目覚めた私は聖人……ではなく美少女の皮を被った、元咎人ですが、まずはナメたメイドを教育します。
2話目です!
楽しんでいただけたら嬉しいです!
「ああ、娘よ!目が覚めたのだな!」
「リヴァイア様、ありがとうございます……!」
「ルナ、起きたんだね。本当に良かった……!」
涙を流しながら私を見つめる美男美女に、美少年。 ベッドの横から向けられた視線は、あまりに純粋で、暖かだ。
そう思ったのもつかの間、突如、頭に濁流のごとく流れる、この肉体の持ち主だったであろう子の記憶。
情報過多で壊れてしまいそうな頭を使って、記憶を辿ってみる。
――どうやら私がこれから名乗るべき名前は、
ルナ・フォン・ノクターンらしい。
そして記憶から察するに、どうやら私は超がつくほどお人好し両親を持つ、ノクターン公爵家の娘になったようだ。
混乱していた私が状況把握を終えて、一番に口を開いたのは、黒髪で、ブルーサファイアのような瞳が映える美少年。
ノクターン公爵家の長男である、
アストル・フォン・ノクターンだった。
「ルナ、もう痛むところはないか?まだ寝ていなくて大丈夫なのか?」
この長男、ルナの記憶を辿れば辿るほど、シスコンじみている記憶しかないな……。
というか、なにか返さねば。
「ええ、お兄様。大丈夫ですわ。私も不思議なのですが、始めから何も起きていなかったかのように、なんともありませんの。」
「本当か?それなら良かった。可愛い、可愛い僕の妹が突然倒れてしまったと聞いた時は、すごく肝を冷やしたんだからね。」
と、シスコン発言をしたアストルの話に重ねるように、
「本当よ、お茶会の途中で、『突然倒れて頭を打ってしまった。』と聞いたものだから、すぐにお暇して、ルナのもとに戻るまで、ずっとリヴァイア様に『娘をお助け下さい。』と祈ってたのだから。」
と加わる、ルナの母。
ノクス・フォン・ノクターン。
黒髪に、アクアマリンのような色の瞳をした、おっとりとした雰囲気を纏う、またもや美女。
そんな2人の心配エピソードを聞いて、ハハハと笑う、ノクターン公爵家の当主でありルナの父。
セレスティン・フォン・ノクターン。
アストルの瞳は、父譲りだったのだとわかるほどに美しい、ブルーサファイアの瞳。そして、私と同じ、銀髪。またもや美男だ。
美人が3人もずらっと並んでる。
一体、ここの家のDNAはどうなってんだか……。
父は、その美しい瞳をこちらに向け、
「リヴァイア様の慈愛を受けたから、きっと、守ってくださったのだろうな。リヴァイア様に感謝しなくちゃな。」
と言ってニカッと微笑む。
さっきから、リヴァイア様、リヴァイア様って。一体、誰なんだろうか。
「リヴァイア様って誰?」
と聞くのはなんだか、ご法度な気がしたので、
「ええ、そうですね!お父様。」
と微笑み返しておいた。
「でも、いくら元気だからって突然倒れたんだ。今日くらいは、無理をしないように休みなさい。」
父はそう言って母と兄を連れて部屋を後にした。
パタン、と重厚なドアが閉まる。
そして入れ替わるように、愛想良く、にこやかにして、部屋に入ってきたメイド。
今、この部屋にいるのは、私と……部屋の隅に立つメイドだけだった。
メイドが大きく息を吸ったと思えば、
先程までの、恭順で、にこやかで、慎ましい姿を一変させた。
フン、と鼻を鳴らして、私のサイドテーブルの上にガシャンと荒く、銀のトレイを置く。
そして開口一言目。
「ルナ様ァ?お食事をお持ちしましたー。体調が、良くなられたようなのですが、念の為、栄養満点の、特製スープをご用意しましたよ。残さず食べてくださりますよねぇ?」
置かれた銀のトレイにあるものは、お世辞にも料理とは言えない。
生ゴミのような臭いが、部屋にうっすら広がるソレは、
すっかり冷めきっていて、知っているスープとは遠く離れた泥のような色の「液体」だった。
「公爵家の娘だよね?これ食べるのはありえなくね?」
そう思い、記憶を辿る。
このメイド、両親の前では、『健気に任された仕事をこなし、恭順で模範的なメイド』を演じていたようだ。
