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11話 戦闘そして 帰還

通信に遼の叫びが響く


「隼人!!」


その声で、隼人は我に返った。

しかし、遅かった。

敵ドローンのビームが《ファルコン》の右翼をかすめる。

激しい衝撃。


「くっ!」


機体が大きく回転する。

警報が鳴り響く。


《右翼損傷》


《姿勢制御装置、一部故障》


隼人はスラスターを吹かし、敵編隊から一旦離脱した。

その瞬間、通信が入る。


「隼人!」


アレックスだった。

いつもの冷静な声ではない。

焦りを隠せない。


「被弾状況を報告しろ!」


「怪我はないのか!」


通信の向こうは騒然としていた。

その中で、誰かの泣き声が聞こえる。


「ごめんなさい……!」


ひかりだった。


「死んじゃえなんて言って、ごめんなさい……!」


「ごめんなさい……!」


「お願いだから帰ってきてぇ……!」


子どものように声を上げて泣いている。

その声を聞いた瞬間。

隼人の胸の中で、何かが変わった。


「……そうだ。」


「俺がこんなんじゃ皆をまもれない。」


機体を落ち着いて確認する。

自動消火装置、正常。

燃料漏れなし。

推進系統、問題なし。

武装も残っている。

計器を一つひとつ確認していく。


「……まだいける。」


心の中で静かにつぶやく。

通信を開く。


「アレックス。」


「問題ありません。」


「これより戦闘を再開します。」


返事を待たず、隼人は操縦桿を押し込んだ。

《ファルコン》が一気に加速する。

さっきまでとは別人だった。


一機目。

敵の死角へ潜り込み、一撃で撃墜。


二機目。

急旋回からのビーム。


命中。


三機目。


四機目。


ドローンは隼人の動きについていけない。


「速すぎる!」


玲奈が思わず声を漏らす。


「これが……隼人の本当の実力。」


遼も息をのんだ。

無駄がない。

まるで宇宙そのものを滑るような操縦だった。

最後の一機を撃墜すると、隼人は減速しなかった。

そのまま敵要塞へ向かって一直線に加速する。


「隼人!」


アレックスが叫ぶ。


「戻れ!」


「命令だ!」


しかし返事はない。

巨大な要塞が目前まで迫る。

無数の砲台が一斉に火を噴く。

隼人は紙一重でかわしていく。


「何をする気だ……。」


誰もが息を止めた。

次の瞬間。

《ファルコン》は要塞中央の巨大な開口部へ飛び込んだ。

レーダーから機影が消える。


「隼人!」


玲奈が叫ぶ。


数秒後。

要塞内部から眩い閃光が漏れ出した。


そして――


轟音。


巨大な爆発。

四キロメートルの自動戦闘要塞は内部から崩壊し、無数の破片となって宇宙へ飛び散った。


静寂。


しかし。

隼人の機影はどこにもなかった。


「探せ!」


アレックスが命じる。


「全センサー最大!」


ノアも全力で捜索を開始する。


「索敵範囲拡大。」


「反応なし。」


誰も言葉を発しない。

ひかりはブリッジの隅で座り込み、泣き続けていた。


「ごめんなさい……。」


「ごめんなさい……。」


「私のせいだ……。」


アレックスは静かに目を閉じた。

その時だった。

スピーカーから聞き慣れた声が流れた。


「こちら隼人。」


ブリッジ中が歓喜に沸く。


「通信状態、回復。」


「今から帰還します。」


「敵要塞の内部格納庫を利用して退避していました。」


「少し遠回りになりました。」


一瞬の静寂。

次の瞬間、ブリッジ中が歓声に包まれた。


「隼人!」


「生きてた!」


「よかった!」


アレックスは思わず笑った。


「馬鹿者。」


「心配させるな。」


十分後。

傷だらけの《ファルコン》がゆっくりとアーク・ノヴァの格納庫へ着艦した。

キャノピーが開く。

隼人が降り立つと、乗員全員が駆け寄った。

真田は肩を叩き、玲奈は安堵のため息をつく。

遼は何も言わず笑顔で迎えた。

そして最後に。

ひかりが涙でぐしゃぐしゃの顔のまま走ってくる。


「ばかぁーーー!」


隼人の胸を何度も叩く。


「死んじゃったかと思ったじゃない!」


「ヴワーーーー!」


「ウワワワワー!」


泣きながら何か聞き取れない言葉を叫んでいる


隼人は苦笑しながら、その頭をそっとなでた。


「俺も悪かった。」


「もう心配させない。」


ひかりは大きくうなずき、さらに大声で泣いた。

格納庫には笑い声と涙が入り混じっていた。

人類初の恒星間航海。

その最初の戦いは終わった。

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