第2部1 斜陽の馬車、あるいは審判への序奏③
夜、パチパチとはぜる焚き火の前で、カシウスは重い沈黙に沈んでいた。何かを深く考え込むように、目を瞑り座るその姿は、周囲の闇よりも深く、濃い。
サロメをようやく寝かしつけたミリアムとナタンは、意を決してその前に立った。揺らめく炎が、三人の影を背後の天幕に大きく、不気味に映し出している。
気配を察したカシウスが、閉じていた片目をゆっくりと開け、二人を射抜くように見つめた。その眼光は、もはや家族に向けるものではなく、立ちはだかる敵を値踏みする修羅のそれだった。
「兄様。……勝負をしよう。もし僕が勝ったら、僕の言うことを一つだけ、なんでも聞いて」
ナタンの声が、夜の静寂を震わせた。
それは、ミリアムとナタンが話し合い、悩み抜いた末に辿り着いた唯一の、そして最後の結論だった。
いまのカシウスには、どんな言葉も、どんな涙も届かない。彼の決意は、既にこの世のものではない場所――死という名の救済へ向かっている。ならば、彼が職人として決して無視できない「勝負」という土俵に引きずり出し、力ずくでその足を止めさせるしかないのだ。
無論、それは無謀極まる賭けだった。
文字通り、カシウスとナタンでは大人と子供、象と蟻ほどの差がある。まともにやり合って、ナタンが勝てる道理などどこにもない。
(……だからこそ、私が勝たせる)
ミリアムは背中で拳を固く握りしめた。
ナタンが勝てる勝負に、何とかして引き込むのだ。例えば、繊細な彫金技術の競い合いであれば、ナタンの指先の若さと、自分の「鑑定」という参謀の知恵を合わせれば、付け入る隙はあるはずだ。ミリアムは既に頭の中で、カシウスの癖や、現在の極度の疲労度を計算し始めていた。自分がナタンの「目」となり、勝利への道筋を針の穴を通すような精密さで指示する。それでカシウスを止められるなら、どんな卑怯な真似だって厭わない。
ミリアムの瞳は、必死の決意に燃えていた。
しかし――。
「……いいだろう」
その一言は、夜の冷気よりも鋭く響いた。カシウスは重い腰を上げると、そのまま迷いのない足取りで工房へと向かう。
*
戻ってきたカシウスの手には、二振りの剣があった。彼は無造作にその一本を、ナタンの足元へと投げつけた。
硬い地面に金属がぶつかり、火花が散る。夜の静寂を切り裂くその鈍い音は、二人を繋いでいた「兄弟」という絆が、今は「敵対者」のそれに変わったことを告げていた。
「拾え。望み通り勝負してやる。……彫金師の意地だの、口先の理屈だのはもういい。男同士の勝負だ、これ以外にあるまい?」
ミリアムは息を呑んだ。
全身から血の気が引いていくのが分かった。細工の技術や知識の競い合いに持ち込めると思っていた自分の浅はかさを、心の底から呪った。
カシウスが持ち出したのは、言葉を介さぬ暴力の鉄槌。これではただの殺し合いではないか。
(止めなきゃ。今すぐ、一刻も早く止めなきゃ……!)
