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53話 ロキシーはじゃじゃ馬


アーク・ノヴァでは、緊急対策会議が開かれていた。


「太陽風の増加を確認。」


ノアが報告する。


「さらに、前方宙域に予測不能な重力嵐を確認しています。」


アレックスが航路図を見る。


「このままでは危険だな。」


「一時的に現在宙域から退避する。」


その言葉を聞いて、ひかりが不安そうな顔をした。


「でも、ルーデウス号のみんなは?」


「通信も切れてるんだよ?」


「大丈夫だ。」


アレックスが落ち着いた声で答える。


「いざとなれば、アーク・ノヴァで救出に行くさ。」


ひかりは少し安心したようにうなずいた

しかしアレックスは続ける。


「ただし、最悪の事態は想定しておく。」


「全員で緊急対策を考える。」


他のクルー達も頷く。


「ルーデウス号の位置が確認できなくなった場合。」


「惑星αの重力や恒星の位置を使って、可能な限り位置を推測する。」


「救出用の航路も複数用意しましょう。」


こうして、アーク・ノヴァでは真剣な会議が続いていた。


---


一方、その頃

惑星αの探索チームは、別の問題に頭を抱えていた。


「……これ、どうやって乗るんだ?」


遼が目の前の小型キャタピラバイクを見つめている

**ロキシー。**

地球の一般的なバイクとはまったく違う設計で、二本のキャタピラを備えた特殊探査車

最高速度は時速二一〇キロ。

惑星探査用とは思えないほどのハイスペックマシンだった。


「せっかくだし、乗ってみるか。」


遼がロキシーを外へ出す。

玲奈とリサ、隼人が見守る。

遼はまたがる。


「……意外と安定してるな。」


アクセルを開く。

ブォンッ!

突然、前輪……ではなく前方の車体が大きく浮き上がった。


「うわっ!」


そのまま横転。

ドサッ!


「……。」


遼は地面に座り込んだ。


「あー。」


「そうか。」


「ゆっくりアクセルを開くのね。」


玲奈とリサは思わず顔を見合わせる。

再びロキシーへまたがる。

今度は慎重にアクセルを開く。

ブゥゥン……。

ゆっくり前へ進んだ。


「動いた!」


「動いた動いた!」


玲奈とリサが手を叩いて喜ぶ。

遼は得意そうに笑う。


「よし。」


「これなら――。」


右へ曲がろうとハンドルを切った。

ガタンッ!

また倒れた。


「……。」


隼人が呆れた顔で近づく。


「何やってるんだよ。」


「ロキシーが壊れちゃうだろ。」


そして、得意げにヘルメットの上に特殊作業車用ガードをかぶる。


「俺に乗らせて。」


「見本を見せてやるよ。」


隼人はロキシーにまたがる。

アクセルを吹かす。

ブォォン!

車体が跳ねる。


「うわっ!」


ドサッ!

また転倒。

遼が笑いをこらえる。


「……見本は?」


「うるさいよ!」


ロキシーは今回、二台積んできていた。

玲奈が二号機へまたがる。


「私もやってみる。」


アクセルを開く。

ブォンッ!

倒れる。


「……。」


隼人が真顔で言う。


「これ、不良品じゃないか?」


遼も頷く。


「俺もそう思う。」


その時、玲奈がリサを見る。


「リサなら乗れるかも。」


リサが青ざめる。


「えっ?」


「私、地球にいた頃、原付バイクにも乗ったことないわよ。」


「怖いから無理。」


玲奈は笑う。


「大丈夫。」


「ゆっくりアクセルを回せばいいだけ。」


「……本当に?」


「本当に。」


リサはおそるおそるロキシーへまたがった。

両手でハンドルを握る。


「じゃあ……。」


そっとアクセルを開く。

ブォン……。


「……。」


「もっと?」


「ゆっくりよ。」


しかし――。

リサがほんの少しアクセルを回した瞬間。

**ブォォォォン!**

ロキシーが一気に加速した。


「えっ?」


そのまま――。

シュゥゥゥッ!

あっという間に小さくなっていく。


「リサーーー!」


「止まってーー!」


四人は呆然とその方向を見つめる。

数秒後。

隼人がぽつりと言った。


「……あれ?」


「乗れるじゃん。」


遼も絶句する。


「なんでだよ……。」


玲奈も目を丸くしている。


「さすがリサ。」


一時間後。

リサは普通にロキシーを乗りこなしていた。


「楽しい!」


「なんで!?」


隼人が叫ぶ。

その後、一日かけて何度も練習した結果――。

遼も。

玲奈も。

隼人も。

そしてリサも

なんとかロキシーを自在に操れるようになった。

一番近時間がかかったのは隼人だった。


「……こいつ、絶対じゃじゃ馬だ。」


遼は笑った。


「でも、これなら探査がかなり楽になる。」


四人はロキシーを並べて、荒涼とした惑星αの大地を見つめた。

その時、遼の通信端末が一瞬だけ点滅した。

しかし――。

通信は、すぐに途切れた。

四人の表情から笑顔が消える。

遠く離れた空では、三つの恒星が複雑な光を放っていた。


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