表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/34

15話 オールトの雲

アーク・ノヴァは、すべての修繕と最終点検を終え、再び静かな星の海へと旅立った。

左舷後方の損傷は完全に修復され、AIノアの調整も問題なく終了。

エンジン、航法システム、生命維持装置、量子通信。

すべてのシステムは正常。

船は何事もなかったかのように、太陽系外縁部を順調に航行していた。

ブリッジの正面スクリーンには、無数の恒星が宝石のように輝いている。

太陽は、もはや眩しい恒星ではない。

遠く後方で静かに輝く、一つの黄色い星になっていた。


「航路、異常なし。」


玲奈が報告する。

アーク・ノヴァは順調な航行を続けていた。

数々の困難を乗り越え、いま人類史上初めてオールトの雲へ足を踏み入れている。

展望ブリッジ。

天井から床まで広がる巨大な透明スクリーンの向こうには、幻想的な光景が広がっていた。

数え切れないほどの氷天体や岩石が、淡い光をまといながら宇宙に浮かんでいる。

恒星の光を反射した無数の氷は、青や緑、白銀にきらめき、まるで地球で見たオーロラが立体となって宇宙いっぱいに広がっているようだった。


「……これが。」


遼は思わず息をのむ。


「これが、オールトの雲というやつか。」


玲奈も静かにうなずいた。


「ええ。」


「AIでの予想シュミレーション映像では何もない真っ暗な闇が続いている、とされている。」


「でも、本物はまったく違う。」


「こんなに美しいなんて……。」


二人はしばらく言葉を失った。

静寂だけが流れる。

目の前に広がる光景は、まさに圧巻だった。

宇宙は暗く冷たいだけの世界ではない。

命がなくても、これほどまでに美しい景色が存在する。

遼はゆっくりと玲奈の方を向いた。


「玲奈。」


「ん?」


「ありがとう。」


玲奈は少し驚いた表情を見せる。


「突然どうしたの?」


遼は再び窓の外へ視線を向けた。


「俺は子どもの頃、こんな冒険に出ることを夢見ていた。」


「でも、その夢は叶わないと思っていた。」


「病気になって。」


「余命を宣告されて。」


「人生は終わるものだと覚悟していた。」


遼は静かに微笑む。


「それなのに今、こうして人類で初めてこの景色を見ている。」


「こんな世界を見られるのは……。」


「玲奈、君がこの計画を諦めなかったからだ。」


「本当に感謝してる。」


玲奈は少し照れたように笑った。


「私一人じゃないわ。」


「アレックスがいて、悠斗さんがいて、隼人がいて。」


「みんながいたから、ここまで来られた。」


「もちろん遼も。」


「誰か一人でも欠けていたら、この景色は見られなかった。」


遼は静かにうなずく。


「そうだな。」


その時だった。


ブリッジのスピーカーからノアの声が流れた。


「前方に高密度の氷天体群を確認。」


「オールトの雲中心部へまもなく到達します。」


遼と玲奈は顔を見合わせる。


そして再び窓の外を見つめた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