51話 人類初の一歩?
ルーデウス号が惑星αへ着陸してから、数分。
テットはさっそく大気の分析を開始していた。
『大気成分、解析中。』
『窒素――約九〇パーセント。』
『メタン――約七パーセント。』
残りの数パーセントには、微量の希ガスや未知の成分が含まれている。
「メタンが七パーセント……。」
リサがモニターを見つめる。
「かなり多いわね。」
『呼吸には適していません。』
テットが淡々と告げる。
『船外活動には、生命維持装置付きの簡易宇宙服が必要です。』
一方、アーク・ノヴァ。
中央作戦室では、ジョンが送られてくるデータを食い入るように見つめていた。
「すごい……。」
「本当にプロキシマ・ケンタウリの惑星だ。」
次々と送られてくる大気データ、地表データ、重力データ。
ジョンは興奮を隠せない。
「このデータだけで、地球の研究者たちは何年でも研究できるぞ。」
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ルーデウス号。
遼は船外活動用の簡易宇宙服を身につけていた。
「ちょっと外へ出てみる。」
玲奈が振り向く。
「本当に大丈夫?」
「テットが大気と放射線を確認してる。」
隼人がカメラを構える。
「じゃあ、俺が撮影する。」
「こういうの得意だから」
「地球へのライブ配信も始まってる。」
遼はハッチの前に立つ。
カメラの小さなランプが点灯している。
その映像は、地球へリアルタイムで送られていた。
世界中の人々が、固唾をのんで待っている。
人類史上初。
プロキシマ・ケンタウリの惑星へ、人間が足を踏み入れる瞬間。
遼はハッチを開ける。
ゴォォ……。
異星の風が船内へ流れ込む。
目の前には、茶色い岩石の大地。
地球とはまったく違う景色。
遼は一歩、足を外へ出そうとした。
その時だった。
ふと、思う。
(……この歴史的な一歩。)
(俺より、玲奈の方がふさわしいんじゃないか?)
玲奈は副艦長として、この長い旅を支えてきた。
ブラックホールからの脱出でも、仲間をまとめていた。
遼は振り返った。
「玲奈。」
「何?」
「先に降りろよ。」
玲奈は驚く。
「え?」
「この一歩は、お前の方がふさわしい。」
玲奈はすぐに首を振った。
「別にいいわよ。」
「遼が降りなさいよ。」
「いや、お前が。」
「遼が。」
「玲奈が。」
二人がハッチ前で言い合っている。
隼人がカメラを持ったまま頭を抱えた。
「おい……。」
「音声も世界配信されてるぞ!」
「……。」
遼と玲奈が固まる。
世界中の視聴者が、二人の言い争いを聞いていた。
隼人がため息をつく。
「もういいから、遼。」
「降りてしまえよ。」
「俺が撮ってるから。」
遼は観念した。
「……分かったよ。」
その時――。
「ご、ごめんなさい!」
後ろから声が聞こえた。
リサだった。
「遅れてごめんなさい!」
急いでハッチまで小走りでやってくる。
しかし――。
「きゃっ!」
足元の段差につまずいた。
「えっ?」
ドンッ!
そのまま隼人にぶつかる。
「うわっ!」
隼人の身体が大きく前へ押し出される。
「あ――――!」
カメラを握ったまま、隼人がハッチの外へ飛び出した。
「うわああああ!」
ドサッ!
異星の大地に、頭から見事なダイブ
完全な静寂。
遼。
玲奈。
リサ。
三人が固まる。
隼人は地面に突っ伏したまま動かない。
数秒後。
隼人がゆっくり顔を上げる。
「……。」
「痛ぇ……。」
地球へ送られている映像は、まだ切れていない。
そして世界中の人々が目撃していた。
人類史上初めて、プロキシマ・ケンタウリの惑星へ降り立った人間。
その栄えある第一歩は――。
:頭からのダイブだった:
ルーデウス号では、三人が同時に吹き出した。
そしてアーク・ノヴァでは――。
ジョンが画面を見つめながら絶句していた。
「……歴史的瞬間が。」
「……台無しだ。」




