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仮定世界のログキーパー -仮定世界創造神録ー  作者: 田園風景
魔法末期時代 (神域残響52)
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4-12.見下ろす瞳

「逃げよう!」


  レジスタンスの一人が、思わず声を上げる。

 だが、その選択肢が最悪であることは、ダーリオン自身が一番理解していた。


(無理だ……)


 逃げれば追撃される。

 それだけでは終わらない。逃走経路を塞ぐため、関係のない地上民を巻き添えに魔法を放つだろう。

 それが、あいつらのやり方だ。


「いや、待て」


  低く、しかしはっきりと告げる。


「お前たちは潜んでいろ。俺があいつらの注意を引く。その隙に、捕らえられている仲間を助け出せ」

「そんなの無茶です!」

「どちらにしろ、もう見つかってる」


  短く言い切る。


「だったら、少しでも“いい結果”になる方を選ぶべきだろ」


  視線を檻へ向ける。

 両脇を魔法騎士が固め、その後ろで貴族が悠然と歩み出てきた。

 こちらへ向けられた掌に、魔法の光が灯る。


「……頼んだぞ」


 そう言い残し、ダーリオンは中央広場へ踏み出した。


 次の瞬間、魔法弾が飛来する。

 抜き放った魔力剣で切り裂き、火花が散った。


(挨拶代わり、か)


 向こうも同じ考えなのだろう。


「ようやく姿を現しましたね、反逆者。――世界の敵」

「世界の敵、ね」


  ダーリオンは乾いた笑みを浮かべる。


「確かに、お前たちの“世界”にとっては、俺は敵だろうな」


  三人の貴族。

 名は知らないが、上質な衣服、装飾、靴に至るまで一切の妥協がない。

 本物の上位貴族――あるいは、それに極めて近い存在。


(警戒レベル、最大だな)


「折角だ。聞かせてくれ」


  剣を構えたまま、問いかける。


「どうして、魔法を使えない者をそこまで蔑む?」

「当然でしょう?」


  貴族は呆れたように肩をすくめ、手を広げた。



「世界を創造し、今なお形続けているのは全て魔法によるものです。その魔法を使えるというのは、神から認められ、この世界を授けられたという証! それに比べ、魔法を使えない者は、いわば世界から疎外された下賤の民」


  吐き捨てるように続ける。


「捨てられて当然なのですよ」


  ダーリオンの胸に、冷たい怒りが沈殿する。


「それでも、食料を与え、家を与え、街に住まわせてやっている。差別を受ける程度、何だというのです?」

「……そうか」


 低く答え、剣を持ち直す。


「よく分かった。お前達とは、決して相容れない」


  剣を持ち直して、周囲を観察する。

 ダーリオンの前には魔法騎士が二人、その後ろに貴族。

 檻の傍にまだ魔法騎士が二人残っている。これをどうにかしないと、仲間を救出することは難しいだろう。


「納得して貰えた所で、捕まるが良い。≪ブレード・ネット≫」


  複数の魔法の網が現れ、ダーリオンを覆いつくそうとする。

 その網は刃の如き鋭さを持っており、もし覆われれば最後、ただでは済まない。

 ダーリオンは剣で網を弾き、横へと難を逃れた。


 そこに襲い掛かってきたのは魔法騎士。

 槍を突き出してきた。


(単調……だが)


 技も考えも連携も無い攻撃。

 剣術を学んでいるダーリオンにとって、避けるのは容易だった。

 ただ、魔法騎士団は槍による攻撃と共に、魔法を放つ術を知っている。

 槍を避けながら、魔法を弾くのは難しい。


「≪エナジー・ストーム≫」

「ぐっ!?」


  貴族たちから放たれた魔法の渦がダーリオンを包む。

 咄嗟に切り裂いて脱するが、無傷とはいかない。


 一旦距離を取り、呼吸を整える。


「……確かにそうだな。魔法は偉大だ。かつてこの世界を救い、文明を築いてきたのは紛れもなくその力だ。俺達がその恩恵で生かされてきたことも、また事実だ」


  ダーリオンは相対する貴族や魔法騎士を見据える。

 これ以上逃がすまいと、徐々に取り囲まれつつあった。


「だが、あんたたちが誇るその『世界を創造した力』は、消えようとしているんじゃないか? かつて魔法の力は全ての人が使えたという。今とは比較にならない程強大な力としてでだ。その力は見る影も無く細り、消えようとしている」

「何を世迷言を……」


  だが、ダーリオンの言葉に貴族の手は止まる。

 貴族も判っているのだ。

 魔法が使えない者がどんどんと増えている現状に。


「魔法が全てと言うなら、魔法が消えた後の世界のあんたたちに何が残る? 過去は大事だ。過去に行われた事が今に繋がり、教訓とすることが出来る。だが、感謝はしても過去は置いてゆくしかない。 現在も大事だ。全ての事に繋がり、大切にする必要がある。 そして未来を目指して俺達は生きるべきだ。過去に固執し、現在に留まる為に、魔法の使えない未来の民を迫害するお前達を……俺は止めなければならない。それが未来に繋がると信じるからだ!」

「黙れ! ≪エナジー・ボルト≫」


  飛来した魔法弾を切り払うダーリオン。 

 続けて魔法騎士二人が槍で攻撃してきたが、それは精彩を欠いる。

 大きく円を描く様に切り払ったダーリオンの剣により、二人まとめて地面に伏した。

 それを見て、牢に待機していた魔法騎士二人も参戦する。


「俺達にはこの手がある。今を変える知恵がある。共に歩む仲間がいる。魔法がなくても、明日を創ろうとする『意志』がある。これら全てを以て、未来を見せてやるぜ!」

「これ以上、あいつに喋らせるな! とっとと捕まえるぞ!」


  数々の魔法がダーリオンに降り注ぎ、更には魔法騎士二人の猛攻。

 しかし、ダーリオンはそれを凌いだ。

 剣が舞い、足で駆ける。


 ダーリオンはその猛攻の最中、レジスタンスがこっそり牢から仲間を出しているのを横目で見た。

 これで目的は達した。

 後は、仲間が逃げるのに十分な時間を稼いでから、自身も逃げるだけ。


「さぁ、どうした! そんなに温い攻撃じゃ、俺は捕まえることなんて出来ないぞ!」

「くそぉ、魔法を使えないクセに!」


  貴族達も疲れ切っていた。

 これだけの魔法を放ち続けていれば、限界に来るというもの。


 ダーリオンも、負傷箇所が多く満足に動かせない所も出てきている。

 スタミナは既に限界を超えていた。

 それでも……勝機を見出している。


 そしてとうとう、ダーリオンの剣が魔法騎士二人を打ち倒し、限界に来た貴族たちが疲労の余り尻もちをつく。


「……これで、終わりだ」


  その瞬間。

 一条の光が、ダーリオンの身体を貫いた。


「……な……に……?」


  他人事のように、空を見上げる。


 そこにあったのは、天空都市。

 そして――見えるはずのないはずの姿を見た気がした。


 冷血帝、ゼルファウス・ウェルザルト。


 彼がこちらを見下ろす姿を。

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