18 珍しい石
俺たちは一路、王都を目指すことにした。
馬車を使ってもブレーヌから王都までは五日位かかるらしい。
俺の話、広まったりしてねえかな。そればかりが心配だから、俺は髪を帽子で隠すことにした。
カツラとかあればいいんだけど、そういうの、売ってないんだよなぁ。
馬車で移動、っていうのは正直慣れていなくて尻が痛い。
がたがたと揺れるし、音も結構響くから会話なんて全然できなかった。
馬車の席は幌の中、向かい合わせになっていて十人くらいが大きな荷物を抱えて静かに座っている。
四角い窓みたいなのがあって外がよく見える。
皆荷物も大きいし、旅人なのかな。それとも商人なのかな。
見た目じゃあ全然分かんねえ。
見た感じ、皆金髪とか明るい髪色だ。俺みたいな黒髪、まじでいないんだな。
でもここ、大陸だってきいたから、他の国に行けば俺でも珍しくなくなるかなぁ。
そう思って俺はアレクシアさんに尋ねた。
「ねえアレクシアさん、王都のあとどこいくの?」
「隣の国のゲルマーニャに行きたいの。西の国周ったら、次は東かしらね。ただ、西と東を分断する大きな山脈があるから、あちらに行くには船使うことになるかなー」
「そうなんだ」
船の旅かぁ。それはちょっと憧れるかも。
俺は外を見つめてまだ見ぬ世界を想像して胸を躍らせた。
ブレーヌを出て三日目。
山の中の町、グランデに着く。
ブレーヌほどじゃないけれど、けっこう大きな町だった。
夕暮れの町。
オレンジ色の屋根が、空と同じ色に見えて一体化しているようだった。
俺たちは馬車を下りて宿を探す。
石手帳を見ると、この町にある特産の石にはちょっと珍しい石が含まれているらしい。
「トパーズと……ホープ晶石?」
聞いたことのない石の名前だった。
なんだろう、この石。
説明読むと、珍しい石、位な事しか書いていない。
あとで本、開いて調べてみよう。
この世界、モンスターは基本山奥にしかいないとかで道中はとても穏やかだった。
危険も無くって静かで、よくいえば安全、悪く言えばちょっと退屈かもしれない。
宿に入って俺は、夕食までの時間本を開いてホープ晶石について調べた。
「えーと……高熱量を発する石で、石炭よりも長持ちする」
石炭よりも長持ち、と言われても俺には全然ぴん、とこない。
「この世界、面白い石があるよなぁ。クロが一番変わってるけど」
そう呟くと、クロが赤っぽく光って文句を言い出す。
『おい、誰が変わってるって?』
「お前だよ。喋るし文句言うし、なんか光るし」
『光るのなんて普通だろ?』
「普通じゃねえよ」
呆れながら言うと、クロは真っ赤になって怒りだす。
『どこがだよ!』
「全部だよ!」
『俺からしたらお前の方がおかしいっての! せっかく願い事叶えてやるって言ってんのに無視しやがって』
そう、拗ねたような口調で言う。
ほんとこいつ、石なのに感情豊かだよな。じつは元人間とか?
そう思って、俺はクロに尋ねた。
「お前、元人間だったりする?」
すると、クロは真っ赤になって声を上げる。
『お前なに言ってんだよ? 俺が、元、人間? んなわけねえだろ? なんで人間なんかと一緒にするんだよ』
「だって、人間ぽいから」
『どこがだよ!』
「そーゆーところ。お前感情豊かじゃん?」
『別に石が感情持ってもいいだろ?』
そう、なのか?
俺は首を傾げて考えたけれど、気にしないことにした。
本に目を落として呼んでいると、扉を叩く音がした。
「お客様です」
宿のスタッフさんだろう。
俺は扉に向かって返事をして、立ち上がって俺は扉へと向かい、それを開いた。
ここに俺を案内してくれた宿の人と、その後ろに立つ、見覚えのない身なりのいい中年男性。
誰だろう。
不思議に思っていると、宿の人は言った。
「黒髪の客って貴方しかいないので。では失礼します」
そう言って頭を下げ、宿の人は廊下を歩いて行く。
いやちょっとまて。確かに黒髪の人間は俺しかいないだろうけどさ。
だからっていきなり部屋に連れてくるとかする?
この世界、俺の常識と違うことがまま起きる。
俺は戸惑いつつ、身なりのいい男性に向けてひきつった笑いを浮かべて言った。
「あの、何か御用、でしょうか」
「ユーキ=ナナセさん、ですね? 私はスターダスト協会の者です」
まじかよ。
ってことは俺を勧誘しにきたってこと?
そう思って俺は首を横に振る。
「お、俺は働くつもりなんてないです」
すると男性は貼りつけたような笑顔で首を横に振って言った。
「貴方にひとつだけお願いがございまして」
「お、お願い?」
「えぇ。ちょっと見てほしい石がございまして」
言いながら彼は懐から小さな布袋を取り出す。
そして、その袋からうやうやしく布の塊を取り出した。
手のひらの上でその布をゆっくりと開くと、そこから出てきたのは小さな石だった。
色は赤い。わずかに光って見えるけれどなんか変な感じがする。
俺は首を傾げてその石を見つめて言った。
「それ、ルビー……ですか?」
赤いからそうかなって思っただけだけど、男は大きく頷く。
「えぇ、そうです」
「でもそれ、なんか……変じゃないですか?」
言いながら俺はその宝石を指差す。
「なんか星みたいなんが見えるけど、不自然、っていうか……」
そのルビーにはなんか星みたいなのが見えるけど、何か妙だ。
そもそも星が入ったルビーはすげー価値があるはずなのに、大して光って見えない。
ってことは、人の手を加えて星が見えるように細工してるんじゃねえかな。
そう思っての発言だったんだけど、俺の言葉を聞いた男はにやっと笑って言った。
「あぁ、素晴らしいですね。手にも取っていないのにそこまでわかるなんて」
その言葉を聞いて、俺はやばい、って思う。
どうしよう、これ、かなりやばいかもしれない。
俺は緊張した気持ちで男を見つめる。
俺の目を、確かめるためにわざと偽物を見せた?
俺は背中に嫌な汗が流れていくのを感じながら、笑顔の男を見つめた。




