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44話 父と娘


玲奈は迷っていた。


中央ホールに拘束されている敵戦闘員たち。


その中でも、あの大男――ひかりが「パパ」と呼んだ男

玲奈はひかりの手術の時面談を行ったことがある 間違いなくひかりの父であろう

でも今は魂のない人形のような状態 ひかりに合わせるべきか

そして、メインコンピューターの回線をつなぐべきか

ARノアが敵メインコンピューターに侵入しているため 何かあればシャツトダウン出来る


玲奈は慎重に考えた末、面談を行うことにした。


「ノア」


敵メインコンピューターに接続して敵司令官のみ回線をつないで」


「了解」


敵司令官はゆっくりと目を覚ました、そしてゆっくりと話し始めた

まず分かったのは、ひかりの家族についてだった。

ひかりにとって、身内と呼べる存在は父親だけだった。

母親は、ひかりが幼い頃に離婚して家を出ていた。

ひかりの病状もあり、母親には耐えられなかったのかもしれない。

その後の消息は分かっていない。

一方、父親は軍人だった。

任務は厳しく、家を離れていることも多かった。

それでも、任務の合間を縫って病院へ足繁く通った。


そして――。


ひかりの義体転送手術を決めたのも、父親だった。

玲奈は尋ねた。


「どうして、娘さんを義体に?」


男は静かに答えた。


「娘が健康な身体を手に入れられる可能性があるなら……それに賭けたかった。」


義体転送後は、規則によって本人と直接会うことはできない。

それでも父親は、それでよかったと思っていた。


「生きてくれるなら、それだけでよかった。」


しかし――。


アーク・ノヴァが行方不明になった。

その知らせを聞いた父親は、いてもたってもいられなくなった。

そんな時、HORIUCHI SPACEが、行方不明になったアーク・ノヴァが再び現れる可能性を予測しているという情報を入手した。


そして、HORIUCHI SPACEが宇宙飛行士を募集していることを知った。


条件は――義体転送。

父親は迷わなかった。


「娘を探せる可能性があるなら……。」


そうして彼は、HORIUCHI SPACEの宇宙飛行士になった。

そして今――。

目の前に、娘がいる。

面談の後、玲奈はひかりとの面会を許可した。

扉が開く。

ひかりが入ってくる。

男はしばらく動かなかった。

そして――。


「……ひかり。」


その声を聞いた瞬間、ひかりの目が大きく開く。


「パパ……。」


男の目から涙がこぼれた。


「大きくなったな。」


ひかりは笑った。


「何言ってるの。」


「私、病院にいた頃から比べてこんなに元気になったんだから。」


男は涙を拭う。


「そうだったな……。」


ひかりは父親のそばに座る。

そして、アーク・ノヴァでの日々を話し始めた。

仲間たちとの生活。

初めて見た宇宙。

オールトの雲。

ボイジャー1号との出会い。

ブラックホールに閉じ込められたこと。

そして――。


「私、アーク・ノヴァに来てよかった。」


ひかりは笑う。


「初めて友達ができたんだよ。」


父親は黙って聞いていた。

そして、また涙を流した。


「そうか……。」


「よかったな。」


少し離れた場所から、その二人を玲奈は見つめていた。

玲奈の胸の中に、またあの疑問が浮かぶ。


――魂とは何なのだろう。


この男には魂がない。

そう思っていた。

それなのに――。

娘を見て涙を流している。

娘の話を聞いて喜んでいる。

ひかりもまた、目の前の男を「パパ」と呼んでいる。

玲奈には分からなくなっていた。

魂とは、身体の中に存在する何かなのか。


それとも――。


人を想う気持ちそのものが、魂なのだろうか。


玲奈は答えを出せないまま、父と娘を静かに見つめていた。


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