4-14.対魔法盾アンラージ
ルミリアの顔パスにより門から街に入った二人が状況確認の為に隠れ家に向かうが、その途中の中央広場に遭遇する。
「何だこれは……」
見て解る処刑場。
広場には、まだ乾ききっていない血の匂いが漂っていた。
石畳には焦げ跡や抉れた痕が残り、ここで何が起こったのかを雄弁に物語っている。
チラホラと見える魔法騎士が後片付けを行っていた。
牢屋らしき檻の中には誰も居ない。ただ、外され放置された腕輪が、誰かが捕まっていた匂いを漂わせていた。
「恐らくここに聞いていた仲間が捕まって晒されていたのでしょうね……どうなったのか分からないけど、終わったということかしら?」
「急いで戻りましょう。ダーリオンさんが心配です」
不安な気持ちを抱えながら、隠れ家となっている創造教教会へと駆け出した。
シスターへの挨拶もそこそこに、二人が隠れ家に入ると、レジスタンス達は慌ただしく動き回っていた。
偶々近くを通った一人をエルデは捕まえる
「すまない! 状況を教えてくれ。それとダーリオンは居るか?」
「誰かと思えばエルデか!」
聞き出した話によれば、処刑場に向かったダーリオンは、仲間を助ける為に戦ったらしい。
厳しい戦いとなったが、いよいよ貴族と魔法騎士達を追い詰めた時、冷血帝の遠距離魔法を受けて倒れてしまう。
魔法による傷は深く見えたが、応援に来た魔法騎士団がダーリオンを連れ去った事から考えると、まだ生きている可能性がある。
エルデの胸に、冷たいものが落ちた。
ダーリオンの姿が、遠くに引きずられていく光景が、ありありと脳裏に浮かぶ。
その光景を見て仲間に伝えたのは、捕まっていたレジスタンス達だった。
彼らはダーリオンに深く感謝しており、直ぐにでも助けに行かねばと、怪我もそのままに出ていこうとするのを抑えるのに苦労したらしい。
「もし連れ去られているのだとすれば、恐らく天空都市でしょうね。私が探りを入れてみましょう」
ルミリアの提案に、エルデは不安そうな表情を浮かべる。
「大丈夫ですか? ルミリアさんまで何かあったら……」
「大丈夫よ」
あっさりと返すルミリア。
「これでも上級貴族なのよ? 権力者側の顔パスぐらいは持ってるわ。それに魔法の実力も国内有数だと思ってる。何かあっても、力づくで抜け出してくるわよ。それよりも」
「どうしました?」
「今のレジスタンス達には指導者が居ません。貴方の仲間がいるから崩壊こそしていませんが、時間が経つほどに崩れてしまうでしょう。だから……」
ルミリアがエルデの肩を持つ。
「貴方がこのレジスタンスを纏めてください」
「俺が?」
「そうです。悩む時間はありませんよ。時間が経つほどに状況は厳しくなるのです。ダーリオンの復帰を待つ時間はありません」
エルデはルミリアの真剣な目を見た。
そこに、邪な感情は見えない。
エルデも判っている。
もしここで、レジスタンスが崩壊する事態となれば、恐らく魔法統治はずっと……全ての人が魔法を使えなくなるまで続くに違いない。
全ての人が使えなくなってからでは、人の世界は終わるだろう。
余裕のある今の内に、革命しなければならないのだ。
「分かりました……けど一つ条件があります」
「何?」
「ダーリオンさんが生きて戻ってきた時、僕がそのまま纏めるかダーリオンさんに返すか、又は別の人に託すか。話し合いをさせてください」
その言葉にルミリアは表情を和ませた。
「分かったわ。私達は革命を起こす。けど、そのまま世界を統治するとか、独善的なことにはしない。約束します」
「お願いします」
二人は互いに頷き、それぞれ別の方向に歩み始めた。
ルミリアはダーリオンが捕らえられているであろう天空都市へ。
エルデは、レジスタンス達を纏めるべく会議室へと。
「無事だったのね! 怪我とかしてない?」
「エルデ、戻ったか」
ミーリャとジェルドがエルデの元に駆け寄ってきた。
二人はダーリオン達が不在だった後、エルデの仲間を取りまとめ、レジスタンス達の訓練に励んでくれていたのだ。
それを思うと、二人には感謝の念を覚える。
「二人とも、こっちを任せっきりになってしまって済まなかったな。僕は無事だ」
エルデは二人の肩を叩いて感謝と無事を示す。
「それで早速で悪いんだけど。仲間とレジスタンスの皆を集めてくれないか? 皆に伝えたいことがあるんだ」
半日程経過してから、会議室には大勢の人で溢れかえっていた。
部屋に入りきらず、ドアを開けっぱなしにして、声を聴くだけの人も居る。
その中心に居るのはエルデ。
両脇にはミーリャとジェルドが固めている。
「皆さん! 不安の最中、集まっていただき有難うございました。私はエルデ・ランスパート! とある田舎町の出身で、魔法は使えますが貴族ではなく皆さんと同じ市民です!」
『魔法を使える』という点に少し動揺があったが、取りあえずは話を聞いてくれそうだ。
「既に聞いている事と思いましたが、状況は悪化しています。大切な仲間を助けることが出来ましたが、リーダーであるダーリオンが支配層に捕らえられてしまいました」
もっと動揺が走るかと思ったが、思ったより騒ぎにならない。
既に周知の事実だったのだろう。
しかし次の言葉には動揺が広がった。
「この大事な時に、私達がバラバラとなる訳には行きません! それで、私が、このレジスタンスを取りまとめる新たなリーダーになることを宣言します!」
どよめきと共に、様々な声が起こる。
「ダーリオンは承知しているのか?」「お前なんかで大丈夫なのか!」「お前に何が出来る?」
怒気こそ孕んでいないが、遠慮のない疑問の声がぶつけられた。
しかしエルデは怯まない。
エルデは一度、深く息を吸った。
ざわめきが収まるまで待ち、視線を一人一人に向ける。
「疑うなら構いません。ですが――結果で示します。ダーリオンとルミリア様と共に手に入れた、この対魔法盾アンラージで!」




