39話 小さなノア
中央作戦室。
堀内との通信が切れたあと、しばらく誰も口を開かなかった。
遥はモニターを見つめながら、ゆっくりと言った。
「……堀内の話を整理すると。」
隼人と玲奈が遥を見る。
「俺たちには魂がある。」
「でも、あいつが作った義体には魂がない。」
遥は、中央作戦室の外に立つ兵士へ目を向けた。
「つまり……。」
「この兵士たちは、操られた人形なんじゃないか?」
隼人が兵士を見る。
「確かに……。」
兵士は微動だにしない
ただ、命令された通りに立っている。
遥は続ける。
「もし本当に操り人形なら……。」
「停止させる方法があるかもしれない。」
玲奈が驚いた顔をする。
「でも、どうやって?」
「そこまでは分からない。」
遥は首を振る。
「ただ、普通の人間とは違うなら、そこが弱点になりうる。」
その時だった。
「その可能性は高い。」
突然、悠斗が口を開いた。
「え?」
遥が振り返る。
悠斗は壁際に座りながら、意味ありげな笑顔を浮かべていた。
「実はな。」
「こんなことが起きても大丈夫なように、ノアを少し改造してある。」
「ノアを?」
悠斗が指を鳴らす。
「ただし、普通のノアじゃない。」
その瞬間――。
中央作戦室の入口から、小さな光が入ってきた。
「……なんだ?」
隼人が身構える。
光が遥の目の前まで飛んでくる。
そして――。
パッ。
小さな人型の姿へ変わった。
「……ノア?」
そこにいたのは、二頭身ほどの小さなノアだった。
手のひらに乗るほどの大きさ。
丸い頭。
小さな身体。
そして、いつものノアと同じ声。
『お久しぶりです、皆さん。』
「ちっちゃ!」
隼人が思わず声を上げる。
玲奈も驚いている。
「これ……ノアなの?」
『はい。』
悠斗が説明する。
「ARノア。」
「以前、遥を使って実験したことがあっただろ。」
「あの・・・」
「ゾンビアレックスか。。。」
その言葉に、室内の空気が一瞬凍る。
遥の表情がわずかに強張る。
「……あの時の技術を?」
悠斗は肩をすくめた。
「そうだ。あれは“意識の再構成と外部投影”の実験だった。」
隼人が眉をひそめる。
「つまり……実体はない?」
『はい。触れません。』
玲奈が周囲を見る。
「でも、そこに“いる”ようには見える……」
悠斗がうなずく。
「それが重要なんだ。」
「兵士の認識系統には一切引っかからない。」
ARノアが兵士の前を通り過ぎる。
兵士はまったく反応しない。
まるで空気そのものだ。
「見えてない……。」
遥が小さく呟く。
『正確には、兵士側のセンサーにも認識されていません。』
悠斗が続ける。
「ARノアキーボードを出してくれ」
ARキーボードを凄まじい速さで打ち込む
遥の目が鋭くなる。
「これでハッキングプログラムが作れるのか」
玲奈も気づく。
「みんなを助けられるかもしれない。」
『可能性はあります。』
ARノアが答える。
「ただし、問題があります。」
全員がノアを見る。
『私自身の本体は、現在も堀内側のシステムによって隔離されています。』
「じゃあ、今ここにいるお前は?」
『緊急時用に悠斗が作成した、独立したバックアップ投影です。』
『あまり複雑なことは出来ませんが 頑張ります!』
悠斗が軽く笑う。
「本体が捕まっても、こいつだけは動けるようにしておいた。」
遥は小さなノアを見つめる。
その時、中央作戦室の外を兵士が通り過ぎた。
誰もいないかのように、ARノアには気づかない。
遥は小さなノアを見ながら言った。
「頼むぞ、ARノア。」
『任せてください』