ミリアムが悲鳴に近い声を上げようとした、その時だ。
彼女の横で、ナタンが動いた。
震える膝を叩き、地面の剣へと手を伸ばす。その動作は、まるですべての光を吸い込む深淵のように、奇妙なほど迷いがなかった。
「……わかったよ、兄様」
「ナタン!?」
ミリアムは絶叫した。
体格も、積み上げた戦いの経験も、何もかもが違いすぎる。一族最強の戦士と、まだ道具の重さに慣れたばかりの少年。鑑定するまでもない、絶望的な格差。もしナタンがここで再起不能の怪我を負えば、自分はどうすればいいというのか。
取り乱すミリアムを、カシウスは冷徹な一瞥で射抜いた。その瞳の奥には、愛する妹を絶望させる自分自身への、どす黒い憎悪が渦巻いている。
「心配するな。刃は引いてある」
だが、たとえ刃がなかろうと、それはずっしりと手に応える冷徹な鉄の質量だ。一族最強の男が全体重を乗せて振るえば、打ちどころが悪ければ一撃で命を奪う。
鑑定士としての冷静な目は完全に曇り、ミリアムはただただ、視界が滲むほどの恐怖の中で狼狽えることしかできなかった。
その妹の無様な姿を、カシウスはわざとらしく鼻で笑った。
「どうする、ナタン? 姉様はお前が勝つなんて微塵も思っていないようだぞ。無理もない。お前はただの子供だ。……俺だって、大事な弟の骨が砕ける音は聞きたくない」
カシウスは手に持った剣の重みを確かめるように、空を鋭く凪いだ。
「ナタン、お前は約束したはずだ。ミリアムを必ず守ると。……思い違いをするな、お前の役割は、今ここでミリアムと共に去ることだ。分かったら、とっとと剣を置いて部屋へ戻れ」
カシウスの声は、ナタンを突き放そうとすればするほど、鋭い棘となって自分自身を刺していた。自分を止めようとする弟の健気さが、かえって彼の「使命」という名の傷口を深く抉る。
だが、ナタンは剣を離さなかった。
それどころか、白くなるほど強く柄を握り直し、ゆっくりと、深く、重心を落とした。
その構えを見た瞬間、カシウスの顔が苦悶に歪んだ。弟が自分を越えるために、命を懸けて踏みとどまろうとしている。その事実が、カシウスの心を狂おしいほどに逆撫でする。
「……馬鹿が」
「ナタン、もういいの! やめて、お願いだから!」
ミリアムの悲鳴が夜気を裂く。
だが、その制止が届くよりも早く、カシウスが地を蹴った。
「ならば、その慢心ごと叩き折ってやるッ!」
巨体が風を巻き起こし、眼前に迫る。
刃が引いてあるとはいえ、その一撃は岩をも粉砕する暴風。ミリアムの鑑定士としての眼が、ナタンの頭蓋が砕け散る最悪の結末を映し出した。
「嫌ぁぁぁぁっ!!」
ミリアムは思わず目を逸らし、固く瞑った。
――キィィィィンッ!!
夜の庭に、耳を刺すような高い金属音が、いつまでも長く響き渡る。
……静寂。
ミリアムが恐る恐る目を開けると、そこには月明かりの下、信じがたい光景が静止画のように張り付いていた。
カシウスの剛剣が、何もない空間を虚しく切っていた。
ナタンは、カシウスが踏み込んだその刹那、あえて死地――鋼の暴風が最も荒れ狂うカシウスの懐の「最内懐」へと、影のように滑り込んでいたのだ。
月光を反射する鈍い銀色が、カシウスの喉元でぴたりと止まっている。
一族の長であり、最強の戦士であるカシウスが、一歩も動けずに立ち尽くしていた。
「……あ、あ……」
ミリアムは声も出なかった。今、何が起きたのか。力(剛)の化身であるカシウスが、子供のナタンに、一瞬で「詰み」を取られたのだ。
「……兄様、いつも言ってるだろ?」
ナタンの声は、ひどく掠れていた。
彼は喉元に突きつけた剣を、カシウスの肌を傷つけないように慎重に、そして静かに下ろす。
「『重心を二歩深く』。……兄様が教えてくれた通りに、しただけさ」
*
張り詰めていた糸が唐突に切れたように、彼はその場へへなへなと崩れ落ちる。剣が手から滑り落ち、乾いた音を立てた。
