14話 射撃訓練
船体修繕を終えたアーク・ノヴァでは、明日の再出発に向けて最後の点検が進められていた。
その一方で、乗員たちは束の間の自由時間を思い思いに過ごしている。
「隼人、ちょっと付き合え。」
遼に声を掛けられた隼人は、不思議そうな顔をした。
「どこへ?」
「射撃場。」
「射撃場?」
「探査船なのに?」
「俺も最初はそう思った。」
遼は苦笑する。
「元々は軍艦として建造された船だから 射撃場ぐらいあってもおかしくないだろ。」
「まあ。そうかもね」
二人は船内の射撃訓練室へ入った。
壁には各種訓練用の銃器が整然と並べられている。
遼は訓練用のベレッタを手に取った。
装弾数十五発。
もちろん実弾ではなく、高密度訓練弾を使用するシミュレーションモードだ。
「久しぶりだな。」
「俺も訓練学校でちょつとやったことあるよ。」
隼人もベレッタを受け取る。
二人はゴーグルを装着し、標的へ向けて構えた。
パンッ!
パンッ!
パンッ!
十五発を撃ち終える。
結果が表示される。
「うーん……。」
遼は苦笑した。
中心からかなり外れている。
隼人も負けていない。
「飛行機は得意なんだけどな。」
「銃は別物だ。」
二人で笑っていると、射撃場の大きなガラス窓の向こうを、一人の女性が歩いていくのが見えた。
白衣を羽織り、眼鏡を掛け、両腕いっぱいに書類を抱えている。
リサ・チェンだった。
目が悪いわけじゃないのに眼鏡をしている スレンダーな美女だ
「リサ!」
遼が窓越しに手を振る。
リサが立ち止まり、不思議そうな顔で中をのぞく。
「どうしたの?」
「息抜きに、ちょっと撃ってみないか?」
リサは首を横に振る。
「えぇ?」
「私、銃なんて触ったこともないわよ。」
「大丈夫、大丈夫。」
隼人が笑う。
「遊び 遊び。」
「そう?」
少し迷ったあと、リサは書類を棚へ置き、射撃場へ入ってきた。
ベレッタを手渡される。
「こう持って。」
「照準はここ。」
隼人が簡単に説明する。
「できるかな……。」
リサは少し緊張した様子で構えた。
静かに息を吸う。
パンッ。パパパパパ
パンッ。
パンッ。
連射が速い
たまらず言う
「もうすこし落ち着いて」
撃ち終えた瞬間、電子標的に結果が表示された。
十五発、すべて中心付近に命中。
訓練室が静まり返る。
「……え?」
遼が画面を二度見した。
隼人も思わず目を丸くする。
「うそだろ……。」
リサ自身も結果を見て首をかしげる。
「えっ?」
「これって、いい方なの?」
遼は苦笑しながら肩を落とした。
「いい方どころじゃない。」
「俺たちより、ずっとうまい。」
隼人も笑いながら言う。
「『銃なんて触ったことない』って言ってた人の成績じゃないぞ。」
リサは困ったように笑う。
「本当に初めてなのよ。」
「なんで当たったのか、自分でも分からないわ。」
その天然な一言に、遼と隼人は顔を見合わせる。
「……天才って、こういう人のことを言うのかもしれないな。」
三人の笑い声が、静かな射撃場に響いた。




