4-13.希望の盾
「……これが、俺たちが求めていた魔道具……」
エルデの足元に、盾が無造作に転がっていた。
「こんな無造作に転がっているなんてね……」
ルミリアが呆れながら言った。
初めそれらしい台座が無いか、隠し部屋が無いかばかり探していたのだが、
探すのに邪魔だからと瓦礫と埃を退けると、そこに転がっていたのが目的の魔道具であった。
エルデは、不審げに魔道具を持ってジロジロと眺める。
「僕がここにあると言っておいて何ですが……正直、信じがたいですね。本当に魔法に対抗できる盾なんでしょうか? 違っていたら取り返しがつきませんよ」
「そうね」
ルミリアは少し考え、軽く頷いた。
「じゃあ、試しましょう。私に向けて構えてみて」
「え? こ、こうですか?」
半信半疑のまま盾を構えるエルデ。
「≪エナジー・ボルト≫」
「うわっ!?」
ルミリアが放った魔法弾が盾と衝突する。
エルデは吹き飛ばされまいと、とっさに腰を落とた。
しかし音も衝撃もなく、魔法は霞のように消え失せる。
「……これは……」
「それなりに魔力を込めた魔法だったのですが、……完全に相殺されましたわね」
ルミリアは、はっきりとした確信を込めて言った。
「本物です」
「そうですね。これがあれば、かの冷血王にも……魔法の時代にも勝てるかもしれません」
エルデがかざす盾は松明と魔法の光を反射し、淡く発光していた。
スモールシールドより一回り大きく、刻まれた意匠は古く、しかし力強い。
エルデは、確かな安心感を覚えた。
「目的の盾は手に入れました。急いで帰りましょう」
「そうですね、ダーリオンが心配です。皆さん、直ぐに撤収しますよ!」
他を調査していたレジスタンス員の声を掛ける。
手に持っていた物を慌てて放棄し、荷物を担ぐ。
全員がいる事を確認して、洞窟の出口へと向かった。
戻るその途中、エルデがルミリアに話しかける。
「何か、一気に街へ戻れる魔法とか無いのでしょうか?」
「一応、あるにはあるのですが……」
「それで行きましょう! 時間をかなり食ってしまっています」
エルデ達が洞窟の外に出ると、すでに朝日が昇っていた。
つまり、ダーリオンが先行してから既に一日経過してしまっている。
ダーリオンがどれだけ急いだかにも寄るが、最速で考えれば既に処刑場へと着いている可能性もあった。
「かなり乱暴な手段ですよ」
ルミリアは真剣な顔で言う。
「かなりのリスクが伴います。また、『飛ばせる』のは荷物を最小限にして二人まで。一人は私た飛ばないといけないので、実質一人だけね」
「では僕がこの盾を持って行きます。ワタルさん。僕の荷物をお願い出来ませんか?」
「わかりました。お預かりします」
エルデはワタルに荷物を託す。
これでエルデが持っているのは剣と盾だけだ。
ワタルとレジスタンスの皆は遅れて帰る事になる。
ルミリアも荷物をレジスタンスに託し、準備する。
「街の方角を確認します。私はこちらの方角と認識していますが、合っていますか?」
「? はい。こちらの方角です。あの遠くに見える山があそこに見えるので、間違いありません」
「皆さん、申し訳ありませんが後の事をお願いします。街に入るのに、私が居なくても大丈夫なのですね?」
レジスタンス達に聞くと、秘密の出入り口があるらしい。
大人数は通れないが、この人数なら問題無い。
「それでは行きますよ。しっかり私に掴まっていてください」
「は、はい」
エルデはルミリアの腰に掴まるか、肩に掴まるか迷っているようだ。
そんなエルデの手をとって、腰にぴったりと捕まらせる。
「では行きます……≪ウィンド・バースト≫」
ルミリアが魔法を発動した次の瞬間、爆発的な突風と共に二人の姿を消していた。
「こ、こんな移動方法とは……!」
「手を絶対離さないでくださいね。助けに行くのは無理なので」
エルデとルミリアの二人は、雲の上を飛んでいた。
魔法障壁が風圧を遮るが、視界の全てが空という異常事態に、エルデは声を失う。
「こんな飛空魔法があるとは、長い旅の中でも聞いたことがありませんでした」
現在、飛空魔法というのは高度な魔法とされており、使える者は極僅かだった。
「いえ、飛空魔法ではありません。これは私達を魔法障壁で包み、それを魔法で起こした突風で飛ばしているのです」
「なるほど……そういえば、これどうやって着陸するんですか?」
エルデはルミリアの顔を見る。
この顔は……ヤバい!?
「ちょ!本当にどうやって?」
「逆風で減速はします。その後は……祈りましょう」
「祈るって何ですか!!」
二人は、ダーリオンが一日で踏破した距離を、僅か半日で街の近くの森まで到着することに成功した。
ただ、着陸は木々への激突というクッションを挟んだ壮絶なものとなり、その派手な着陸の様子は、森の魔物を大量に引き寄せてしまい、その対処に更なる時間を要してしまった。
とはいえ、エルデとルミリアは短時間で街の近くにまで来ることが出来た。
後少し歩けば街に入ることが出来る。
「これ程とは……僕たちでも、下手したら死んでいましたね」
「だから言ったじゃない。乱暴な手段でリスクがあるって」
「だから、ダーリオンさんの時には使わなかったのですね……」
衣服をボロボロにしながら、二人は地上街への帰り道へと急いだ。