ミリアムは駆け寄り、ナタンの体を抱きしめた。
「ナタン! 無茶よ、無茶すぎるわ……!」
ナタンはミリアムの腕の中で、安堵したように弱々しく笑った。
カシウスは、喉元を打った衝撃の余韻を噛み締めるように、立ち尽くしていた。月明かりの下、最強の職人であり戦士であった男の肩が、微かに、初めて敗北の重みに揺れる。
「……慢心していたのは、俺のほうか」
その呟きは、夜の風に溶けて消えた。カシウスはゆっくりとナタンに向き直る。その瞳からは、先ほどまでの荒れ狂うような殺意は消え、代わりに、自分を超えてみせた「一人の男」に対する静かな敬意が宿っていた。
「言え、ナタン。お前の願いは何だ?」
カシウスの問いかけは重く、そして真剣だった。もう子供をあやすような色はどこにもない。
ナタンは、ミリアムの腕の中で震える呼吸を整えると、泥のついた顔を上げた。その瞳には、カシウスを打ち負かした時の鋭さはもうなく、ただただ純粋で、痛々しいほどの願いだけが光っていた。
「兄様、もうひとりで抱え込まないで」
ナタンの声は、夜の静寂に染み渡るように優しく、けれど抗いがたい響きを持っていた。
「一族のこと、姉様のこと、僕らのこと。全部、全部、ひとりで抱え込まないで……」
ナタンは地面に膝をついたまま、カシウスの顔をしっかりと見据えた。その瞳には、先ほどまでの勝負で見せた鋭利な光ではなく、相手の心の傷を包み込むような深い慈愛が宿っていた。
「兄様のその重荷、半分は僕が背負うよ。……だから、もうそんな苦しそうな顔をしないで」
その瞬間、カシウスの体が大きく揺れた。
ハッとしたように目を見開き、無意識に握りしめていた剣を、抗う力もなく地面に落とした。乾いた土の上に金属が落ちる音が、彼の張り詰めていた心の枷が外れた合図のように聞こえた。
カシウスにとって、それは鏡を突きつけられたような衝撃だった。自分一人で死ぬ覚悟を決めることで家族を守ろうとしていた独りよがりな傲慢さを、弟の無垢な一言が、鮮やかに暴いてみせたのだ。
ナタンは、震えるカシウスの沈黙を待たずに言葉を続けた。
「ゲッセマネへは、みんなで行こう。……僕たちは、家族なんだから」
家族。その言葉が、凍りついていたカシウスの心を溶かしていく。
カシウスは、崩れ落ちる弱さを必死にこらえるように、ただ二人から顔を背けた。背中を向けたまま、溢れそうになる感情を抑え、ぶっきらぼうに一言だけ絞り出す。
「……好きにしろ」
短く、突き放すような言葉だった。
けれど、焚き火の赤い余韻に染まるその背中は、先ほどまでの死神のような冷徹さは消え、どこか安堵したような、優しげな揺らぎを帯びていた。
* * *
約束の十日が過ぎた時、彼らの前に現れたのは、見たこともないほど豪奢な馬車だった。白銀の装飾が施されたその車体は、荒野の埃さえも撥ね退けるような異彩を放っている。
「見て! 兄様、姉様! まるで雲の上に浮いてるみたい!」
サロメが我先に乗り込み、無邪気にはしゃぐ。
彼女をこの危険な旅に連れて行くべきか、カシウスとミリアムは最後まで葛藤した。だが、ナタンの「僕のいないところでサロメに何かあれば、一生悔やみきれない。僕が守るから、連れて行こう」という一言が、二人の目を覚まさせた。
相手はあのユダだ。自分たちが不在の隙を突き、残された幼い妹を人質にする可能性すらある。ならば、自分たちの目の届く場所、ナタンの「守備範囲」に置くことこそが、最も過酷で、かつ最も安全な選択だった。
*
ゲッセマネ。ヘブライ語で「油の搾り場」を語源とするその地は、聖都エルサレムの東端、ケドロンの谷を挟んでオリーブ山の麓に位置している。古くからオリーブの原生林が広がり、その実を粉々に押し潰して聖なる油を抽出するための、巨大な石造りの圧搾機が点在する場所だ。
