はわからない。
近くで見なくても能力がわかれば、例のシラーズナイトを探すのが楽になるんだけど。
このままここにいても、俺の能力が伸びそうにないから、そろそろ旅に行こうって話になったんだ。
「三カ月経ったけど、スターダスト協会の動きはどうなんですか?」
「お前がここにいることはバレているからな。見張りがいても追い払っているし、こちらは王宮。下手なことはしてこない。だが、外に出れば話はかわる」
ヒースさんが真面目な顔で語る。
「殺し以外は何でもやる連中だし、石が関わると見境なくなるからな。お前の腕一本切るくらいならやるかもしれない」
「え、嫌です絶対。怖いよそんなの」
言いながら俺はぶるり、と震える。
腕切られたら死なないかな。死ぬと思うんだけど。
考えたらすっげー怖くなってくる。
ヒースさんは肩をすくめて、
「あいつらならやりかねない。とりあえず、お前の顔を知っているのはごく一部だろう。髪の色が違うし、そうそうバレはしないと思うが」
と言い、視線をクロに向ける。
「外でその石と喋らないように気をつけろ。そいつと喋るとさすがに目立つからな」
「う……き、気をつけます」
一番のネックはクロ。
クロに外で話しかけられても無視するようにしないと。
そう固く心に誓ったものの、守れる自信なんてかけら程度しかなかった。




