16 アレクシアさんに報告
ぜえはあ、と荒い息を繰り返して俺は、何とか宿へと帰る。
もつれる足で階段を上って俺は、部屋の前に立って震える手で何とか鍵を開けた。
すると隣の部屋の扉が開く音がして、俺は大げさにびくり、と震えてそちらを見た。
隣の部屋はアレクシアさんが泊まっている。
扉から出てきた彼女は、俺の方を見て心配げな表情を浮かべて俺を見て言った。
「ユーキ、お帰り。話、どうだったの?」
「あ……アレクシア、さん」
彼女の顔を見て、内心ほっとしてしまう自分に気が付いて、戸惑いを覚える。
まだ出会って一週間も経ってねえのに、俺、すげーアレクシアさんに依存しているのかもしれない。
そんな自分に気が付いて、俺はぎゅっと、拳を握りしめた。
強くならないと。
そんな俺の想いに気がついたのか、クロが語りかけてくる。
『だから俺を頼ればいいだろ? 力が欲しい、ってさぁ』
顔がないのに、にやにや笑っているように思えてちょっとイラッとしてしまう。
俺は、アレクシアさんの顔と、クロを見る。
ピンクっぽく光っているクロをぎゅっと握りしめたあと、俺はアレクシアさんの方を見てひきつった顔で言った。
「えーと…アレクシアさん。あのスターダスト協会の人で……」
「え、スターダスト協会のひとがどうしてユーキに会いに来たの?」
そう言って、アクレシアさんは目を丸くする。
それはそうだよな。俺と接点ねえもん。
俺は目を泳がせて、あの人に言われたことを話していいものかと考える。
いやでも、黙っている理由もないしな。アレクシアさんは、仲間、だし。
「あの、なんか仕事、誘われて」
言いながら俺は苦笑を浮かべる。
するとアレクシアさんは不審そうに顔を歪めて、部屋の扉を閉め俺の方に近づいてきて言った。
「どういうこと? どうしてユーキがスターダスト協会に誘われるの?」
そんなの俺が聞きたい。
さすがに廊下で立ち話をするのは嫌で、俺は迷いながらもアレクシアさんを部屋へといれる。
俺はベッド、彼女は椅子に座ってもらい、何を言われたのか話した。
話しを聞きながら、アレクシアさんは顎に手を当てて首を傾げて呻り声を上げた。
「貴方の目が欲しいって、こと?」
「そう、みたいで……」
「金貨十枚って、破格すぎて怖いわね。偽物の石ってそんなに多いのかしら?」
言いながらアレクシアさんは首を傾げる。
どうなんだろう。俺にはよくわからないから、俺も一緒になって首をひねった。
「うーん、宝石ってそんな簡単に偽造、できるもんなのかな」
『簡単じゃあねえけど、悪い事考えるヤツは、いくらでもいるからなぁ』
そう、クロが呆れたように言う。
『お前が見抜いたエメラルドなんてクリスタルを着色して作れるんだけどな』
そう、ノリノリで話し始めるけれど、俺はスルーする。だって、アレクシアさんと一緒にいる所でこいつの相手、してらんねえもん。
それに気がついたらしいクロは途中で話を切って、文句を言い始める。
『おい、俺を無視するんじゃねえよ!』
とりあえずこいつの相手は後にして、俺はアレクシアさんの方をむいて言った。
「鉱石とかってそこらじゅうで採れるわけですよね」
「えぇ、そうよ。その分、すごい価値がある物は少ないけど。だから不思議なのよね。わざわざ手間暇かけて偽造しようって気持ちがわからないのよ。だって川や山に行けば鉱石はあるわけだし。海岸にもあるのよ?」
「でも、貴重な価値が高い物があることはあるわけですよね」
俺の言葉に、アレクシアさんは頷き言った。
「それはそうだけど。ダイアモンドやエメラルド、ルビーとかのなかにはすごく貴重なものは有るわよ。でもだからって偽造したら罪になるし、そんなリスク背負ってまで偽造に手を染めるのが理解できないのよね。なにか別の理由があるのかなって思って」
「そっか……その辺の事情は分かんねえけど、実際、偽物持ち込んでいる人、いたしなぁ……」
「法外な契約金といい、ちょっと怖いわね」
言いながらアレクシアさんは腕を組む。
やっぱなんか裏がありそうだよなぁ。
俺も手を組んで俯き、やり取りを思い出す。
「そういえば、最後になんか言っていたような……」
俺がウィリアムさんの前から去ろうとしたとき、何を言っていたっけ。
必死に頭を巡らせる。えーと確か……
「石……?」
そうだ、貴方が持つ石、とか何とか言っていた気がする。
「石って何? ユーキが首にかけているなんか怪しい石の事?」
いぶかしむようなアレクシアさんの声を聞きながら、俺はクロへと目を向ける。
俺、スターダスト協会でクロに話しかけられて、無視できなくって話しかけたりしてたしな……
ナトジャでも、人前でクロと話してたこと、何度かあるし……
「ねえユーキ。スターダスト協会は、珍しい石を集めて強引なことをしているっていう話もあるから……気を付けた方がいいかもしれないわね」
心配げなアレクシアさんの言葉に、俺は神妙な気持ちで頷いた。