北のガリラヤに住まうミリアムたちにとって、そこへの道程は、文字通り魂を削るような長い坂道だった。ヨルダン川の深い渓谷を縫うように南下し、海抜マイナスの熱気に身を焼かれながら、そこから標高差一千メートルを超えるエルサレムの急峻な山道へと挑まなければならない。
馬車の車輪が乾いた轍に跳ね、腹に響くような重低音を鳴らし続けている。
窓の外には、剥き出しの岩肌と、乾燥しきった赤土の荒野が果てしなく横たわっていた。高度を上げるにつれ空気は薄く、刺すように冷たくなっていく。なだらかな丘の稜線をなぞるように進む車体は、いまや死の香りが漂うユダの居城へと、抗いがたい力で吸い込まれていくようだった。
馬車の旅が始まって数日。沈黙を破ったのはカシウスだった。
「ナタン、勝負をしよう」
あの日、工房でナタンに敗北した日を境に、カシウスからはすっかり憑き物が落ちていた。何があったのか、彼は一言も口にはしなかったが、その佇まいはかつてのように重厚で、優しく、そして威厳に満ちた「一族の長」そのものへと戻っていた。張り詰めていた殺気は影を潜め、代わりに深淵のような静謐さが彼を包み込んでいる。
ルールは単純だった。ナタンが一本でもカシウスに攻撃を入れられればナタンの勝ち。ナタンが「参った」と言えばカシウスの勝ち。
「唐突にどうしたのよ」と呆れるミリアムに、カシウスは「ただの余興だ」と短く返した。
「全く兄様ったら。そんなにあの時ナタンに負けたのが悔しかったの?」
ミリアムのからかうような言葉に、カシウスは不敵に笑った。
「ああ。俺にだって、兄としての、そして師としての意地がある」
その挑発を、ナタンは真っ向から受け止める。
「いいよ、やろう」
狭い馬車の中で、二人の視線が火花を散らす。
刹那、ナタンの体が弾かれたように動いた。制約の多い車内という空間を突き破る、最短距離の直突き。空気を切り裂くような鋭い拳が、腹へと肉薄する。
しかし、その拳がカシウスの肌に触れることはなかった。閉じられていたはずのカシウスの右手が、まるで視覚を必要とせぬ異能の速さでナタンの手首を空中で捕らえたのだ。次の瞬間、逃げ場のない力でその関節をねじり上げる。
「……どうだ、降参しないのか?」
「……まだまだ!」
ナタンは顔を歪めながらも首を振る。カシウスはさらに腕を絞り上げるように力を込めたが、ふと、その表情を和らげた。
「……本当にお前というやつは……」
どこか愛おしげな呟きだった。
氷のような眼光が溶け、そこには隠しきれない情愛が滲み出す。鉄の規律が解かれるように指先の力が抜けた、その一瞬。
ナタンは獣のような身のこなしで腕を引き抜いた。大きく肩を上下させ、荒い息を吐きながら、感覚の麻痺した右腕を強くさすって言い放つ。
「……はぁ、はぁ……。まだ、僕は『参った』なんて言ってないよ。勝負はここからだ。負けたわけじゃないからね」
強がりを吐くナタンを、カシウスは鼻で笑い、心底呆れたように首を振った。
「強情な男だ。本当に、誰に似たのやら」
その低い声には、自分を追い越し、対等な域へと手を伸ばそうとする若き弟子――いや、一人の「男」への、深く揺るぎない敬意と信頼が宿っていた。
これ以上のやり取りは危険だと直感し、ミリアムはその隙を見て、二人の間に割って入った。
狭い車内、無理やり割り込んだ彼女の肩が、まだ熱を帯びたナタンの胸板と、岩のように動じないカシウスの膝にそれぞれ触れる。ミリアムはまず、不敵な笑みを浮かべたままのカシウスを、射抜くような視線で睨みつけた。
「はい、そこまでよ。全く兄様ったら、これで気が済んだでしょ?」
吐き捨てるように言うと、彼女はすぐに、荒い呼吸を繰り返すナタンの方へと向き直る。
痛々しく赤くなった彼の右腕を、ミリアムは壊れ物に触れるような手つきでそっと引き寄せ、感覚を確かめるように掌で包み込んだ。彼女の瞳には、鑑定士としての冷徹な光ではなく、一人の姉としての、あるいは恋する乙女としての切実な憂いが滲んでいた。
