25 不思議な洞窟
石拾いの河原から俺たちは森の中に入る。
いや正確には山か。
緩やかな上り坂で、しかも道もないところを子供たちがひょいひょい、と上っていく。
子供すげえ。
いったいどこに連れて行かれるんだろう。
子供たちは、
「秘密の場所なんだー」
「エルフのお姉ちゃんならあれ、知ってるかなー」
なんて言いあっている。
どうやらアレクシアさんに何かを見せたいらしい。
「何なんだろう」
連れて行かれた先、茂みの中に隠れるようにその洞窟はあった。
穴は大人がちょっとかがまないと通れない位の大きさだ。
腰、やりそう。
「ここここ! ここにあるの!」
いったい何があるんだろう。
俺たちは子供たちに連れられて、その中に入った。
暗い。
なのに子供たちはすたすた歩いて行く。
『光りよ』
そう、アレクシアさんが呪文を唱えると、ぽわん、とアレクシアさんの目の前に光の玉が浮かんだ。
「すごぉい。魔法だぁ」
「あかるーい」
そう、声を弾ませる子供たち。
「でもね、この先もね、すごいんだよ」
ドヤ顔をする子供たち。
なんなんだろう。
不思議に思いながら先を進んで行くと、壁がなんか淡く光っているような気がした。
「あれ?」
不思議に思って、俺は石の壁を見る。
確かに、青白く光って見える。
するとアレクシアさんが呟くのが聞こえてきた。
「なんだか不思議な感じがする」
「すごーい、エルフのお姉ちゃんわかる?」
声を弾ませる子供たち。
アレクシアさんが呪文を唱えると、魔法の明かりが消えてその代わりに周りの壁が青白く光っていることに気がついた。
なんだか星みたいに、壁が光っている。
「これ……」
「あのね、ここの石、光るんだよ!」
「ここの奥がすごいの!」
そして子供たちはずんずん、と先を進んで行く。
俺には全然分かんねえけど、魔法の石、なのかな。
この世界にはたくさんの魔法の石がある。光る石の話はいくつかあったような気がするな。
洞窟を進んで行くと、開けた場所に着いた。
辺り一面、上も下も全部、まるで星のように、青白く輝いている。
「すげえ……」
まるでプラネタリウムだ。
そこもかしこも青白く光っている。
でも照明としては暗いかな。
「すごい。全部が光る石なのね」
感心したようなアレクシアさんの声。
「そうなの! でもね、とると光んなくなるから採れないの」
「え、どういうこと?」
採ると光らなくなるって意味わかんねえな。
そんな俺に子供が答えた。
「光る石だし、不思議だから昔採掘したんだって。でも、採掘すると光らなくなるってじいちゃんが言ってた。なんでだろ?」
なるほどそういうことか。
確かに不思議な話だ。
「そうねえ……この石たちからは魔力を感じる。でもすごく弱い。もしかしたら核みたいなのがあって、それに影響されて光っているのかも」
そうアレクシアさんが予想をたてる。
ってことは。
「石自体が光っているわけじゃないって事?」
「うーん、石が光っているのは間違えないけど、他の強い魔力を持った石があってその石の影響を受けてここの石たちが光っているんじゃないかなって。だから魔力はすごく弱いし、採掘すると光らなくなるのはその核になる石の影響がなくなるからじゃないかなって」
「あーなるほど」
なんとなく理解できたかも。
電池みたいな石があってそれと繋がってるからこの石たちは光るけど、電池と切り離されたら光らなくなるみたいな、そういうことかな。
そう、俺はひとり納得する。
アレクシアさんは辺りを見回して驚いたような声で言った。
「こういうの初めて見た。光る石はたくさんあるし、そこまで珍しいものじゃないけれど。他の石に影響させてこんなに広範囲の壁を光らせるなんてすごい魔力じゃないかしら」
「ってことは、ここのどこか掘ればその核の石があるかもしれないって事?」
俺の言葉にアレクシアさんは頷く。
「たぶん」
そして辺りを見回して肩をすくめた。
「でも、このままがいいわよ。本当にその核の石があるのかわからないけれど、こんなに綺麗だし、それに、涼しい。気温が高くならないんじゃないかしらここ」
「そうなんだよ! だから暑い日とか寒い日はね、ここに来たりするんだ」
そう、子供が教えてくれる。
「じゃあ下手に掘ったりしない方がよさそうだね」
「そうね。きれいなもの見せてくれてありがとう」
そう子供たちにアレクシアさんがお礼を言うと、子供たちは声を上げた。
「ねえ驚いた?」
「珍しい、これ」
「うん、珍しいし驚いたわ」
「確かにびっくりしたよ」
子供の声に俺たちが答えると、満足そうに子供たちは顔を見合わせて頷き合った。
「ずっとこれ、何で光ってるのかわかんなかったんだよねー」
「掘っちゃだめなんだね」
なんて言いあっている。
そうか、子供たちはここの壁が何で光るのか、採掘するとなんで光らなくなるのか知りたかったのか。
真相はわかんねえけど、アレクシアさんの予想、当たってそうだし説得力がある。
ここ、いわゆる秘密基地なんだろうな。
おじいさんがどうのと言っていたから、きっと代々受け継がれてきた秘密基地。
そう思うとここがすげえ特別な場所に思えてきた。
洞窟を出て背伸びをすると、日が暮れ始めていた。
やば、早く帰らないと暗くなる。あの山道、暗い中歩きたくねえぞ。
「早く帰らないと怒られる!」
俺が焦るのとは別の意味で子供たちは慌てだし、急いで山道を下り町へと向かった。




