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仮定世界のログキーパー -仮定世界創造神録ー  作者: 田園風景
魔法末期時代 (神域残響52)
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4-18.暗部法隊

  ジェルドは魔法が使えない。

 しかし、その実力はエルデに迫るものであった。


 容赦なく放たれる魔法の嵐を潜り抜け、一刀の下に正体不明の相手を斬り捨てる。


「こいつは!?」


  剣を構えて応じる敵もいたが、刃を合わせる暇すら与えられない。

 次々と倒れていく。


 しかし倒しても倒しても、入口から新たな者が流れ込んでくる。

 すでに十人以上倒したはずなのに、数が減る気配はない。


 剣の柄で敵の頭部を叩き伏せながら、ジェルドが叫ぶ。


「おいエルデ、手伝え! こいつ等何人居るんだよ!」

「ああ! 一緒にやるぞ!」


  エルデは炎火球を放つ。

 敵の陣形を崩すが、魔法に対しては強固な障壁が展開される。

 だが視界を遮った隙に剣で斬り込む。


 そこからは乱戦だった。

 ジェルドが前に出れば、エルデが背中を守る。

 エルデが詠唱すれば、ジェルドが間合いを切る。


 二人は互いの死角を埋め合いながら、異様な集団を圧倒していた。



「はあ……はあ……」

「本当に……どれだけいるんだよ……」


  床に転がり呻いているのは既に三十人を超えていた。

 それに対し、二人も満身創痍。

 だが出口を塞ぐ人数はまだ減らない。


 エルデが目の端で周囲を確認するが、逃げ道は一つも見当たらない。


「さて、どうするよ。試しに降伏してみるか?」

「こんな良くわからない奴らに掴まったら、何されるか分からんぞ」


  じりじりと窓際に追い詰められる。

 後方では倒れた敵が治療魔法で次々と回復していた。


(死者を出さない方針が……裏目に出てるな)


 ジェルドはちらりと窓の外を覗いた。

 高さの程は分からないが、少なくとも落ちれば助からないだろう。


「……エルデ、浮遊魔法の準備をしろ」

「だけどこんな見晴らしの良い所で浮かんでも、撃ち落とされるのがオチだろ」

「大丈夫だ、考えがある……いいか。外に出たら上に上がれ。手短な場所に突っ込むんだ」

「ああ、分かった」


  エルデが威嚇用の魔法を放ち、一瞬だが敵との距離を広げる。

 その隙にジェルドが力強く踏み込み、剣閃が走る。


 窓が派手な音を立てて吹き飛んだ。


「エルデ、飛べ!」


  エルデは窓外へ飛び出し浮遊魔法を展開する。

 ジェルドも続くと思い、手を伸ばす――だが、来ない。


「どうした、早く――」

「お前は行け! 俺はここでこいつらを抑える!」

「置いていけるか!」


  焦るエルデを逃すまいと、再び敵は襲い掛かってくる。

 しかし、ジェルドは剣を振るい留めた。


「さあ来い。ここで俺が相手してやる」


  正体不明の敵は完全にジェルドを取り囲んでいた。

 その後方、入口付近で誰かが報告している。


「注意! 神話級観測者が近づいてくるぞ」




  下の部屋でジェルドが戦っていた。

 次第に魔法攻撃が苛烈になり、その姿が薄らいでいく。


 エルデの胸が締め付けられる。


 目的を達成するのは大事だ。様々な犠牲をもって達成する価値がある。

 しかし、それは友を見捨ててでも達成すべき事だろうか?


「違う……!」


  例えそれによって革命を達成できたとしても、僕の心は一生晴れる事は無いだろう。

 ジェルドも救う!


 浮遊魔法をコントロールしようとした時、何度か聞いたことのある声がエルデの心に響いた。


(大丈夫、ジェルドは俺が助けるから)


  この街に来るまでに、何度か同じようなことがあった。

 その言葉は必ずその通りになっている。

 始めは疑っていたが、次第に信頼し、今ではその通りになると確信していた。


「ワタルさん……!」


  そう、ワタルだった。

 今でもどうやってやったのか分からない。

 だけど大丈夫だ。

 もっと危うい状況は、これまで何度も経験してきたのだから。


「ジェルドを頼みます!」


  浮遊魔法を上に向けた。

 ふらつく体制を安定させるためスピードを上げ、上層の窓に向けて振動破壊魔法放つ。

 意外にも窓は丈夫で破壊には至らない。

 そこに剣を投げ突き刺すと、窓に大きな亀裂が走った。


「おおおっ!」


  ヒビの入った窓に向かって体当たりをかました。

 派手な音を立てて窓は砕け散り、一緒に部屋へ入り込む。


 剣を宙で掴み、盾を構えながら辺りを確認する。

 広く立派な部屋。

 ここまでの部屋は上流貴族でもそうそう持てないだろう。

 持てるとすれば、そう……国王とか。


「暗部法隊を躱し、ここまで来るとはな……」


  部屋の奥にぽつり一人、背を向けて立っている男。

 その男が指を鳴らすと、部屋が明一杯に明るくなる。


「革命とは、いつの時代も若者の浪漫だ。だが浪漫は、王の前では必ず潰える」


  男が振り返った。


「ようこそ侵入者。私がお前達の目的である国王、ゼルファウス・ウェルザルトだ」

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