しかし、その裏では、オドオドして何も言えなかったルナの性格を良いことに、幾度となく嫌がらせをしていたようだ。
「教育が足りていないみたいだなぁ。」
そう思ったので、私が直々に、オブラートに、優しーく教育することにした。
メイドの顔を見上げた。下卑た笑みをしてこちらを見下ろしていた。
私は小さく息を吐いた。
「んふふ、今日の料理はなんだか、大人も童心に帰った気分にでもなりそうな一品ね。まるで、そうね。私みたいに、幼い子供のおままごとのようね!さぁて、美味しくいただく前に、何が入っているのか、教えてくださらない?私もおままごとがしたい気分なの!」
「は……?」
ゆっくりと淡々と話した私に対し、メイドは眉を顰め、いかにもという、困惑の顔をする。
「せっかく、私の体調も良くなったのですから、久々にお兄様とおままごとがしたいわぁ!『今日は休め』と言われてしまいそうですが、優しいお兄様ならきっと、私と、お兄様と、あなた。3人でおままごとをすることを許してくださいますよね!…… スープは冷めきっていますから、お兄様をお呼びして、いらしてくださるまでどれだけ時間がかかろうとも、これ以上冷める心配はありませんもの。安心ですね!そうとなったら、お兄様を呼んでもらえないかしら?お兄様にもこのスープの中身を知ってもらいたいわ!ね、良いでしょう?」
さらにつついてみた。
「っ……る、……ルナ様?…、何を……?」
メイドの顔から、一瞬で血の気が引いていく。
そうだ、その顔が見たかった。いい気味だね。
「ど、どうして。あ、あんた、……いつもなら大人しく……っ」
「んー?ごめんなさい。聞こえなかったわぁ。お兄様を呼びに行ってちょうだい?それとも……」
ベッドから、すっと足を下ろし、怯えるメイドに一歩、歩み寄り、母譲りの綺麗な瞳を濁らせるように狂気を宿らせる。
「あなたが望むのなら、2人きりのおままごとにして、ここで、隠し味をぜーんぶ教えてくれてもいいのよ?それを紙に書き写して、レシピ本を作りましょ!お兄様に、お母様、お父様にもこの素敵な料理を食べてもらいたいわ!」
「ひっ、……申し上げます!申し上げますからぁ……!私、私が悪うございました……!」
床に額をつけて、涙と鼻水で、顔をぐしゃぐしゃにして、許しを乞うメイド。
それを見下ろしながら、私は心の中で小さくガッツポーズを決める。
「気味が良い。そして、異世界逃亡生活、最初のざまぁ(?)だ!」
優越感に浸っていたその時。
バンッ!
と、部屋の扉が勢い良く開いた。
「ルナァァァ!なんだか、嫌な予感がしたから戻ってきたよ!大丈夫か?!」
現れたのは、あの美少年のお兄様、アストルだった。
咄嗟に、私の教育が熱心すぎたのがバレないように、
「ごめんなさい!私、泣かせるつもりはなかったの!スープは冷めて、不思議な色をしていたものだから、なにかあったのか、気になっただけなの!今までの嫌がらせを清算したい訳じゃないわ!高圧的に言ってしまってごめんなさい!」
と言ってみた。
「なっ……!?」
メイドの顔が、今までで一番、無様に映る。
それを聞いたお兄様は、下劣で穢れたものを見るような目でメイドを見下し、詳細さえ聞かずに、
️「衛兵、この不届き者をただちに地下牢へ連れて行け。一生をかけて償ってもらおう。」
とだけ発する。かなり怒ってるな、さすがはシスコン。
「ひいぃぃっ!?ルナ様、ルナ様!お助け――ッ!」
「んふふ、何を案ずることがありますの?あなたはこれから毎日、あの『栄養満点の、特製スープ』を食べられますのよ?良かったではありませんか。無論、残さず食べますよね?」
最後まで醜く泣き喚いた無様なメイドを、優しく見送ってあげた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
ルナの初めての『教育』、いかがでしたでしょうか?
お兄様アストルのシスコンっぷりも、今後さらに加速していく予定です。
もし
「おもしろい!」
「ルナのサイコっぷりが良い!」
と思っていただけましたら、画面下部にある
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