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仮定世界のログキーパー -仮定世界創造神録ー  作者: 田園風景
魔法末期時代 (神域残響52)
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4-21.魔斬剣ミストルヴァン

「ま、まさか……いや、違う?」


 エルデは一瞬、その声をワタルだと思った。

 だがすぐに否定する。声質も響きも違う。あのどこか飄々とした調子ではない。


(なぜ、そう思った……?)


 疑問を掘り下げるより早く、声は再び響いた。


「貴方の意志は、これからの時代の導となるでしょう。故に貴方に力を授けます」


  凍りついた世界の中で、使いは両手を広げた。


 砕け散った対魔法盾アンラージの破片が、強烈な光を放つ。

 光は粒となり、流星のようにエルデの右手へと吸い込まれていく。


「魔斬剣ミストルヴァン……使い方は解るはずです。その力で未来を勝ち取るかは……貴方次第です」


  わずかな間。


「――健闘を祈ります」


  声が途切れた瞬間、時間が動き出した。


 エルデは大きく息を吸い、手に宿った剣を見る。


 鉄やミスリルにも似ているようで、僅かに違う。

 神話に聞く初代勇者が所持していたという神剣に準じる剣。

 初めて持つのに、この剣の特性を、エルデは既に理解出来ていた。


「これなら……!」


  顔を上げ、ゼルファウスを見る。

 いつの間にか、その手に持つ錫杖の形が変わっていた。

 その錫杖……というより王笏をゼルファウスは変わらない冷めた目で見つめていた。

 そしてくだらないとばかりに王笏を投げ捨て、新たな錫杖を取り出した。


「その剣……お前にも現れたのだな。観測者が」

「観測者……?」

「歴史には語られていない。だが、確実に存在する存在。時の節目に要人の前に現れ、運命を変える武具を授ける何者か」


  エルデは各地様々な所を旅し、その歴史を聞いてきた。

 歴史の転換点となる時を思い返すと、それまで後の象徴となる武具がいきなり登場している。

 全て、先程現れた……声だけだったが、天の使いが与えたということなのだろうか?


「つまりは……この場が時の節目という事なのだろう。私が勝つかお前が勝つか……この勝敗で歴史の流れが決まるのだ!」


  ゼルファウスは錫杖を振るい、無数の攻撃魔法を放つ。

 盾は無くなったが、今のエルデの手には新たな剣がある。

 この剣の効果は……対魔法盾アンラージと同じく魔法の消去。


 エルデが剣を二、三振るうと、攻撃魔法が全て消え去っていた。

 代わりに魔斬剣ミストルヴァンの刃に光が宿る。


「行くぞ!」


  一瞬でエルデの姿がかき消えた。

 ゼルファウスの見引かれる。


ギィィン!


 寸前で剣が交差する。

 ゼルファウスの反応が間に合わない程の強化。


「貴様……!」


  先程とは明らかに違う速度。

 強化の質が段違いだ。


「どうだ!」


  ゼルファウスが飛び退き、再び魔法を放つ。


「冷厳なる波動、彼の者を抱け――フロスト・ウェイブ!」


  煌めく突風がエルデを包み込む。

 風に触れた服が、急速に凍りついた。

 しかし、エルデが剣で払うと魔法の風は急速に消え去った。

 そして刃は更に輝く。


「うぉぉぉ!」


  一瞬の内に間合いを詰め、剣を振るう。

 ゼルファウスは魔法で剣を加速し、打ち合う。

 押されていたのは……ゼルファウスだった。

 捌き損ねたエルデの切っ先が、衣服を切り裂く。

 ここに来て、初めてゼルファウスに明確な焦りが生まれていた。


「馬鹿な……この私が!」


  一瞬の隙にゼルファウスが腕を振るうと周囲が爆ぜる。


「魔法は……何!」


  爆発を切り裂いたエルデの体制が大きくグラつく。

 爆発により床に砕け、それに足を取られた。

 体制を崩したのは一瞬。だが、ゼルファウスにはその一瞬で事足りた。


「世界よ、砕けろ――ボム・ブリッド!」


  瞬時に巻き起こる爆発の嵐に、エルデは吹き飛んだ。

 追加の魔法がエルデを追いかけ、殺到する。


「アーク・エテルナ・ワーズ――万象の理よ、我が手に集え。マギア=レイ!」


  錫杖を持つ手から凄まじい魔力の波動が解放された。

 エルデは剣で受け止める。

 しかし、消しても消しても殺到する波動に、身動き出来なくない。


 ゼルファウスは波動を放ちながら、更なる魔法の準備をする。


 その時、扉の一つが解き放たれた。

 そこに居たのは男女の二人。


「ゼルファウス様!」


  女性はルミリアだった。

 そして男はダーリオン。その手には愛剣が握られていた。

 素早く駆け、ゼルファウス目掛け、流れるように振りかぶり……振り下ろす!


 ゼルファウスはそれを剣で受け止める……が、剣が斬り飛ばされる。

 そのまま振り下ろされるダーリオンの剣。しかし今度は錫杖で受け止める。


「ゼルファウス!」

「ダーリオンか。その体で良く動くものだな」


 二人の視線が交錯する。


 そこにあったのは、単なる敵意ではない。

 長い歴史を共有してきた者同士の、決別の眼差しだった。

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