「ナタン、あなたもあなたよ。こんなことで怪我をしたらどうするの? あんまり私を心配させないで」
その声は、震えるナタンの指先をなだめるように、低く、けれど確かな温もりを伴って馬車の中に響いた、その時だった。
運悪く車輪が突き出した岩に乗り上げ、豪華な車体が大きく傾いだ。慣性に抗えず、ナタンの細い体が座席から投げ出されそうになる。だが、彼は反射的に自分よりも隣のミリアムを優先し、その小さな体を自らの胸へと強く抱き寄せた。
宙に浮く寸前、視界が歪んだ刹那。岩のように重厚な腕が、二人をまとめて座席へと力強く引き戻した。
「おっと。……まだまだだな、ナタン」
カシウスだった。彼は二人を羽毛でも扱うかのような危なげない動作で固定し、ずれた座面を直した。
「だが、今の反応は悪くない。あと重心から二歩、踏み込みが深ければな……だろ?」
ニヤリと笑うカシウスに、ナタンもふっと表情を崩した。
「……やっぱり、兄様には敵わないや。参った、僕の負けだよ」
カシウスの表情からは焦燥が消え、厳格な師としての顔が戻っている。だが、それだけではない。カシウスは今、ナタンを単なる「守るべき弟」ではなく、自らの背中を預けられる一人の「相棒」として見ているのだ。二人の間に流れる、言葉を介さずとも響き合うような深い信頼の連鎖。
ふと、ミリアムは思う。
(もしかしたら、今の二人の姿は……かつての、師と弟子の姿なのかしら)
かつて、カシウスにも師がいた。今となっては口にするのも忌まわしい、けれど彼の骨格を造り上げた「ユダ」という男。
ユダがかつて若き日のカシウスに与えたであろう「職人としての誇り」を、カシウスは今、ナタンへと受け継ごうとしている。憎しみと共に歪んでしまった愛を、ナタンという清烈な存在を通して、本来あるべき「正しき形」へと打ち直そうとしている。それは、カシウスなりの壮絶な贖罪のようにも見えた。
車窓の外、丘の頂からはヨルダン川の下流が望めた。陽光を砕いて散りばめたような銀の輝きを放つ水面に、サロメが身を乗り出す。
「見て、兄様、姉様! 水面が光ってる! まるで銀の砂を撒いたみたい!」
その声に誘われ、ミリアムは愛おしさを込めて、ナタンの隣へそっと肩を寄せた。
「見て、ヨルダン川だよ。ヨカナン様、あそこにいるのかな?」
ナタンが指さす先、銀色の帯のように光る水面。そこはすべての始まりの地であり、聖なる洗礼者が「火と霊による洗礼」を告げた静寂の地だ。
「ええ、きっといらっしゃるわ」
ミリアムは微笑み、膝の上に置いた銀の籠をぎゅっと握りしめた。指先に伝わる金属の冷たさと、あの日ヨカナンと交わした約束の重み。
(行ってきます、ヨカナン様。私たちの『答え』を見つけるために)
ヨカナンが見守っているという確信だけが、これから地獄へ足を踏み入れる彼女の心に、唯一の清涼な風を送っていた。
馬車は、どこまでも続く丘の坂を、一段、また一段と踏みしめるように登っていく。
まるで地上を離れ、神の審判が待つ空へと向かっているかのように。
はるか遠く、逆光の中にそびえ立つ「ゲッセマネの館」。巨大な門が、四人の影を飲み込もうと、音もなくその口を静かに開け放っていた。
表紙イラストをpixivに掲載しています。
朗読版はyoutubeにあります。
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【60万字完結済】水・金 21時更新。一旦、前編30万字分を公開予定。以降の公開継続は、皆様の反響次第で検討します。
※初回3話公開。最初の1週間は毎日更新の予定。
※本作はAIを執筆補助に使用していますが、プロットおよびキャラクター設定はすべて作者によるものです。




