52話 探査
惑星αへ降り立った四人は、すぐに周囲の環境確認を始めた。
しかし、最初の探査で一つの問題が発生した。
『アーク・ノヴァとの通信、接続を維持できません。』
ルーデウス号AIのテットが報告する。
「もう切れたのか?」
隼人が通信モニターを見る。
『現在、アーク・ノヴァとの通信が途絶しています。』
リサが不安そうな顔をする。
「でも、予定していたことよね?」
玲奈がうなずく。
「そう。」
「ルーデウス号に搭載できる通信装置では、アーク・ノヴァとの完全な量子通信はできない。」
量子通信なら、惑星の裏側へ回っても、どれだけ距離が離れていても通信を維持できる。
しかし、そのための設備は大きく、ルーデウス号へ搭載することができなかった。
そのため、今回の探査では通常の電波通信を使用する。
つまり――。
**アーク・ノヴァが、常にルーデウス号の真上付近にいる必要がある。**
だが、プロキシマ・ケンタウリは三つの恒星が互いに影響し合う複雑な星系だ。
重力環境は刻々と変化する。
アーク・ノヴァが、七日間ずっと同じ場所に留まっていられる保証はない。
「分かっていたことだけど……。」
玲奈が空を見上げる。
「やっぱり不安ね。」
遼も無言で空を見つめた。
ここは地球から遼かに離れた、未知の惑星。
通信が切れれば、四人だけになる。
それでも、探査は始めなければならない。
遼が宇宙服のヘルメットを確認する。
「よし。」
「仕事を始めよう。」
その言葉を合図に、四人は動き始めた。
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最初の探査は、上空からの地形確認だった。
隼人が小型偵察機――**シルフィエット**へ乗り込む。
「上空から、エリスが走れそうなルートを探す。」
「岩場ばかりだからな。」
シルフィエットがルーデウス号から発進する。
小型機は惑星αの上空へ上昇し、地表を広範囲に撮影していく。
隼人から通信が入る。
「東側に比較的平らな場所がある。」
「ただ、その先に大きな岩石地帯があるな。」
リサが地図へデータを重ねる。
「そのルートなら、地質サンプルを効率よく採取できそう。」
「決まりだな。」
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一方、地上ではエリスの準備が始まっていた。
装甲バギーに掘削機器を取り付ける。
「これを持っていく。」
リサがサンプル容器を確認する。
遼がエリスの装備を確認する。
「地下まで掘れるのか?」
「かなり深くまで可能よ。」
「表面だけじゃなく、地中深くのサンプルが欲しい。」
四人はそれぞれ分かれて行動する。
遼とリサがエリスに乗り込み、地質調査。
隼人はシルフィエットで上空からルートを確認。
そして玲奈はルーデウス号に残り、通信と全体の安全管理を担当する。
「何かあったらすぐに知らせて。」
玲奈が二人へ声を掛ける。
「分かった。」
遼が答える。
やがてエリスが走り始める。
荒れ果てた茶色の大地。
タイヤが岩を踏み、激しく揺れる。
しばらく走ったところで、リサが地面を指差した。
「ここ。」
「地質が変わってる。」
エリスを停止させる。
掘削装置が地表へ伸びていく。
ギギギギ……。
回転音とともに、岩盤が削られていく。
サンプルが少しずつ採取される。
「見て。」
リサが容器へ入った岩石を確認する。
「表面とは違う。」
「内部構造がまったく違うわ。」
遼も興味深そうに覗き込む。
「生命の痕跡は?」
「まだ分からない。」
「もっと深く調べる必要がある。」
二人はさらに掘削を続ける。
サンプルケースがいっぱいになる。
「一度ルーデウス号へ戻ろう。」
遼が言う。
エリスは来た道を戻り、ルーデウス号へ帰還する。
採取したサンプルを積み替える。
その間、玲奈が二人に食料と水を渡す。
「お疲れさま。」
「ありがとう。」
積み替えが終わると、再び出発する。
今度は別の地点へ。
また掘る。
また採取する。
そして戻る。
そんな作業が繰り返された。
玲奈も一日中ルーデウス号にいるわけではない。
時には遼と交代して地上へ出る。
時にはリサが留守番をする。
四人が交代しながら探査を続けていく。
しかし、空を見上げるたびに、誰もが気になっていた。
**アーク・ノヴァは、まだ上空にいるのだろうか。**
通信がいつ戻るのか。
いつまで、この惑星で安心して探査を続けられるのか。
それでも四人は、未知の大地を一歩ずつ進んでいった。
人類が初めて足を踏み入れた惑星α。




