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仮定世界のログキーパー -仮定世界創造神録ー  作者: 田園風景
魔法末期時代 (神域残響52)
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4-23.墜落する死闘

  極杖アーク・マギスセプターを手にしたゼルファウスが、瓦礫の隙間を縫うように飛翔する。

 地上へと落ちていく瓦礫を蹴り、そこへ追い縋るのは――魔斬剣ミストルヴァンと無名の魔剣を両手に持つエルデだった。


「火の矢よ――行け!」


  火の鳥のように優雅な炎の矢が、エルデへ向けて放たれる。

 その威力は尋常ではなく、近づくだけで周囲の瓦礫が燃え始めていた。


 しかしエルデは、剣を一振りするだけでそれを掻き消す。


 炎の力を刃に吸収し、その勢いのままゼルファウスへと肉薄した。


「食らえ!」


  空間そのものを削り取るかのような一閃。

 だがその攻撃は、いつの間にかゼルファウスの手に握られていた赤い剣によって受け止められていた。


「魔法の剣か?」

「魔法は、お前のその剣の前では大小関係なく無力のようだな。だが――魔法で創造された物には通用するらしい」


  ゼルファウスは一度距離を取り、魔法を放ちながら突進する。

 エルデが魔法を掻き消す瞬間――その隙を突き、ゼルファウスの剣が振るわれた。


「ぐわっ!」


  エルデは辛うじて剣で受け止めたが、その衝撃で吹き飛ばされ、瓦礫へ激突する。

 その隙に、新たな魔法が発動した。


「いでよ――叫ぶ者ども!」


  ゼルファウスの周囲に、呪文が刻まれた無数の顔が浮かび上がる。

 歪んだ口が次々と開き、それぞれが別々の呪文を紡ぎ始めた。


「エナジーボルト」

「ウィンドカッター」

「フレアレイ」


  多様な魔法が嵐となってエルデへ殺到する。

 もはや逃げ場はない。


 周囲の瓦礫が粉砕され、熱風が吹き荒れ、連鎖的に爆発が起こった。

 ゼルファウスはマントで熱風を防ぎながら、その様子を見守る。


 ――その時。


 爆炎の中心から影が飛び出した。

 影は宙を舞いながら、空間に浮かんでいた顔を二つ、三つと切り裂き、そのままゼルファウスへと迫る。


「エルデ!」

「ゼルファウス!」


  二刀が光の尾を引きながら走る。

 まるで生き物のように激しくうねり、ゼルファウスへ襲い掛かった。


 剣と剣が激しくぶつかり合う。


 もはやゼルファウスに、先ほどまでの余裕はなかった。


「くっ!」


  ゼルファウスの肩と足が切り裂かれ、血が飛び散る。

 エルデが次の瓦礫へ飛び移ろうとした瞬間、ゼルファウスは魔法を放った。


「いでよ――創世の石柱よ」


  空間から巨大な石柱が何本も出現する。

 さらに残っていた顔たちが呪文を唱え、エルデへ向けて攻撃魔法を降らせた。


「食らえ!」


  風を巻き込みながら、巨大な石柱がエルデへ向かって落下する。

 エルデは驚異的な身体能力で魔法の嵐を切り払い、さらに落下してきた石柱の一本へと飛び乗った。


「おおお!」


  エルデは走る。

 無尽蔵に飛来する魔法を消し飛ばしながら、上空から見下ろすゼルファウスへ向かって一直線に駆けた。


「ぐはっ!」


  だが、捌ききれなかった石柱がエルデの腹を貫いた。

 石柱は魔法で生成された物質。

 剣でも消し去ることはできない。


 苦痛に歪む顔へ、さらに追撃の魔法が降り注ぐ。

 爆発が起こり、エルデの姿は炎に包まれた。


 それでも――


 エルデは爆炎を無理やり突き抜けた。


 満身創痍の身体。

 体力はすでに限界を超えている。


 それでもエルデは走り、エルデは跳躍する。

 眼下に、ゼルファウスを捉えていた。


 もはや小細工はない。

 ただ二刀を、全力で振り下ろす。


 ゼルファウスは剣で受け止めた。

 しかし、その勢いを止めることはできない。

 二人は半ば縺れ合うようにして、地上へと落下していった。


 ――そして終着点。


 地上街の広場へ、瓦礫と共に叩きつけられる。

 人々の悲鳴と叫び声が響き渡り、周囲の建物が次々と崩壊する。

 壮絶な破壊音と煙の中で――二人は立ち上がった。


 互いに限界の身体。

 血を流し、破れた衣服が風に揺れている。


「これで決着だ……」


  ゼルファウスが静かに言った。


「お前が勝てば世界は改革へと流れる。

 だが、私が勝てば――今後すべての反乱の芽は潰え、未来永劫この世界は変わらない」


  エルデは最後の力を振り絞り、剣を構える。


 あと――一撃。


 二人とも理解していた。

 この最後の一撃こそが、

 この世界の未来を決めるのだと。

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