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仮定世界のログキーパー -仮定世界創造神録ー  作者: 田園風景
魔法末期時代 (神域残響52)
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4-22.極杖アーク・マギスセプター

  ゼルファウスの錫杖と、ダーリオンの剣が交錯する。

 剣に秘められた魔力が錫杖を激しく削るが、錫杖もまた、ただの魔法媒介ではない。

 それぞれに秘められた力が拮抗し、激しい火花を散らしていた。


「ゼルファウス……お前との関りも長いが、こうして直接話したのは初めてかもな」

「貴様……ふ、そうだな。お前は私の前にこれ程長く立ち続けてきた男だ」


  互いに汗を流しながらも、わずかに口角が上がる。

 だが次の瞬間、ゼルファウスは突然腰を落とし、ダーリオンの腹へ強烈な蹴りを叩き込んだ。


「だが、退場の時だ……む!」


  蹴りを受けても吹き飛ばされることなく、ダーリオンは踏み止まる。

 苦悶の表情が浮かび、口元から血が零れた。


「お前に何度も立ち向かってきた……勝ったことは一度もない。今まで、負け続けてきたな……」


  ダーリオンの剣に、さらに力が籠る。

 ゼルファウスを鋭く睨みつけ、その顔には微かな笑みが浮かんでいた。


「これが……初めての勝ちだ!」


  全力を込めた一閃。

 ゼルファウスは錫杖で受け止めようとするが、込められた魔力ごと、錫杖は両断された。


 ダーリオンは、そのまま逃れるように後退し、崩れるように倒れ込む。

 もともと万全とは言えない体調で、戦える状態ではなかった。

 それでも、その全力の一撃はゼルファウスの魔法防御を突破し、錫杖を完全に破壊していた。


「何……!」


  狼狽しながらも、ゼルファウスは意味を失った錫杖を捨てる。

 その瞬間、飛び込んできたのはエルデだった。

 魔斬剣ミストルヴァンを構えている。


「覚悟!」

「甘い……衝波!」


  ゼルファウスは指輪を発動媒体とし、迎撃の衝撃波を放つ。

 エルデは剣で魔法を切り裂くが、膨張した空気圧に足を止められた。


 さらに魔法を放とうとしたゼルファウスは、突如身を翻す。

 剣が、間一髪で通り過ぎた。


「エルデ!」


  投げたのはダーリオンだった。

 放たれた剣を、エルデが確かに受け止める。


 魔法を切り裂き、力へと変える魔斬剣ミストルヴァン。

 無名のマジックアイテムであるダーリオンの愛剣。

 その二振りは互いに共鳴し合い、膨大な魔力を放っていた。


「後は頼むぞ……行け!」

「はい!」


  ダーリオンの声を背に、エルデは二刀を構えて駆け出す。

 体勢を立て直したゼルファウスは、雨のような魔法弾を放った。


 エルデは剣を振るい、次々と掻き消し、弾き飛ばす。

 ゼルファウスも持てるすべての魔力を解放し、攻撃魔法を放ち続けた。


 圧倒的な魔法の嵐。

 一見、状況は拮抗しているように見える。

 ――だが、じわじわとエルデが押し始めていた。


 押されていることを悟ったゼルファウスは、極限まで焦りを募らせる。

 生まれて初めてかもしれないその感情に、思考が揺らぐ。


 このままでは、負ける――。

 視界の端に、投げ捨てた王笏が映った。


「覚悟!」


  ゼルファウスの目前まで迫ったエルデが、二刀を掲げる。

 しかし次の瞬間、濃厚な煙がゼルファウスの姿を覆った。


 構わず剣を振るうエルデ。

 魔法で生み出された煙は瞬時に消え失せたが、ゼルファウスはすでに後方へ退いていた。


 その手には、王笏が握られている。


「極杖アーク・マギスセプター……観測者の思惑通りとなるのは癪に障るが、仕方あるまい」


  魔力が、肉眼で確認できるほどに立ち上る。

 その異常な光景に、エルデは警戒を強め、二刀を構え直した。


 倒れたダーリオンを支え、避難しているルミリアから見ても、それは異常としか言えない状態だった。

 近づくだけで身を削られそうな、魔力の嵐。


 睨み合うゼルファウスとエルデ。

 溢れる魔力と、それを打ち消す力が衝突し、二人の間を稲光が走る。


 ――小さな爆発が起こった。


「おおお!」

「はぁぁ!」


  それを合図に、二人は同時に駆け出す。


 直後、凄まじい大爆発。

 部屋どころか王城の一部が砕け、地上へと落下していく。

 落ち行く瓦礫の中で、爆音と剣撃が幾重にも響いた。


 ゼルファウスは膨大な魔力で創り出したマントを羽織り、空へと飛翔する。

 エルデは瓦礫を踏み台に、強化された身体能力で跳躍し、追い縋った。


「さあ……ここが歴史の節目だ。真の決着といこうか」


  ゼルファウスの周囲に無数の魔方陣が展開され、強化された攻撃魔法が、エルデへと一斉に放たれた。

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