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42話 永遠の命、その代償


HORIUCHI SPACEの制御システムが停止し、アーク・ノヴァのクルーたちはようやく自由を取り戻した。

復旧した量子通信を使い、アーク・ノヴァから地球へ向けて一斉に通信が送られた。


最初に口を開いたのはアレックスだった。


「堀内の行為を、私は絶対に許せない。」


「航海の安全を脅かしただけじゃない。クルー全員の命を危険にさらした。」


アレックスの声には、怒りがこもっていた。

続いてジョンが通信画面に向かって話す。


「我々は、人類がまだ見たことのない未知を探求し、研究している。」


「宇宙には、まだ知られていないことが無数にある。」


「そこへ政治や金儲けを持ち込まないでくれ。」


そして玲奈も、義体転送について語った。


「義体に魂を移せないことを知りながら、兵士たちに転送手術を受けさせていたのなら……。」


玲奈は言葉を詰まらせる。


「それは、殺人と同じではないのでしょうか。」


地球では大きな議論が巻き起こった。

しかし――。

堀内の逮捕を望まない者たちもいた。

政治家。

警察関係者。

軍関係者。

財界。


それぞれの利害が複雑に絡み合い、裏で様々な工作が行われた。

証拠の一部が消える。

証言が覆される。

捜査そのものが遅らされる。

そして――。

堀内正樹の罪は、事実上もみ消されてしまった。


「……これが地球か。」


遼は通信を切った後、静かに呟いた。

玲奈も複雑な表情を浮かべる。

それでも、アーク・ノヴァにはやるべきことが残っている。

船体を修復し、航行システムを再確認する。


そして――。


再び宇宙へ向かう。

アーク・ノヴァは、予定していた探査航海を続けることになった。

しかし、地球では別の問題が残された。

**HORIUCHI SPACEによって義体転送を受けた人々は、本当に人間なのか。**

身体は動いている。

言葉も話す。

記憶もある。

家族の顔を見れば、笑うこともある。

しかし――。

そこに魂はあるのか。

それとも、外部コンピューターによって動かされているだけなのか。

科学者たちは議論し、哲学者たちも議論した。

宗教家も、政治家も、一般の人々も。

世界中で答えの出ない論争が始まった。

そしてアーク・ノヴァの船内。


玲奈は自分の義体を見つめていた。

そして、隣にいる遼へ問いかける。


「ねえ、遼。」


「ん?」


「あの司令官のことなんだけど……。」


遼が玲奈を見る。


「アレックスと殴り合っていた時、他の兵士に『手を出すな』って言ったでしょう?」


「ああ。」


玲奈は窓の外に広がる宇宙を見つめる。


「魂のない人形が……あんなことを言うと思う?」


遼は答えなかった。

玲奈は続ける。


「駆けつけた兵士達で戦えば絶対勝てたのに、部下を止めた。」


「アレックスのことを認めて、『お前と小柄な女はよくやった』とも言った。」


玲奈は自分の手を見つめる。


「外部コンピューターが人間らしく振る舞うように命令した、それだけの事かもしれない。」


「でも……。」


少し間を置く。


「私は正直、分からない。」


遼も窓の外を見る。


「俺にも分からないよ。」


玲奈が遼を見る。


「でも、一つだけ分かることがある。」


「何?」


遼は静かに答えた。


「俺たちが魂について何も分かってないってことだ。」


二人の間に静かな時間が流れる。

広大な宇宙の中を、アーク・ノヴァは進み続けていた。

その小さな船の中で――。


誰にも答えられない問いだけが、残されていた。



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