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仮定世界のログキーパー -仮定世界創造神録ー  作者: 田園風景
魔法末期時代 (神域残響52)
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4-13.希望の盾

「……これが、俺たちが求めていた魔道具……」


  エルデの足元に、盾が無造作に転がっていた。


「こんな無造作に転がっているなんてね……」


  ルミリアが呆れながら言った。

 初めそれらしい台座が無いか、隠し部屋が無いかばかり探していたのだが、

 探すのに邪魔だからと瓦礫と埃を退けると、そこに転がっていたのが目的の魔道具であった。


 エルデは、不審げに魔道具を持ってジロジロと眺める。


「僕がここにあると言っておいて何ですが……正直、信じがたいですね。本当に魔法に対抗できる盾なんでしょうか? 違っていたら取り返しがつきませんよ」

「そうね」


  ルミリアは少し考え、軽く頷いた。


「じゃあ、試しましょう。私に向けて構えてみて」

「え? こ、こうですか?」


  半信半疑のまま盾を構えるエルデ。


「≪エナジー・ボルト≫」

「うわっ!?」


  ルミリアが放った魔法弾が盾と衝突する。

 エルデは吹き飛ばされまいと、とっさに腰を落とた。

 しかし音も衝撃もなく、魔法は霞のように消え失せる。


「……これは……」

「それなりに魔力を込めた魔法だったのですが、……完全に相殺されましたわね」


  ルミリアは、はっきりとした確信を込めて言った。


「本物です」

「そうですね。これがあれば、かの冷血王にも……魔法の時代にも勝てるかもしれません」


  エルデがかざす盾は松明と魔法の光を反射し、淡く発光していた。

 スモールシールドより一回り大きく、刻まれた意匠は古く、しかし力強い。

 エルデは、確かな安心感を覚えた。


「目的の盾は手に入れました。急いで帰りましょう」

「そうですね、ダーリオンが心配です。皆さん、直ぐに撤収しますよ!」


  他を調査していたレジスタンス員の声を掛ける。

 手に持っていた物を慌てて放棄し、荷物を担ぐ。


 全員がいる事を確認して、洞窟の出口へと向かった。

 戻るその途中、エルデがルミリアに話しかける。


「何か、一気に街へ戻れる魔法とか無いのでしょうか?」

「一応、あるにはあるのですが……」

「それで行きましょう! 時間をかなり食ってしまっています」


  エルデ達が洞窟の外に出ると、すでに朝日が昇っていた。

 つまり、ダーリオンが先行してから既に一日経過してしまっている。

 ダーリオンがどれだけ急いだかにも寄るが、最速で考えれば既に処刑場へと着いている可能性もあった。


「かなり乱暴な手段ですよ」


  ルミリアは真剣な顔で言う。


「かなりのリスクが伴います。また、『飛ばせる』のは荷物を最小限にして二人まで。一人は私た飛ばないといけないので、実質一人だけね」

「では僕がこの盾を持って行きます。ワタルさん。僕の荷物をお願い出来ませんか?」

「わかりました。お預かりします」


  エルデはワタルに荷物を託す。

 これでエルデが持っているのは剣と盾だけだ。

 ワタルとレジスタンスの皆は遅れて帰る事になる。


 ルミリアも荷物をレジスタンスに託し、準備する。


「街の方角を確認します。私はこちらの方角と認識していますが、合っていますか?」

「? はい。こちらの方角です。あの遠くに見える山があそこに見えるので、間違いありません」

「皆さん、申し訳ありませんが後の事をお願いします。街に入るのに、私が居なくても大丈夫なのですね?」


  レジスタンス達に聞くと、秘密の出入り口があるらしい。

 大人数は通れないが、この人数なら問題無い。


「それでは行きますよ。しっかり私に掴まっていてください」

「は、はい」


  エルデはルミリアの腰に掴まるか、肩に掴まるか迷っているようだ。

 そんなエルデの手をとって、腰にぴったりと捕まらせる。


「では行きます……≪ウィンド・バースト≫」


  ルミリアが魔法を発動した次の瞬間、爆発的な突風と共に二人の姿を消していた。




「こ、こんな移動方法とは……!」

「手を絶対離さないでくださいね。助けに行くのは無理なので」


  エルデとルミリアの二人は、雲の上を飛んでいた。

 魔法障壁が風圧を遮るが、視界の全てが空という異常事態に、エルデは声を失う。


「こんな飛空魔法があるとは、長い旅の中でも聞いたことがありませんでした」


  現在、飛空魔法というのは高度な魔法とされており、使える者は極僅かだった。


「いえ、飛空魔法ではありません。これは私達を魔法障壁で包み、それを魔法で起こした突風で飛ばしているのです」

「なるほど……そういえば、これどうやって着陸するんですか?」


  エルデはルミリアの顔を見る。

 この顔は……ヤバい!?


「ちょ!本当にどうやって?」

「逆風で減速はします。その後は……祈りましょう」

「祈るって何ですか!!」


  二人は、ダーリオンが一日で踏破した距離を、僅か半日で街の近くの森まで到着することに成功した。

 ただ、着陸は木々への激突というクッションを挟んだ壮絶なものとなり、その派手な着陸の様子は、森の魔物を大量に引き寄せてしまい、その対処に更なる時間を要してしまった。

 とはいえ、エルデとルミリアは短時間で街の近くにまで来ることが出来た。

 後少し歩けば街に入ることが出来る。


「これ程とは……僕たちでも、下手したら死んでいましたね」

「だから言ったじゃない。乱暴な手段でリスクがあるって」

「だから、ダーリオンさんの時には使わなかったのですね……」


  衣服をボロボロにしながら、二人は地上街への帰り道へと急いだ。

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