26 調査
町に着くと、夕焼けが辺りを染め上げていた。
時計を見ると時刻は五時過ぎ。
「もう帰らないと!」
そう声を上げる子供たち。
俺は子供に手を振り、
「今日はありがとう」
と、礼を伝える。
すると子供たちは恥ずかしげに笑い、大きく手を振った。
「またねー!」
「また明日、ばいばーい!」
そう大声でいい、子供たちは連れだって町へと向かっていく。
不思議なもの見られたなぁ。
プラネタリウムみたいですごい綺麗だった。
なんか頭の中ふわふわしている感じがする。
その日は帰って休んで、次の日、石を売りに行ったりクロの事調べに行こうって事になった。
翌朝。
俺はひとり、図書館に来ていた。
焦げ茶色の壁に尖った塔がある、ゴシックな雰囲気の建物だ。
三角の屋根にステンドグラスの窓がある。十字架と天使が描かれているみたいで綺麗だなぁ。
「すげえよなぁ。石造りの建物って」
呟いて俺は中に入る。
目当てはこの魔法の目とクロのことだ。
何かわかるといいけどなぁ。
そう思って俺は中に入った。
図書館の中は思ったよりも声が響いていた。
建物の隅にはカフェがあって、客たちが飲み物を飲みながら本を読んでいる。
借りた本、ここで読めるのか。おしゃれだなぁ。
俺は図書館の中を巡って、それっぽい本を探す。
伝説の石の本、魔法に関する本など。
数冊の本を抱えて、俺はあいている椅子を探して座り、テーブルに本を置く。
俺が今持っている本とは違う種類の石の情報が書いてある。
でもウィッシェヴァイスに関する記述は見つけられなかった。
「クロ、まじで有名なのかよ」
そう呟くと、クロが赤く光って怒りだす。
『俺様はすげーんだぞ!』
「じつは違う名前教えてるんじゃねえだろうな」
するとクロは黙り込む。
いやなんでだよ。
なんか鈍い青に光っているような気がするんだけど?
こいつ俺に一体いくつの嘘をついてるんだろう。
「マジお前何なんだよ。嘘ついてたらゆるさねーぞ」
『嘘なんかついてねえよ! 今はその名前なの! でも昔は……違った、かも……』
そう、消え入るような声で答える。
何だそれ。
俺は小さく息を吐いてクロを見る。
「それじゃあ探しようがねえじゃねえか。お前いったい何なんだよ。俺に何隠してるんだ?」
問い詰めるとクロは黙り込んで鈍い青で光る。
こいつ、都合が悪くなると黙るよな。嘘をつきたくないのかな。
喋らなければ嘘にはならねえし。
とりあえず石の本は面白いから、俺は本を読みすすめた。
伝説の石、まじ色々あるんだな。
いろいろありすぎて伝説って感じしないけど。
貴重な宝石とか、持ち主につぎつぎと不幸をもたらす石とかあってゾクゾクしてくる。
この本には持ち主の名前もあって、同じ名前ばかりが出てくる。
「……シュルゲン=グライナーって、誰だ?」
呟いて俺は首を傾げた。
やたらその人物の名前が出てくる。
コレクターかなんかかな。
不思議に思いながら俺は本を読んだ。
「伝説の石かぁ……どっかにないのかなぁ」
昨日見た、他の石を光らせる石、見らんなかったけどあれもなんかすげー石だったのかも。
そう思うとわくわくしてくる。
俺の呟きを拾ったクロが、赤く光り出す。
『お前、また浮気するつもりなのかよ!』
「またって何だよ。御守りの石買っただけじゃん」
どうやらクロは、他の石に俺が気をひかれるのが嫌みたいだ。
「ってなんでだよ」
思わず突っ込む。
だって石なのに。
石が石に嫉妬してどうするんだろう。
そんな俺のひとりつっこみが不思議だったのか、クロが青っぽく光りながら言う。
『お前なに言ってんだよ?』
俺は首を振って、
「なんでもねえよ」
と答えて、本を閉じた。
次は魔法の目だ。
何かわかるかな。
魔法の手やら魔法の舌やら、どうも胡散臭く感じる話が出てくる。
つくった物、全部に命が吹きこまれてしまう魔法の手、食べただけでレシピがわかる魔法の舌。
すげえな、魔法。
魔法の目についても詳しい記述を見つけた。
相手を魅了する目、石化してしまう目。
「それなんかモンスターでいるよな」
見ただけで石にするって何だっけ。
思い出せない。
ページをめくっていると、俺の持つ鑑定の目に関する記述を見つけた。
「鑑定の目……」
文字を指でなぞり、心臓が跳ね上がるのを感じる。
見たものの価値がわかる目。物の価値だけではなく、相手の能力や弱点などもわかるものがいるという。
その記述を見つけて、全身が総毛立つのを感じる。
「相手の、能力……?」
俺は文献を読み進めていく。
物の価値がわかる、ということは見たものの価値がわかると言う事。すなわち、相手の能力もわかるようになる。
故に、苦手なこと、弱点も見えるようになる、と言われている。
「そういうことか……」
そんなの考えてもみなかった。
物だけじゃなく、人の価値も見えるようになる。人の価値、ってつまりその人が持つ能力、ステータスがわかるって事か。
すげえ。
それなら。
俺は自分の手のひらを見つめて呟く。
「アレクシアさんの役に立てるかも」
そう思ったら、すっげー世界が広がるような気がした。




