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仮定世界のログキーパー -仮定世界創造神録ー  作者: 田園風景
魔法末期時代 (神域残響52)
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4-10.双頭の巨人エティン

「「ガアォォォ!!」」


  双頭の巨人が、二つの口から咆哮を放った。

 地面を踏み砕きながら、巨大な棍棒を振りかざして突撃してくる。


「走りは鈍重だが、振りは速いぞ! 気を付けろ!」


 ダーリオンの警告が飛ぶ。

 エティンの腕ははちきれんばかりに膨れ上がっており、力も人間を遥かに超えていると想像に難くない。

 もし、あの力と速度で棍棒を薙がれれば、ひとたまりも無いだろう。

 直接戦闘に秀でるダーリオンとエルデが前に立ち、それ以外は少し下がる。


「まずは動きを鈍らせます……《フロスト・ウェイブ》」


  ルミリアの魔法が解き放たれる。

 白い凍結波が洞窟内に広がり、空気そのものが軋むような冷気を帯びた。

 エティンの体表に霜が走り、煌めく氷片が散る。


 一瞬――動きが止まる。


「……っ」


  だが、倒れない。

 魔法耐性の高さが、嫌というほど伝わってくる。

 それでも、再び踏み出した脚は、確かに先ほどよりも鈍かった。


「いくぞ!」

「だぁぁ!」


  ダーリオンがエティンの腕を斬り付け、エルデは胸に突く。

 しかしそのどちらも肌を軽く傷つけただけで、とても致命傷とは言えなかった。

 予想を超える硬さ。

 まるで岩を斬りつけたかのような感触に、二人の表情が僅かに歪む。


 エティンは怒りに任せ、棍棒を無差別に振り回した。

 洞窟の壁が砕け、風圧が肌を打つ。


「これは困りましたね。想像以上の頑強さだ」


  エルデが体制を整えながら呟く。

 魔法の耐性は高く、筋肉は刃を通せない程頑強。

 正面から削り切れる相手ではない。


「もう一度、行きます!」


  エルデはエティンの真正面から突撃する。

 速いとはいえ、その単調な突撃を見逃す巨人ではない。

 狙い澄ました一撃が、頭上から振り下ろされる。


 ――だが、棍棒は空を切った。


幻影魔法シャドー・スタイル……食らえ!」


  エルデの幻影が消える。

 後方から高く飛び上がったエルデは、幻を追っていたエティンの頭一つ目掛けて剣を振り下ろした。


「ガァァァァ!!」


 だが、もう一つの頭がエルデの姿を捉えていた。

 横薙ぎの一撃が、空中のエルデを叩き飛ばす。


「ぐっ――!」


  防御は間に合ったが、勢いを殺しきれない。

 エルデの体は壁際まで吹き飛ばされた。


「エルデ!」


  ダーリオンが思わずエティンに飛びかかるが、双頭がそれを見逃さない。

 連続で振るわれる棍棒。

 剣で受け流すが、一撃ごとに腕が痺れる。


「リーダー、危ない!」


  ついに剣が弾かれ、大きく体勢を崩す。

 エティンの双頭が、嘲るように口角を吊り上げた。


 ――その瞬間。


 棍棒の軌道に、誰かが割り込んだ。


「ちっ……!」


 ワタルの体が宙を舞い、激しく地面を転がる。


「ちぃ、クソが!」


  ワタルが気になるが、この隙を生かさないと、この魔物には勝てない。

 視線が一瞬、ワタルに向く。この好機を逃せば終わりだ。


 ダーリオンは、エティンの目を狙って剣を振り抜いた。


「グァァッ!!」


 流石に効いたのか、巨人は目を押さえ、棍棒を振り回しながら後退する。


「理を焦がし、万象を穿つ雷よーー駆け貫け! 《サンダー・ディストラクション》」


  魔力を十分に高めたルミリアの圧縮された雷が、エティンを貫いた。

 一瞬びくんと身動ぎ、目を押さえた体制のまま立ち止まった。


「今だ!」

「うぉぉ!」


  エルデとダーリオンの剣が、同時に双頭の口を穿った。

 刃は喉奥まで突き抜け、巨人はそのまま仰向けに倒れ伏す。


 轟音。

 慌てて二人は転がり、距離を取った。


 倒れたエティンの双頭から血が広がる。

 もしかすると動き出すかも……そんな不安があったが、いつまで経っても動き出しそうになかった。


「ふぅ、何とかなりましたね」

「大きさからみて、幼体だろうな。だからなんとかなった……そうだ、ワタルは無事か?」


  もみくちゃに転がったままのワタルが、頭と手を上げる。


「な、なんとか無事です~」


  エティンの棍棒をまともに食らっていた気もするが、辺り所が良かったのだろうか?

 特に怪我もしていないようで、ダーリオンは胸を撫で下ろす。


「ルミリア様も有難うございました。流石に魔法の援護なしに勝てる相手ではありませんでしたね」

「どういたしまして。しかし、珍しい魔物でしたわ。後学のために少し調べさせて頂きましょう」


  物怖じもせず、倒れた巨人に近寄るルミリア

 その様子を見てやれやれと呆れる。

 さっきまでその魔物と死闘を繰り広げていたというのに。


 まあ、魔物に関しては彼女に任せれば良いだろう。


「……俺たちは、魔法具の捜索を――」


  その時、ダーリオンが身に着けていた魔道具に一報が入った。

 その知らせに、驚きを隠せないでいた。


「リーダー、どうしました?」


  傍に居たレジスタンスが声を掛ける。

 その回答にその場にいた全員の背筋が凍りついた。


「隠れ家から連絡が入った。仲間が貴族に掴まって、これから公開処刑が行われるらしい」

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