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仮定世界のログキーパー -仮定世界創造神録ー  作者: 田園風景
魔法末期時代 (神域残響52)
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4-11.急転

  通信の魔道具越しにダーリオンへ告げられたのは、仲間の処刑という、あまりにも重い現実だった。


「どういう状況なんですか?」


  珍しく声に焦りを滲ませ、エルデが問いかける。


「仲間の捜索に出ていたグループが、魔法騎士団に捕まったらしい。隠れ家の場所が漏れた可能性を考えて、しばらく潜伏していたそうだが……その間に公開処刑の場が用意された」

 

 ダーリオンは短く息を吐き、続ける。


「要求は俺の投降だ。処刑までは数日、時間を与えるつもりらしい」

「そんな……」

 

  ルミリアは思わず言葉を失い、眉をひそめた。


「そこまでの非道、ゼルファウス卿は何を考えているの……」


  空気が張り詰める中、ダーリオンは意を決したように二人を見据える。


「ルミリア様、エルデ」

「はい」

「何でしょう?」

「二人はこのまま魔道具の捜索を続けてくれ。俺は、今すぐ街へ戻る」


「リーダー! 俺たちも一緒に――!」


  レジスタンス達が一斉に声を上げる。仲間を見殺しにするなど、到底受け入れられないのだろう。

 その勢いを、ダーリオンは手を上げて制した。


「いや、お前たちはルミリア様と行動を共にしろ」

「ですが……!」

「時間がない。俺一人なら、魔物に遭遇しても逃げ切れる。集団で動けば、それだけで足が止まるからな」


  理屈は正しかった。だからこそ、誰も反論できない。

 エルデが、神妙な表情で問いかける。


「……向かって、どうするつもりなんですか? 良くて捕縛、最悪――」

「殺される、か?」


  ダーリオンは静かに言葉を継ぎ、首を横に振った。


「正直、まだ考えていない。ただ現場を見て、隙を探す。それだけだ。命と引き換えに、なんて真似はしない」

「……頼みますよ」


  エルデの声には、抑えきれない不安が滲んでいた。


「短い付き合いですが、レジスタンスには、あなたが必要です」

「俺一人くらい、代わりはいくらでもいるさ」


  苦笑を浮かべ、ダーリオンは荷を背負う。


「それに――エルデ。お前なら、トップも務まる」

「何を言ってるんですか!」

「冗談だ。そう睨むな」


  そう言い残し、彼は踵を返した。


「魔法具が見つかったら、すぐ戻ってこい。それがあれば、貴族や魔法騎士団の魔法に対抗できるからな。頼んだぞ」


  制止の声を待つことなく、ダーリオンは松明の揺れる洞窟を駆け出した。

 その背中は、すぐに闇へと溶けていく。


 残された者たちは、ただ立ち尽くすしかなかった。


「……急ぎましょう」


  ルミリアの一言で、全員が我に返る。


「早く魔道具を探して持って帰りましょう。そうすれば、ダーリオンに追いつけるかもしれません」


  ルミリアの声に一同が頷く。

 希望を繋ぐように、一同は探索を再開した。




  ダーリオンは森を一直線に駆け抜けていた。

 魔物に遭遇しても剣すら握らない。虚を突き、牽制し、すり抜ける。

 休憩時は木の上で過ごし、眠る時間すら削り、ただ前へ進み続けた。


 その甲斐あって、ダーリオンは一日で街に戻ることが出来た。


 魔法騎士団がいる門は避け、レジスタンスがいつも使っていいる秘密の通路を通って街中へと入る。

 街の様子は一見、変わっていない――だが、空気が違った。

 どこか張り詰め、誰もが余所余所しい。


 まず向かったのは、隠れ家である創造教教会だった。


 いつも通り閑散とした教会。

 周囲に追跡者がいないことを確認し、ダーリオンは中へ入る。


 中には、シスターと、隅で退屈そうにしている男が一人。

 男はダーリオンを見るなり、椅子から転げ落ちそうになった。


「リ、リーダー!? 戻ってきたんですか!」

「心配掛けたな、通信を聞いて今戻った。状況を教えてくれ」


  大まかには既に聞いた通り。

 捕まってしまったレジスタンスは三人。

 いずれも長く活動を共にした、信頼できる者たちだった。


 現在、この街の中央広場に用意された処刑場で繋がれた状態でさらし者の目に合っているらしい。

 飲まず食わずの状態で、処刑されなくても、そろそろ危ない状態にある。


 処刑場は常に複数の魔法騎士団が警護している。

 頻繁に貴族連中も来て、詰問を繰り返しているらしい。


「……行くぞ」


 ダーリオンの声に、迷いはなかった。


「現場を確認する。隙があれば、即救出だ」




  地上街の中央広場。

 いつもは地上民で賑わっている所だが、今は異様な光景が中央を占拠していた。

 地上民は遠巻きにするだけで、誰も近寄ろうとしない。


 ダーリオンは家屋の影から広場を覗いていた。


「……魔法騎士団が四人だけなら、やりようはある」


  檻の中には、衰弱しきった仲間たち。

 見ただけで、時間が残されていないことが分かる。


 檻の外には、囲むように四人の魔法騎士団が張っていた。

 これはやりようによっては、大きな騒ぎになる前に倒すことが出来るだろう。

 問題は、貴族共が三人も訪れていたことだ。


 貴族共は高度な魔法を駆使する。

 例えクズな奴でも、油断ならない相手だ。


 その一人でも厄介な相手が、三人も居る。


 しばらく様子を窺ったが、貴族たちは離れる気配を見せない。

 ダーリオン周囲を再度見直し、記憶に留める。


「……一度引くしかないか」


  見張りを残すため、周囲に意識を向けた、その瞬間。

 貴族の一人から、淡い魔法光が広がった。


「探知か!?」


  反射的に身構える。

 次の瞬間、三人の貴族の視線が、同時にこちらを射抜いた。

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